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介護事業所におけるパソコンスキル問題について

 介護の仕事というのは、ご老人や障害者の方達の手助けやお世話をするだけが仕事ではない。それはどういうことかというと、介護の仕事というのは、行政が関わっている事業なので煩雑な事務処理が必要になってくる。しかし、介護を志す人たちは得てして人と関わることを望んでこの職業を選んだ人が多く、事務など書類やパソコンとにらめっこすることを得意とする人は少ないのである。


 だが、この事務作業も長年働いていると否が応でも覚えざる負えなく、管理職になる頃にはそれなりに出来るようになる人も多いのだが、ことパソコンの設定や通信設定のことになるとスキルを持っている人が非常に少ないのである。そしてこの場合、長年介護現場にいる人のほうが特に出来ないことが多いのである。


 そんなもんは解らなくなったらインターネットで検索すれば良いではないか、設定がおかしくなったら業者を呼べばいいじゃないかと思われるかもしれないが、そうも言っていられない現実があるのだ。
 なぜそうも言ってられないのかというと、締め切り所謂介護報酬の請求期限があるからだ。その期限を過ぎれば来月まで請求出来なくなり、請求が遅れればそれだけ報酬の振り込みも遅れてしまう。そんなことになれば、経営を直撃してしまい、資金の少ない中小事業所は死活問題となりかねないのである。そういう事態は絶対に避けねばならないので介護現場で多忙を極める傍ら残業をしてでも請求期限に間に合わせなければならないのである。


 特に介護現場は人手不足であり、専属で事務担当がいない場合も多い。特に中小事業所は深刻で、介護の現場で働きながらその合間を縫って事務作業をするので、当然請求もギリギリになることが日常茶飯事なのである。そんなときに、ひとたびパソコンが不調になり会計ソフトが動かなくなったりすれば一大事である。残業をしていた場合、業者も営業時間外であることも多い。また、ネットで検索して問題解決しようにも、基礎的な設定知識がなければ何を調べればいいのか皆目検討がつかないのである。


 そういう状況になったとしても対処できるように、いやそういう状況に陥らないためにも介護技術の向上と共に、一人ひとりのパソコンスキルの向上が必要になってくる。だが、人手不足で多忙を極める介護現場でそれを実現するのは非常に難しいのである。国が必死になって介護の魅力などをアピールして人材集めに躍起になっても人が集まらないこの状況で研修をしましょうといっても現実には困難であろう。研修が難しいのならば、パソコンに詳しい人を雇えばいいのではないかと思われるかもしれないが、介護事務員を雇うのもままならない中小事業所にとってそんな人を雇うくらいなら介護士を一人でも増やしたいというのが本音であろう。


 そこで解決案として提案したいのは、介護事業に付随する業務に従事する職員にも報酬を設けるということである。現行の介護制度では、介護福祉士や実務者研修終了者などの割合によって事業所に報酬が加算される仕組みになっているが、これを事務員やエンジニアにも適用するのである。そうすることで、介護士は介護の仕事に専念でき、付随する業務の職員を雇うことで事業所も安定した経営が出来るようになるのではないか。


 介護の現場は、人材が集まらないのと同時に離職率も相当なもので、厚生労働省のデータによれば採用率20.1%なのに対して離職率が19.0%にもなるのである。こうした現状を変えるためにも環境を整え役割分担をはっきりさせ現場の負荷を減らすことによって、雑務から開放され職務に専念できるようになり、離職も減るっていくと考えるのである。

Bibliography
“介護労働の現状.” https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000482541.pdf.
“特定事業所加算.” 特定事業所加算(訪問介護)について【平成30年度改定対応】, https://ads.kaipoke.biz/basic_knowledge/care_insurance_and_law/addition_subtraction/about_specific_office_visit.html.

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