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推しに届け!ファンからの応援歌!!

 あまり知られていないが、宝塚大劇場のレストランは宝塚ホテルが業務を行っている。その為、開演前は大劇場のレストランに顔を出すようにしている。ある日、「フェリエ」にいると会計を終えた方が一人,、こちらをちらちらと気にしながら、話しかけて下さいました。

「あの…あの…話しかけても良いですか?実は、推しが休演しています。お手紙を書く時になんて書いたら良いのか分からなくなりました。どう書いたら良いですか?」

話している間に、目が潤んでくる…

この方は必死だ…今必死なんだ。私はそう思いました。本気で答えなければ…そう思わせる涙…組長をしていると幾度となく組子の悩みに答えてきたけれど、悩みにも色んな深さがあった。

 私がリスペクトするタカラジェンヌの中に月組元組長の夏河ゆらさんという存在がある。この方が居なかったら組長をする事は無かったかもしれない。在団中に「下級生の悩みについてどう答えているのですか?」と質問を投げた事がある。その時。ゆらさんは「あんな、限られた相談時間は全力で本気で貴方の事を考えるって言うねん。でもな、その時間が終わったら、貴方の好きなようにしてって。私は何とも思わないから!!って伝えておく。」

 私はこんなゆらさんの格好良さに何回も打ちのめされたのです。相談は、「してあげてる」って気持ちが生まれるとたちまち自分の考えを押し付ける事になってしまう危険性がある。その子の為にしている様で、自分の為にしてしまう時がある。ゆらさんにはそんな狡さが無かった。

 この方は、推しの気持ちが自分の中にすっかり入ってきて同じ様に辛く感じているのだなと思う。きっとこの方にとって推しのいない舞台を観る事は、非常に辛い体験なのに劇場に来たんだ。行かないわけにはいかないと…

 「その人が舞台に立っていた時の想いを書いてください。一緒に悩まないで、舞台に貴方が必要だと書いてあげて下さい。皆、必要とされたいのです。そしてゆっくり待ってあげて下さい。」

私なりに休演した経験を踏まえてお答えした。

「あっ、ありがとうございます。お話しできて良かったです。」

…あの答えで良かったのだろうか?考えながらホテルに戻った。

 ファンになるとは、ある意味、「恋」をする様なもので、そのタカラジェンヌの気持ちに共感したり、助けてあげたくなったり、応援してあげたくなったり、憧れを抱いたり…兎に角、何かその人と共感し合いたいのだと思う。ファンとは推しを通して、自身の人生にあった何らかの感情を癒したり、励ましたりしているのだと思う。その気持ちをずっと持続させてあげられる人が魅力的な表現者であり、プロであると思う。そう思うと我々のしていた仕事は人の人生に関わる。とても丁寧に取り扱わなければならない仕事だなと思う。それは、一瞬で消え去りもするし永遠に心に残る事もあるから。ファンとタカラジェンヌの関係のバランスは非常に繊細で脆い。ただそのバランスを保ち続けられたら、その関係はタカラジェンヌとファンという関係を越えていくのかもしれない。でもそれにはとても長い時間が必要だと思うし、ほんの僅かな確率で起こる事だと思う。人間の信頼関係と同じだ。

 でもあの人が、あんなに心配になる推しのあの人は…魅力的に違いない…
通り過ぎていったあの人、今、手紙を書き終えただろうか?

焦らずに紡ぎ出して下さい。貴方の言葉で…その魅力的な推しは必ず読んでますよ。

月組千秋楽!!本当にお疲れ様でした!!このエネルギーが宝塚全体に届きます様に!!

すーさん

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