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2.退職理由:インドでお好み焼き屋

インドでお好み焼き屋を300店舗作る!これが僕が起業前に描いた目標だった。今あらためて読むとマジで頭ヤバイと思うけど、そのときは本気だった。

僕が海外で飲食店をするにあたって、純和風ではなくエセ和食屋をやりたいと考えていた。

エセ和食屋とはお店がモダンな内装で仕上げられていて、ほとんどの食事の味がまずいというか、恣意的に日本人の好みとは別の方向にまとめられている店である。このような店はたいてい現地人によって運営されており、現地人の客で賑わっている。

僕は前職で月の半分を海外出張する生活を送っていて、上司のアテンドでかなりの和食料理屋を見てきた。その中で不思議に思っていたのは、日本人が海外で経営する和食店はそのほとんどが日本と同じ味やメニューの食事を出す店で、日本とは異なったメニューの和食を現地人向けに売っている日本人が非常に少ないことだ。

僕は日本人がエセ和食屋を海外で経営したら本格的な味で見た目が現地人好みな最強の和食屋が作れると考えていた。 

エセ和食店を起業をするにあたって、数ある和食から僕がお好み焼きを選んだのは三つの理由がある。

と格好をつけて言いたいところなのだが、実際深い理由はなく、当時の彼女(現奥さん〉が広島出身なのでお好み焼きの作り方を覚えたら喜ぶかと思いオタフクソースの研修に参加したのがそのきっかけだ。その後、この事をマレーシアの知人に話したところ、俺は昔からマレーシアでお好み焼き屋をやりたかったと言い出したので、じゃあ一緒にやろうかと海外でお好み焼き屋をやる検討を本格的に始めた。

やるからには完全にローカルの人向けで数百店舗いけるような事業にしたいとプランを練っていった。しかし、具体的な話を始めた段階で徐々に知人のテンションが下がっていったのと、僕自身がマレーシアは和食店が飽和状態だと感じて、そこで数百店舗展開するイメージができなかったので、マレーシアでお好み焼き作戦はすぐに頓挫した。

ただ、海外で和食店をやってみたい、どこまでいけるか試してみたいという気持ちは消えなかった。せっかく起業するのだからでっかく広げたい、数百店舗行けそうな国でチャレンジしたいと考えた結果、中国はかなり和食が進んでいるのでインドしかないという結論に至り、インドでお好み焼き屋をやることを決意した。

また、海外でお好み焼き屋を成功させている人の記事を見たり、外国人の好きな和食ランキングにお好み焼きがランクインしているのを見て、インドでお好み焼きはいける!と自信を深めていた。

今考えると、この頃はお好み焼き屋というアイディアを手放すと、会社を辞めて起業するという決心自体が揺らいでしまいそうで、お好み焼きに固執していた部分が大きかった気がする。冷静に思考したら色々なネガティブな考えで頭が占拠されてしまいそうだったので、お好み焼きで大丈夫だ!絶対いける!と自分に言い聞かせてた部分が凄く大きかったと思う。

はじめは広島と関西のお好み焼きの違いもついていなかったが、オタフクソース様の懇切丁寧な研修と、業務用と同じ厚みの鉄板を使って延べ500枚以上のお好み焼きを自宅で焼いた結果、かなり本格的なお好み焼きが焼けるようになった。

また、先生から日本と同じ味が再現できれば確実に成功する、というアドバイスもあり。日本と全く同じ味のお好み焼きを現地で再現してテスト販売をしようと考え、お好み焼きソースを30㎏分現地にハンドキャリーすることにした。(トップ画はその時の空港のチェックイン時の写真。)

エセ和食を志すことと、純和風のお好み焼きを作ることはどう考えても正反対の行為だ。しかし、そんな論理的矛盾に気づく余裕もなく、2016年10月末、僕は30㎏のお好み焼きソースと共にインドへと旅立った。


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日本人経営のエセ和食屋は最強か?

海外で微妙な味の和食を食べると、「こいつらは和食の味がわかってない!俺がやったほうがずっとましな店ができる!」などと考えがちだが、実はあえて日本人にとって微妙な味に調整されていることが多い。

インドでは、和食の味はかなり薄くパンチの無い味と判断されるので、スパイシーかつ塩分強めに調整される。ただ、単純にスパイスを強めにしてインド味にしてしまうと、俺はインド料理を食いに来たのではないとクレームが入ってしまう。そのため、外国人には非常に難易度が高いのだが、インド人にとっての和食のイメージを崩さない方向でスパイシーさを追求する必要がある。

日本人が経営することで、「東京から来たYugoがムンバイでやっている和食店」というように、店にストーリー性を持たせることができるのは大きなメリットだが、上記の理由から味付けでは、我々はかなり不利だと言わざるを得ない。


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