【拙訳】PTブリュッセル優勝:スウェディッシュ・スゥルタイ by Joel Larsson(Channel Fireball)

 PT後に一気に記事が投稿され、もはやレポート置き場と化しつつあるChannel Fireballの「Strategy」。ディミーアインバーターや赤単の記事も置いてありましたが、スゥルタイ昂揚に関する記事が書かれていたので翻訳しました。サイドボードガイドも入れ替え内容のみ載っていますので、参考までに。それにしてもディミーアインバーター相手に5勝0敗は素晴らしいですね。

Winning Brussels with Swedish Sultai
BY JOEL LARSSON / FEBRUARY 5, 2020

 成し遂げたぜ! しかも、自分のデッキで! こんなに嬉しいことはない……!
 「スウェディッシュ・スゥルタイ」は何年も前に、僕がプラチナ・プロだった頃(学位取得によって日々の環境を変えるため、最近はこの道を諦めていましたが)使っていたデッキです。どうしてこのような構成になったのか、読者諸兄に全体的な理解を促すため、僕の個人的なMtGのキャリアについても話していこうと思います。もしあなたがデッキリストを探しているなら、この記事の中盤以降にカード選択の理由とサイドボードガイドが書いてありますよ。

 このアーキタイプとの出会いは、……そうですね、最初にプレイする機会があったのはオーストラリアでのプロツアー「異界月」だったと思います。その大会は「プロツアー・エムラクール」と呼ばれており、《約束された終末、エムラクール》と《墓後家蜘蛛、イシュカナ》が同時に登場し、チーム「EUreka」、「Revelation」、「Genesis」がこぞってジャンド昂揚をプレイした大会でした。

(訳注:ジャンド昂揚については、下記リンク記事が詳しいところです。Team EUrekaのMartin Mullerが記事を書いています。)

 ジャンド昂揚は驚くべき成果を上げ、TOP16を前述のチームがほぼ独占するような結果をもたらしました。その後も、僕は緑黒カラーの昂揚デッキを駆り、数々の大会で良い成績を収めることができましたが、数週間後、《約束された終末、エムラクール》がスタンダードで強力過ぎるとされ、禁止となりました。それでも、僕はグッドスタッフ系のデッキが好きで、《ウルヴェンワルド横断》《不屈の追跡者》《最後の望み、リリアナ》《墓後家蜘蛛、イシュカナ》そして《エムラクール》のパッケージは、いつか機会があればもう一度使いたい、と思っていました。

 僕にとってそのチャンスが再び訪れたのは「フロンティア」が創設されたときです。数年後、別のビルダーたちの楽園「パイオニア」がリリースされました。僕はすぐに数個のデッキを作り始めました。青白コントロール、赤単、等々……。しかしフロンティアで使用した「Four Horsemen」を使用したいと思い、次のようなデッキを組み上げました。

Four Horsemen in Pioneer
 
creatures
4《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy》
4《サテュロスの道探し/Satyr Wayfinder》
2《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》
1《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
1《残忍な騎士/Murderous Rider》 // 《迅速な終わり/Swift End》
4《包囲サイ/Siege Rhino》
1《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow》
1《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
1《奔流の機械巨人/Torrential Gearhulk》
1《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》
 
non-creature spells
3《致命的な一押し/Fatal Push》
1《過去との取り組み/Grapple with the Past》
4《思考囲い/Thoughtseize》
4《ウルヴェンワルド横断/Traverse the Ulvenwald》
2《アブザンの魔除け/Abzan Charm》
2《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope》
1《衰滅/Languish》
 
lands
4《花盛りの湿地/Blooming Marsh》
2《植物の聖域/Botanical Sanctum》
2《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
3《寓話の小道/Fabled Passage》
1《森/Forest》 (347)
1《風切る泥沼/Hissing Quagmire》
1《神無き祭殿/Godless Shrine》
1《島/Island》 (335)
1《伐採地の滝/Lumbering Falls》
2《沼/Swamp》 (339)
2《湿った墓/Watery Grave》
1《平地/Plains》 (331)
1《草むした墓/Overgrown Tomb》
1《寺院の庭/Temple Garden》
 
sideboard
2《夏の帳/Veil of Summer》
2《否認/Negate》
1《暗殺者の戦利品/Assassin's Trophy》
1《致命的な一押し/Fatal Push》
1《集団的蛮行/Collective Brutality》
1《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
2《秋の騎士/Knight of Autumn》
1cry of the carnarim
1《罪の収集者/Sin Collector》
1《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet》
1《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
1《衰滅/Languish》

 調整不足があったとはいえ、この案はうまくいきませんでした。何よりもマナベースが厳しいというのが一番の課題でした。フェッチランドが使えればどうとでもなるものの、4色デッキでBB、GG、UUを要求するカードを組み合わせるのはどう考えても正気ではありませんでした。また、《包囲サイ》はかつてほどの威力を持っていませんでした。赤系のデッキは環境に少なく、ウィニーは除去に火力を打ち込むため、ライフゲインが何ら重要ではなかったのです。他のデッキは《包囲サイ》を乗り越えること自体難しくありませんでした。最終的に4色目を使用する必要があったかどうか。

 《包囲サイ》のようなライフゲインと脅威を併せ持つ存在を探しているところに《王冠泥棒、オーコ》が登場し、デッキが引き締まりました。《オーコ》自体がいいカードというだけでなく、マナベースもうまく機能するようになったのです。

Sultai Delirium
 
3《サテュロスの道探し/Satyr Wayfinder》
4《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy》 // 《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》
1《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
1《残忍な騎士/Murderous Rider》 // 《迅速な終わり/Swift End》
2《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》
1《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
1《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet》
1《探索する獣/Questing Beast》
1《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow》
1《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》

4《思考囲い/Thoughtseize》
4《致命的な一押し/Fatal Push》
4《ウルヴェンワルド横断/Traverse the Ulvenwald》
2《思考消去/Thought Erasure》
2《突然の衰微/Abrupt Decay》
3《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》
1《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope》
1《ゴルガリの女王、ヴラスカ/Vraska, Golgari Queen》
1《生命の力、ニッサ/Nissa, Vital Force》
 
lands
4《草むした墓/Overgrown Tomb》
2《湿った墓/Watery Grave》
1《繁殖池/Breeding Pool》
4《花盛りの湿地/Blooming Marsh》
2《植物の聖域/Botanical Sanctum》
3《寓話の小道/Fabled Passage》
1《ロークスワイン城/Castle Locthwain》
1《島/Island》 (335)
2《沼/Swamp》 (339)
2《森/Forest》 (347)
 
sideboard
1《再利用の賢者/Reclamation Sage》
1《集団的蛮行/Collective Brutality》
1《衰滅/Languish》
2《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
1《否認/Negate》
1《ゴルガリの魔除け/Golgari Charm》
1《漂流自我/Unmoored Ego》
1《神秘の論争/Mystical Dispute》
1《肉儀場の叫び/Cry of the Carnarium》
1《苦い真理/Painful Truths》
1《生命の力、ニッサ/Nissa, Vital Force》
3《虚空の力線/Leyline of the Void》

 このデッキは確かに良くなりましたが、素晴らしいとは言えず、個人的にはTier1と呼ばれるほどのデッキではないと感じました。最たる課題は、デッキに「ぶっ壊れ要素」がなく、かといって対戦相手に十分なプレッシャーをかける手段もない、という点です。ゲームを速やかに終わらせることができる勝利条件に欠けていました。これは《エムラクール》で勝利に持ち込むまで、盤面をコントロールし続けなければならない、ということに他なりません。ゲームを長引かせることは、《思考囲い》デッキが嫌う「対戦相手のトップデッキ」による負けが必然的に多く起こり得ます。特に、《エムラクール》の解決に時間がかかる場合には多くの問題が起こります。突発的な対応に追われる多くのことがある場合、そのすべてを抑えつけることは非常に困難です。

 さて、「テーロス還魂記」のリリースまで話を進めましょう。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》がリリースされました。このカードはスタンダードではそこまで悪さをしないカードだということはすぐ分かりましたが、「脱出」メカニズムを悪用する可能性のある下の環境ではどうか、はっきりしません。僕はどこで試すのがいいかは知っていました。パイオニアのスゥルタイです。

 デッキのバージョンをいくつか作成しましたが、オンラインで試そうとした頃、同じくPTブリュッセルへの出場資格があるLukas HorosiewiczとAlexander Rosdahlと話していると、偶然、デッキビルダーである彼らもまた同様に、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を試す気でした。最初のバージョンでは、いくつかのカードを試してみようと思いましたが、少しばかりランプ戦略に偏り過ぎていて、《ニッサ》に加えて《ハイドロイド混成体》&各種エルドラージを採用するのはやり過ぎでした。《ウーロ》を最高のカードとして扱うため、様々な方法でそれを解決します。

 《ウーロ》のパフォーマンスは素晴らしいものでした。《ウーロ》が活躍しない時でさえ、デッキ全体がいいパフォーマンスを発揮しました。5-0や4-1をできなかったときは集中力を欠いたのかも分かりませんが、ほとんどの試合を2-0で勝つことができたのです。奇跡でもなんでもなく、このような成績が頻発しました。

 8回のリーグを終え、ロジカルなデッキ調整を行った後、僕はスウェーデンの仲間と各カードの枚数を精査して、GPとPT参加のプレイヤー両方が使うに至ったデッキリストは下記の通りです。

Swedish Sultai 2.0
 
creatures
3《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy》 // 《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》
4《サテュロスの道探し/Satyr Wayfinder》
1《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
1《残忍な騎士/Murderous Rider》 // 《迅速な終わり/Swift End》
1《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
2《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》
4《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》
1《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow》
1《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》
1《歩行バリスタ/Walking Ballista》
 
non-creature spells
4《致命的な一押し/Fatal Push》
4《思考囲い/Thoughtseize》
3《ウルヴェンワルド横断/Traverse the Ulvenwald》
2《忌まわしい回収/Grisly Salvage》
2《突然の衰微/Abrupt Decay》
1《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope》
2《世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》
 
lands
4《草むした墓/Overgrown Tomb》
4《繁殖池/Breeding Pool》
1《湿った墓/Watery Grave》
4《花盛りの湿地/Blooming Marsh》
1《植物の聖域/Botanical Sanctum》
1《華やかな宮殿/Opulent Palace》
3《寓話の小道/Fabled Passage》
1《ギャレンブリグ城/Castle Garenbrig》
2《島/Island》 (335)
1《沼/Swamp》 (339)
1《森/Forest》 (347)
 
sideboard
1《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
1《再利用の賢者/Reclamation Sage》
1《人質取り/Hostage Taker》
1《強迫/Duress》
2《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
1《喪心/Cast Down》
1《害悪な掌握/Noxious Grasp》
2《神秘の論争/Mystical Dispute》
1《スゥルタイの魔除け/Sultai Charm》
3《虚空の力線/Leyline of the Void》
1《ビビアン・リード/Vivien Reid》

 PTブリュッセルでの対戦成績は下記の通りです。

ディミーアインバーター: 5-0
バントスピリット: 1-0
ロータスブリーチ: 1-0
アゾリウスコントロール: 1-0
ディミーアコントロール: 1-0
シミックランプ: 1-0
白単ヘリオッド: 1-0

黒単アグロ: 0-1
アゾリウススピリット: 0-1

合計: 11-2

 5人の平均勝率はなんと:69.44%です!(うち1回のミラーマッチを含みます)
(データは↓からどうぞ)

■カード選択

4《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
 この記事で繰り返し《ウーロ》の強さには触れていますし、カバレッジで僕を見かけたなら、《ウーロ》についてこれ以上言及するまでもないかもしれませんが、このカードは本当にすべてを叶えてくれます。ひとつずつ能力を紐解いていきましょう。まず、パイオニアでは非常に重要なライフ獲得装置です。対戦相手を息切れさせたいときは、《不屈の追跡者》や《ヴリンの神童、ジェイス》を活用したり、《エムラクール》を繰り出す前段階で、1枚1枚のカードを最大限に活用することが必要になります。ライフに余裕がない盤面では、あまり効果的ではない交換も必要になってきます。セットランドを伴わず《不屈の追跡者》を繰り出したり、より危険な脅威のために除去を温存すべき盤面もあるでしょう。

 《ウーロ》はゲームを速やかに終わらせることのできる、頼りがいのあるクロックです。6/6は生半可な火力では落ちず、黒いデッキの《喪心》や《究極の価格》では落ちませんし、《致命的な一押し》も紛争が必要になります。彼は再び蘇ってくるため、《突然の衰微》で倒されたところで、彼はすぐに戻ってきます。かといって放っておけば、さらにライフとカードを供給するため、アドバンテージ勝負では負けなくなります。彼が倒されたところで、別の脅威を放り込めばいいだけです。

 また、墓地からプレイできる「無料の脅威」でもあります。《ジェイス》をプレイするデッキでは《サテュロスの道探し》やその他のライブラリー掘削能力が使われますが、これも《ウーロ》と好相性です。脅威を見つけやすくなり、よりリアクティブなカードをプレイする機会が増えます。最後に《ウーロ》のマナ加速によって《約束された終末、エムラクール》が対戦相手のそれより素早く着地することができるのです。

 ライブラリーの掘り下げや《ウルヴェンワルド横断》で彼を探すこともできますが、4枚採用した際のデメリットも特にないので、4枚から減らすのは悪手です。《ウーロ》にアクセスできれば、どのようなマッチアップでも勝つ可能性が高くなるので、セルフミルやルーター能力を活用して、できるだけ多く《ウーロ》をプレイする機会を見つけることが必要です。

 さて、《ウーロ》はどうすればうまく活用できるでしょうか?

1.セルフミル

 このデッキでは《ウーロ》のリキャストを素早く、継続的に行うのが重要です。可能な限り4ターン目に戦場に戻す、というのが鉄則ですが、そのためにはライブラリーを掘り下げ彼を見つけ出しながら、4ターン目までに墓地を手早く埋める必要があります。

4《サテュロスの道探し》
 《サテュロスの道探し》はセルフミル戦略では最良の1枚です。タフ1生物とのトレードやチャンプブロックまでこなします。さらには昂揚のために墓地を肥やし、《ウーロ》で置く追加の土地を確保することもできます。この小さなコモン生物はこのデッキの隠れたヒーローと言えるでしょう。

2《忌まわしい回収》
 《忌まわしい回収》は、セルフミル戦略で2番目に最適なカードです。《発生の器》という選択肢もありますが、ショックランドが多い都合、1マナをそこに費やすのは非常に痛い行為です。また、除去やサイドボード後の打ち消しのために、《忌まわしい回収》を構えながら動くことは非常に理にかなっています。《過去からの取り組み》があまり魅力的でない理由は、《ウーロ》の脱出には固定マナが4つ含まれることと、墓地を5枚追放する必要があるため、かなりの量のカードを消費しなければならないからです。また、《忌まわしい回収》はシルバーバレット的に採用したクリーチャーを見つけ出すのにも役立ちます。サイドボード後に使う《再利用の賢者》や《残忍な騎士》に除去を依存する相手には、サイドボード後もかなり重要なカードになります。

2.1マナの呪文

 1マナの非パーマネント呪文は《ウーロ》を活かすための重要な役割を持ちます。理由はふたつ。ひとつは、手早く墓地を肥やすことができるため《ウーロ》を予定通り4ターン目に唱えるために必要ということ。もうひとつは、《ウーロ》を手札から唱える時、あるいは脱出コストで唱える際に、追加のワンアクションをとることが可能になり、ゲームの勝ちが近付くからです。


4《致命的な一押し》
 《致命的な一押し》についてはもはや説明不要でしょう。環境でも屈指の除去呪文ですが、このデッキでは《寓話の小道》を採用しており強く使えますが、特に《ウーロ》と組み合わせると、紛争を達成しつつ、《一押し》を唱えるためのマナを確保できます。まさに一挙両得、といったところでしょうか。

4《思考囲い》
 おそらくこのフォーマットで最高のカードのひとつであり、黒をプレイする一番の理由です。《思考囲い》はほぼすべてのデッキに効果的で、黒単アグロや赤単アグロといった一部の攻撃的なデッキにも十分素晴らしいカードです。《ウーロ》から得られる1マナで唱えられる効果的なアクションであると同時に、《ウーロ》が供給してくれるライフの有効な使い道でもあります。

3《ウルヴェンワルド横断》
 スウェディッシュ・スゥルタイのような色を散らしたデッキの潤滑油でありながら、ゲームの後半ではメインボード・サイドボードにおいてそれぞれ有効牌を引き寄せるチューターの機能も果たします。《ウーロ》と併用することで、このデッキはパイオニア環境で最強のトップデッキを擁するデッキになり、すべての呪文を唱えるために十分なマナ発生源を提供します。


3.ルーター

3《ヴリンの神童、ジェイス》
 《ジェイス》はこのデッキで様々なカードとシナジーを持ち、素晴らしい活躍を見せてくれます。《ウーロ》だけでなくその他のカードも有効なカードに変換してくれます。臨むならルーター能力で《ウーロ》を墓地に送り込むことができます。《ウーロ》を直接キャストすることも効果的ではありますが、4ターン目に他のアクションをとりながら《ウーロ》を唱えたいタイミングもあるでしょう。ルーター能力は昂揚の達成を助け、またマッチアップによって必要なカードを選り分ける助けをしてくれます。
 《ジェイス》はインスタントやソーサリーをフラッシュバックする手段としては破格のコストであり、場合によっては《ウーロ》よりも必要なカードになり得ます。
 加えて、《ジェイス》とセルフミル系カードの相性は特筆すべきです。《ジェイス》を2ターン目に繰り出し、続けざまに《道探し》や《回収》をキャストすると、すぐに変身させてアドバンテージを取ることができます。また、セルフミル自体がフラッシュバックの対象となるカードを見つけるのに役立ち、非常に広範囲のカードにアクセスできます。こうした手段を持っていることは、《思考囲い》合戦となるゲームにおいては特に重要です。
 最後に、《ジェイス》はサイド後に一層輝きを増します。スウェディッシュ・スゥルタイのように1対1交換を繰り返し戦っていくデッキでは、《不屈の追跡者》と組み合わせることで、相手に早いタイミングでの除去を強制し、ゲーム進行を落ち着かせます。また、サイドボード後に特定のカードにアクセスできる機会を増やせるため、矢継ぎ早に相手に対処を迫ることもできます。


4.マナの注ぎ込み先

 2アクションを取るタイミングを除いて、豊富なマナを注ぎ込む手段を持つことは、《ウーロ》をさらに活用するために重要です。

1《約束された終末、エムラクール》
 《エムラクール》はこのデッキの不可欠なパーツです。実際にキャストして勝つことは何度もありませんが、デッキに入っていることで、アゾリウスコントロールやディミーアコントロールのように、多くのデッキが確実な対処手段を持たない遅いゲームがあることを意味します。また、コンボデッキのコンボを無駄打ちさせることができるのは大きな利点です。《ウルヴェンワルド横断》のおかげで、1枚より多く入れる必要はありません。

1《歩行バリスタ》
 《歩行バリスタ》はもうひとつのマナの注ぎ込み先で、《ウルヴェンワルド横断》でサーチできます。《エムラクール》ほど強力ではないにせよ、柔軟な運用ができます。早期の昂揚達成に寄与し《エムラクール》の早期キャストを助けてくれますし、2ターン目にアグロデッキに対して唱える対処策としては最良の部類に入ります。

2《世界を揺るがす者、ニッサ》
 《ウーロ》を4ターン目に唱える目的に合致した完璧なカードです。単独で強力なだけでなく、《エムラクール》の早期キャストや《歩行バリスタ》の強化に役立ちます。サイドボード後も強く、対戦相手が強力なリアクションカードを使用してくる吸い込み口になり、他のサイドボードが活きます。13マナ払って《エムラクール》を唱えることが何回もありましたよ!


5.その他

2《クルフィックスの狩猟者》
 そこまで強力なカードというわけでもないですが、十徳ナイフのような使用感です。地上をがっちり止め、ライフゲインを継続的に行い、《寓話の小道》や《不屈の追跡者》とシナジーを形成し、土地を省き必要なカードを発見する助けになり、墓地ではエンチャントカウントされながらも、墓地対策を使われてもなお有用です。

1+1《不屈の追跡者》
 《不屈の追跡者》はゲーム中盤でのプロアクティブ戦略に大きく貢献します。《クルフィックスの狩猟者》だけでなく《ウーロ》による追加セットランドとシナジーします。また、対戦相手がこちらの墓地を《安らかなる眠り》《虚空の力戦》で対処したり、《致命的な一押し》や《思考囲い》、《神秘の論争》で妨害しようとしてくる場合の有効なカードに成り得ます。《ニッサ》や《エムラクール》が遅いときにはフィニッシャーの役割も果たします。

1《漁る軟泥》1《墓後家蜘蛛、イシュカナ》1《残忍な騎士》
 シルバーバレット戦略で、デッキスペースを圧迫せず《ウルヴェンワルド横断》を有効活用できます。

1《最後の望み、リリアナ》
 アグロ相手に素晴らしく、またコントロールにも強いのですがやや遅めです。主な理由はデッキに含めておくことで昂揚を早期に達成しながら、墓地に落ちてしまった《エムラクール》を回収する機能を持たせることです。《リリアナ》が《永遠の証人》だったら喜んで追加で投げ銭します。

2《突然の衰微》
 非常に効果的な除去で、《拘留の宝球》や《死の国からの脱出》、もしくは《悪夢を織る者、アショク》など他のサイドボードカードに対しても有効です。《暗殺者の戦利品》はより多用途ですが、《思考囲い》を軸にしたリアクティブなゲームプランでは、追加でマナを与えることは非常に危険で、追加の土地を与えることはしばしば重要になり得ます。

■サイドボードガイド

 もしデッキリストがオープンの大会に参加する場合は、「サイドボードガイドを使わない」ことを心掛けてください。サイドボードのin/outをフィックスしてしまうと、対戦相手が実行しているプランに噛み合わない場合が多いからです。僕もPTでは5回ほどディミーアインバーターと戦いましたが、毎回異なるサイドボーディングを行いました。

・ディミーアインバーター
 
-4 《致命的な一押し/Fatal Push》
-2 《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》
-1 《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope》
-1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow》
-1 《突然の衰微/Abrupt Decay》
 
+2 《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
+2 《神秘の論争/Mystical Dispute》
+3 《虚空の力線/Leyline of the Void》
+1 《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
+1 《強迫/Duress》
・《死の国からの脱出》コンボ
 
-1 《歩行バリスタ/Walking Ballista》
-1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow》
-1 《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope》
-1 《残忍な騎士/Murderous Rider》
-2 《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》
-4 《致命的な一押し/Fatal Push》
 
+2 《神秘の論争/Mystical Dispute》
+2 《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
+3 《虚空の力線/Leyline of the Void》
+1 《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
+1 《強迫/Duress》
+1 《スゥルタイの魔除け/Sultai Charm》
・アゾリウス/バントスピリット
 
後手
-1 《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》
-2 《世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》
-2 《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》
-1 《サテュロスの道探し/Satyr Wayfinder》
-1 《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
 
+2 《神秘の論争/Mystical Dispute》
+1 《喪心/Cast Down》
+1 《害悪な掌握/Noxious Grasp》
+1 《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
+1 《ビビアン・リード/Vivien Reid》
+1 《スゥルタイの魔除け/Sultai Charm》
 
先手
-1 《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》
+1 《人質取り/Hostage Taker》
・黒単アグロ
 
-1 《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》
-1 《世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》
-4 《思考囲い/Thoughtseize》
 
+1 《喪心/Cast Down》
+1 《再利用の賢者/Reclamation Sage》
+1 《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
+1 《ビビアン・リード/Vivien Reid》
+1 《人質取り/Hostage Taker》
+1 《スゥルタイの魔除け/Sultai Charm》
・5色ニヴミゼット
 
-1 《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
-3 《致命的な一押し/Fatal Push》
-2 《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》
-1 《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope》
-1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow》
 
+2 《神秘の論争/Mystical Dispute》
+2 《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
+1 《害悪な掌握/Noxious Grasp》
+1 《ビビアン・リード/Vivien Reid》
+1 《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
+1 《強迫/Duress》
・アゾリウスコントロール
 
-4 《致命的な一押し/Fatal Push》
-1 《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
-1 《突然の衰微/Abrupt Decay》
-2 《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》
-1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow》
 
+2 《神秘の論争/Mystical Dispute》
+2 《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
+1 《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
+1 《再利用の賢者/Reclamation Sage》
+1 《ビビアン・リード/Vivien Reid》
+1 《強迫/Duress》
+1 《スゥルタイの魔除け/Sultai Charm》
・イゼット魂込め
 
-2 《思考囲い/Thoughtseize》
-1 《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
-1 《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》
-2 《世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》
-2 courser of kurphi《X》
 
+2 《神秘の論争/Mystical Dispute》
+1 《喪心/Cast Down》
+1 《再利用の賢者/Reclamation Sage》
+1 《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
+1 《ビビアン・リード/Vivien Reid》
+1 《人質取り/Hostage Taker》
+1 《スゥルタイの魔除け/Sultai Charm》
・トーブランレッド
 
-2 《世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》
-1 《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》
-1 《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope》
 
+1 《喪心/Cast Down》
+1 《スゥルタイの魔除け/Sultai Charm》
+1 《ビビアン・リード/Vivien Reid》
+1 《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
・赤単アグロ
 
-4 《思考囲い/Thoughtseize》
-1 《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》
 
+1 《喪心/Cast Down》
+1 《スゥルタイの魔除け/Sultai Charm》
+1 《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
+1 《強迫/Duress》
+1 《再利用の賢者/Reclamation Sage》


■みんなに感謝を

 PTブリュッセルでホームから僕を支えてくれた皆さん、学位取得のためしばらく会えなかった皆さん、すべての人々に感謝します。特に、このデッキを細部まで調整してくれたElias Watsefeldt、Marcus Angelin、Alexander Rosdahl、Lukas Horosiewiczに特別な感謝を。ここに戻って来られたのは素晴らしいこととしか言いようがありません。今年夏に学位取得を達成したので勉学にいそしむ時間は終わり、ヒューストンでのPTファイナルでベストを尽くしたいと思います。ではまた、その時に!

Cheers,
Joel Larsson

原則、全記事全文無料で公開していますが、モチベーション維持や更新頻度の向上、家族サービス費用、コンテンツ精度の確保等のため、あなたからのサポートを随時お待ちしております。たとえ少しずつでもご支援いただければ、これほど嬉しいことはありません。よろしくお願いします!