【拙訳】パイオニア初プレイに最適なデッキは黒単アグロで決まり! by Brian DeMars

 ようやく各所でパイオニアの記事が出てくるようになりました。実はパイオニアのTier1にずっと居続けているのは黒単アグロだけなんですよね。

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Mono-Black Aggro is the Perfect Deck to Get Acquainted with Pioneer
BY BRIAN DEMARS / FEBRUARY 25, 2020


■はじめに

「パイオニアはすばらしいフォーマットだ! ぜひパイオニアをプレイすべきだ!」ということが、何度も何度も、ポジティブに語られてきました。

 もしこの記事を読んでいるあなたが、「そんなこと言われてもデッキ持ってないし」という場合――ようこそ、最適な記事へ! 過去数週間にわたってフォーマットの動向を調査してきた私が、この記事ではパイオニアを始めようと思っている諸兄に向けた記事です。

 私にとってはさしたる問題ではありませんでしたが、これまでパイオニアに参加するための最大の懸念は、「時間とお金」でした――デッキを学ぶ過程において禁止の大ナタが繰り返し振るわれる様は、紳士の嗜みとは言えません。今では禁止改定頻度も落ち着き、フォーマットがどのようなもので、どうなっていくかを見通せるようになったので、ゲームに参加することが楽しくなってきました。

 すべてを考慮した上で言いますが、今のところ、このフォーマットは非常にいい環境です! スタンダードとモダンの間の環境ということで非常にバランスがとれている点がポジティブな材料です。スタンダードと異なり、フォーマットのプールは広大で、より多様な戦略で戦うことができます。モダンとの違いは、マナを支払うことと呪文を唱えることの相関関係がより強固で(編注:「=安易な踏み倒しはできない」ということです)、より一貫したビジョンに基づきゲームが展開されます。パイオニアは、スタンダードとモダンの良い点を増幅し、そうでない部分を和らげるフォーマットであり、いわば「スタンダードとモダンのいいとこ取り」なのです。

 黒単アグロはこのフォーマットの強力デッキとして知られていて、私がパイオニアのカードの束からそれを取りだすのは必然、といったところです。黒単自体が私の好きなアーキタイプのひとつであることに加え、非常に強力な戦略を持っている、という2つの点が私にとって2つの大きな利点です。

 この記事では、私が使用している黒単のリストをシェアし、このデッキを使う際の基本的な戦略について語っていきます。

■黒単アグロガイド

 このアーキタイプの一番の強みは、マナ効率と柔軟性です。環境のどのデッキに対しても十分なアグレッシブ要素を持っていますが、他のアグロデッキと速度勝負をする必要はありません。実際、このデッキは相手のアグロデッキに対する勝率がいいのです!

 このデッキはどんな戦略でも踏みつぶせる、というわけではありませんが、極端に不利なマッチアップもほぼありません。黒単において多くの緻密なプレイを要求されることがあり、相手がどんなデッキであれ多くの経験を得られるでしょう。そのため、この環境を学ぶのに理想的なデッキなのです。

 私が使用する黒単は、他のリストより少しだけミッドレンジ寄りにシフトしています。

Mono-Black Aggro (Pioneer)
 
creature (23)
4《血に染まりし勇者/Bloodsoaked Champion》
2《才気ある霊基体/Gifted Aetherborn》
4《どぶ骨/Gutterbones》
2《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet》
4《漆黒軍の騎士/Knight of the Ebon Legion》
4《残忍な騎士/Murderous Rider》
3《屑鉄場のたかり屋/Scrapheap Scrounger》
 
sorcery (6)
2《強迫/Duress》
4《思考囲い/Thoughtseize》
 
instant (7)
2《喪心/Cast Down》
4《致命的な一押し/Fatal Push》
1《闇の掌握/Grasp of Darkness》
 
land (24)
4《変わり谷/Mutavault》
15《沼/Swamp》
1《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》
4《ロークスワイン城/Castle Locthwain》
 
sideboard (12)
1《霊気圏の収集艇/Aethersphere Harvester》
1《苦悶の悔恨/Agonizing Remorse》
1《減衰球/Damping Sphere》
2《強迫/Duress》
2《無限の抹消/Infinite Obliteration》
2《軍団の最期/Legion's End》
3《虚空の力線/Leyline of the Void》


■パイオニアのメタゲーム

「すべての頂きへ。」

 パイオニアというフォーマットの様子について話すとき、「どこで」「どのように」プレイしているかを考慮することが重要です。最も競技レベルの高い場では、Tier1デッキとして挙げられるのはロータスブリーチであり、次にスゥルタイ昂揚ディミーアインバーターが続く、ということがデータで示されています。(編注:リンク先はいずれもCFBの記事)

 ロータスブリーチとディミーアインバーターはコンボデッキであり、スゥルタイ昂揚は非常に強力な墓地シナジーを持つミッドレンジデッキです。

 もしこの記事を読んでいるあなたが経験豊富な競技プレイヤーで、高いレベルのイベントで戦おうとしている場合――何よりも、なぜこの記事を読んでいるんでしょう??(「初プレイに最適」ってタイトルに書きましたよね?)次に、このフォーマットに存在する3つのぶっ壊れデッキのうちのひとつをプレイするのは理にかなっています。特にロータスブリーチは、プロツアー・バルセロナ2019でとんでもない使用率/勝率を叩き出したホガーク・ヴァインに匹敵する理不尽さを持っています。目標がプロツアーで高い順位に行くことであれば、ロータスブリーチを使わないなんて有り得ないでしょう!!

 プレイヤーズツアー・フェニックス全体のストーリーは素晴らしいものでしたが、TOP8の面々がどれほど多様性に満ちていたかは驚くばかりです!(6つのアーキタイプが入賞しました:ロータスブリーチx2、ディミーアインバーターx2、赤単アグロx1、アゾリウスコントロールx1、スゥルタイ昂揚x1、バントスピリットx1)2日目のデッキ分布において、人気デッキの上位5位までが使用率70%を占めていた、という結果は少し残念ではありますが……。

 私はパイオニアの複雑さを考察できる専門家というには遠く及びませんが、友人のプロプレイヤーの多くは、最高レベルのコンボデッキに何らかの禁止が行われる可能性があると示唆しています。それを考慮した結果として、環境を学びたいプレイヤーにとって、禁止を免れるボーダーライン上のデッキを用いて記事を書くのは望ましくないと考えました。

 とはいえ、競技レベル未満のフィールドでは、ゲームをプレイし、その多様性を目の当たりにし、また経験する中で、様々なアグロデッキとの対戦がありました。

 はっきり断っておきますが、黒単アグロはいわゆる「格安デッキ」……では断じてありません! TOP8に入賞してはいませんが、プレイヤーズツアーでは堅実で一貫した戦略を持つ上位デッキのひとつとして、プレイヤーズツアー1日目に4番目の勝率を挙げたデッキ(バントスピリットと同率)なのです。

■基本地形の《沼》、《城》、《変わり谷》

《ロークスワイン城》
 なんて馬鹿げたカードでしょう! 黒単アグロの大きな利点は、マナベースの一貫性と各カードの強さです。《ロークスワイン城》も強力ですが、《変わり谷》の前ではすべてがゴミクズ同然です!

《変わり谷》
 《変わり谷》の最大の欠点は、無色マナしか生み出さないことです。黒単アグロは単色というだけでなく、《ヨーグモスの墓地、アーボーグ》もあり、ぶっ壊れ土地を入れる僅かなデメリットを相殺することさえできるのです。

 黒単が擁する恩恵は、強力で、柔軟で、かつ効果的な呪文です。

《致命的な一押し》《思考囲い》《残忍な騎士》《漆黒軍の騎士》
 まるで強力スペルのバーゲンセールだな。
 《思考囲い》はこの環境の1マナ域最強と謳われるカード、《致命的な一押し》は環境随一の効果的な除去、《漆黒軍の騎士》は1マナで最高クラスの生物です。

 デッキのマナ効率が純粋に素晴らしいので、リアニメイト能力を持つウィニー群をデッキに組み込むことは、マナ効率という長所を活用する素晴らしい方法です。
 私のリストでは下記カードの採用がユニークポイントとなっています。

《才気ある霊気体》《強迫》
 この2枚がプロアクティブな戦略に合致する素晴らしいカードだと分かりました。幅広い戦略に対して有効であり、大きな戦略の中でシナジーを形成しています。
 《才気ある霊気体》はコンボやコントロールに対してそこまで有効ではありませんが、アグロミラーで絶対的な信頼を寄せられるカードです。このフォーマットには3点火力が少なく2点火力が多いので、タフネス3は非常に価値のある数字です。
 《強迫》をメインボードから採用するのはコントロールとコンボに対しては有効ですが、アグロに対しても《才気ある霊気体》をうまく活かせる手段にもなります。1ターン目のハンデスで相手の除去を抜けば、2ターン目の《霊気体》がより鉄壁となり、城コントロールとして振る舞う機会を確実に引き寄せることができます。

 どのフォーマットであっても黒い「フェア」デッキは、お化けデッキに対しては優位に立てます。速いクロックと妨害要素が両立しているからです。「妨害要素」……? そう、《思考囲い》はすべてを叶えてくれます!

■サイドボード戦略

 成功する戦略の中身は、「優れたサイドボードを構築する」という要素がほぼ大部分を占めます。

 黒単のサイドボード構築は、基本的に、除去と妨害を中心に構築します。コンボデッキに対しては、アグロの本筋を保ちつつ、重めの脅威や効果的な除去を抜いて多くの妨害要素を加えます。コントロールに対しては除去と妨害要素を入れ替えます。

 アグロに対しては《ロークスワイン城》(基本的には、最初から《地下世界の人脈》が付いた《沼》と考えてください!)があるので、私の場合は通常、防御力に乏しいクリーチャー(《血に染まりし勇者》と《屑鉄場のたかり屋》)を除去と入れ替えます。とにかくライフを守り、《ロークスワイン城》で勝ちに向かいます。

 サイドボードカードは、最も人気のマッチアップ専用です。

《虚空の力戦》
 《虚空の力戦》は昂揚や《時を超えた探索》デッキに絶大な効果があります。

《減衰球》
 ロータスブリーチ専用サイドボード。

《無限の抹消》
 コンボの一部としてクリーチャーを使用する両方のコンボデッキに対する非常に便利なツールです。

《強迫》《苦悶の悔恨》
 対戦相手がビートダウンでない場合(コンボやコントロール)、こちらが攻め込んでいる間に対戦相手の重要な手札を抜き取るために使用します。

《軍団の最期》
 《軍団の最期》は最高の「高速ビートダウン対策」サイドボードです。ミラーマッチの復活クリーチャーを完全に対処でき、2対1交換を狙え、《アーティファクトの魂込め》のついた《ダークスティールの城塞》を対処することもできます。

《リリアナの勝利》
 呪禁クリーチャーに対処するカードを探して、このカードが一番しっくりきました。《自傷疵》の採用が多い枠ですが、赤単ミッドレンジのようなデッキに対しても布告系除去が必要だと気付きました。

《魔女の復讐》
 バントスピリットや、他の部族デッキに対する《疫病風》です。

《霊気圏の収集艇》
 アグロに対してミッドレンジ戦略にシフトする際、このカードは非常に役立ちます。ライフレースで優位に立てるほか、ブロック時にも非常に効果的です。これだけ2/1がいれば搭乗は容易です(その上《変わり谷》もあります)。

■黒単をプレイする理由

 黒単の一番の売りは、プレイが簡単でかつ強力なフェアデッキだ、という点です。例えば、私は昨年、個人的な好みから、スタンダードやモダンをあまりプレイしませんでした。その結果として、人気のあるアーキタイプやプレイされている新しいカード(=パイオニアで使われるカード)についての知識が錆ついてしまったのです。

 最近はそれを覚え始めましたが、《思考囲い》がデッキにフル投入されているおかげで、思っていたよりも当初から勝ち星を挙げることができました。やや遅れてパーティに参加した感が否めない中での対戦でしたが、ピーピングによって相手が何をしているかを把握できるので、これは単純に数字で測れない価値になります。

 DCIが時折禁止をちらつかせて混乱を招いたフォーマットではありますが、黒単アグロはプレイを学ぶのに安全なデッキです。いわゆるぶっ壊れデッキではありませんが、そういった「壊れたデッキ」を抑制する安全弁として最高のカード《思考囲い》を使うことができるのです。

 黒単アグロは、パイオニアの登竜門として私にとっても、皆さんにとってもよい経験が積めるデッキだと思います。もしパイオニアに少しでも興味があるなら、この素晴らしいデッキを使用することを強くお勧めしますよ。

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