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ダンジョンズ&ドラゴンズ5版シナリオ『山賊団を撃滅せよ!』(1レベル冒険者4人向け)

はじめに

 このシナリオはダンジョンズ&ドラゴンズの1レベルスタート用シナリオであり、公式の「プレイヤー用ベーシックルール(以下、PL用ルール)」「ダンジョン・マスター用ベーシック・ルール(以下、DM用ルールと表記)」を使用してゲームをプレイできるようになっている。

 プレイヤーキャラクター(以下、PC)は1レベルでスタートし、シナリオ中でレベルアップを行い、ゲームクリア時には3レベルになることが想定されている。

 基本的に善、あるいは中立属性のキャラクターを想定してシナリオは作られている。悪属性のPCの場合、仲間と協調・協力できる理由をうまくプレイヤー(以下、PL)側に付けてもらえるとゲームが円滑に進むだろう。

 舞台はフォーゴトン・レルムやグレイホークなど、ファンタジーよりの文明レベルを想定しているが、エベロンなど19世紀後半~20世紀前半モチーフの世界でも大きな問題はない。ダンジョン・マスター(以下、DM)が好きなように舞台を設定してもいいし、文明レベルが合うのならお好みの次元やオリジナル次元を使うといいだろう。

マップ

導入

 時刻は夕暮れ。PCたちは街道を歩く冒険者の一群だ。PCたちは同じ道を偶然行く道連れとして出会ったのかもしれず、あるいは酒場などでパーティを組んだのかもしれない。いずれにせよ、PCたちは出会って時間浅いものの、お互い僅かな縁を感じ、しばらくは道を同じゅうすると決める。このため、PCたちはお互いに簡単に自己紹介を行うこととなる。PLには各々のPCの特徴を簡単に演じてもらい、お互いのキャラクターを把握できる場として、またアイスブレイクとして振る舞ってもらうこと。得意技(EX:ローグの〈手先の早業〉や、バードの〈芸能〉など)があれば、ダイスロールの練習として振ってもらってもいいだろう。

 なんであれ、PCたちがある程度意気投合したところで、街道の向こうから16,7歳ほどのヒューマンの美しい娘がこちらへと駆けてくるのが見える。彼女の服は泥で汚れ、整った顔は泥だけでなく涙、そして殴打による痣で損なわれている。

「お助けください、戦士の皆様!」

 そう叫びながら駆けてくる娘の背後からは、ノールめいて下劣な笑みを浮かべる、いかにも野卑な男たちが現れる。君たちを見ると彼らはにたつきながらこちらににじり寄ってくる。リーダーらしい、鉄鋲付きの棍棒をぴしゃぴしゃ片手に打ち付けている男は君たちに向かってこの様に言う;

「おう、おう、お前ら、旅人か? てめえら、手足の一本でもへし折られたくなけりゃ、大人しくその娘と、ついでに金目の物を全部出しな」

 PCの中に【魅力】が12以上の女性キャラクターが居る場合、追加でリーダーは以下のようなことを言う。

「お、そこのお姉ちゃんは中々の別嬪じゃねえか。上玉はいくらいてもカネになるぜ。俺たちについて来な! 追加の女がほしかったところなんだ!」

 彼らはゲタゲタと笑い声を上げ、卑猥なジェスチャーを君たちに行うと、武器を抜く。PCたちがどのような応対をしようと、逃げてきた村娘や山賊に対して何らかの反応を返したなら『インスピレーション』(PL用ルール:P.38)1点を獲得する。

DMへ向けて:このシーンの狙いは、とことんまでゲスなろくでなしどもを表すことである。彼らはいかなる方法でも交渉に応じず、徹底して上から振る舞う(実力がないゆえに武力を持つPCたちを見抜くことができないのだ)。DMはPLが交渉の余地がないか探ったりするのなら、きっぱりと「無理だ」と伝えること。停戦などを呼びかけられた場合、彼らは卑猥な罵倒のボキャブラリーを顕にする。
 DMがTRPG初心者であるなら、ここで重要なのは、あくまでもPCを怒らせ、戦う理由を作ることだと忘れないこと。挑発は物語を面白くするが、行き過ぎた挑発はPLを不快にする可能性がある。したがって、PL次第ではあるが、ゲスさを抽象化するのも良い手段だ。例えば「彼らは到底描写できないような下品なことを君たちに言い、挑発してきたよ」とか、想像の余地に任せるのだ。

 ここで、PCたちは『山賊』4人(DM用ルール:P.62)と『ならず者』1人(DM用ルール:P.64)と戦闘を行う。山賊は後ろ2名がライト・クロスボウによる射撃を行い、前2名とならず者は前衛キャラクターと近接戦闘を行う。半数以上がHP0となるか、リーダーのならず者が倒された場合、残った奴らは泡を食って遁走する(=『全速力』でマップから脱出する)。相手が逃げようと全員倒そうと、PCたちは合計200点のXPを獲得する。

 戦闘が終わった後、泣きながら娘はPCにすがってくる。

「おお、おお、戦士様、ありがとうございます。私の名はメイリル。パーヴァーホープの村長(むらおさ)の代理です。厚かましいお願いとは分かっていますが、どうか、私達の村をお救いください」
「ここからほど近いウェルチェスター山の麓に、私の生まれ育ったパーヴァーホープという小村があります」
「しかし、ウェルチェスター山にある洞窟に、1週間ほど前、不逞の輩が住み着いたことで、平和だった村の生活は地獄へと変わりました」
「彼らは"ウェルチェスター辺境伯"を自称するごろつき、フルガール卿という男に率いられて現れ、これからは領主だけでなく自分にも10分の1税を納め、更に収穫税、衣服税、かまど税、炉税、家屋税、屋根税、空気税、処女税までを支払え、そうでなければ美しい娘や子供をさらい、税の代わりに奴隷商人に売り飛ばすと言うのです」
「彼らは回答を2日以内に行わなければ略奪を行う、と言い、実行しました」
「父母をはじめ、逆らった者たちはみな殺され、首を刎ねられ、あるいは吊るされました。そして彼らは逆らったがため税金を倍にする、と言い……そして村長の娘である私は、幼い子どもたちと共に見せしめとして村からさらわれ、奴隷商へ売られる前に彼らに味見としていたぶられる予定でした」
「どうかお願いします、あの薄汚い下種野郎の手から子どもたちを助けてください。まだ奴らは収奪を一度しか行ってはおらず、支払えるものをかろうじて隠しております。父母が惨たらしく殺された今、私が村長の代理を務められます。彼らを追い払ってくだされば、(PC人数x20)GPを支払うとお約束します」

 追加で質問がある場合、メイリルはこう答える。

Q:どうやって悪党たちの手を逃れたのか?
A:子どもたちのうち年長の者が、私の手鎖を解いて逃してくれた。ただ、激高した山賊たちが何をするかわからない。なるべく急いで彼らを助けて欲しい。

Q:山賊たちについて分かっていることはあるか?
A:あの手のごろつきが十数人、加えて参謀らしい何らかの悪神に仕える神官が1人と鷹使いの男が1人、それからフルガール卿がいる。

Q:どこかに休息を取れる場所はないか?
A:山賊たちに知られていない森番の小屋がある。そこには確か、ウェルチェスター山の地図などもあったはずだ。

 PCが依頼を了承すると、メイリルは小屋へとPCを案内する。

調査と事前準備

小屋の中にはアイテムとしてこのあたりの地図と、通常の矢とクロスボウ・アローがそれぞれ10本ずつ、加えて小瓶が1つ置かれている。小瓶の中身については、PCの代表者が〈魔法学〉か〈医術〉で難易度10の判定を行い、成功した場合これが『ポーション・オブ・ヒーリング』であると分かる。

 PCはウェルチェスター山の地図を読み、山賊共が住み着いている洞窟について調べ上げても良い。そうする場合、PCの代表者は〈自然〉か〈捜査〉で判定を行う。結果次第で以下のことが分かる。

・難易度10に成功:ウェルチェスター山の洞窟の地図が開示される(マップは後述)。ここは攻めるには恐ろしく難い場所だ。一度堅固に籠城されれば到底この人数では攻めあぐねることに間違いはない。内部には地下水脈があり、渇き攻めや燻攻めのような計略は全くのムダで終わるどころか、人質として囚われた子どもたちを殺すだけに終わる。ただし、唯一の入り口が細い坂道という逃げるのが難しい場所でもあるため、PCたちが襲撃しても彼らが逃げ出す心配は薄い。
・難易度15に成功:洞窟へと続く坂道は、左右を険しい崖に囲まれた細い道であり、ここを抜ける際に敵に見つかれば洞窟から矢を射掛けられるかもしれない。隠れる準備をしておくべきだ。「洞窟へと続く道」シーンの〈隠密〉判定で、PCたちは有利を得る(金属鎧を着ている場合、有利と不利で打ち消しあう)。

 調査の成否に関わらず、PCたちはここでXPを獲得し、2レベルに上がる。各種新しく得たステータスをPCたちに確認させよう。HPや呪文スロットの数は、レベルアップで上昇した分だけ現在値も上昇する(体力が8点、レベルアップで6点上昇した場合、PCのHP現在値は14となる)。
 その上でPCたちは「小休憩」か「大休憩」(PL用ルール:P.69)のいずれかを行っても良い(つまり、夜の間に素早く攻め込むか、翌朝までじっくり準備を整えるか)。ただし、PCたちがグズグズしていれば相手もPCたちを迎え撃つ準備を始めるため、大休憩を行うかどうかは慎重に考えるよう伝えよう。この先、PCが大休憩を行っている場合いくつかの場面が変化する。この後、最初に書かれた場面はPCが「大休憩を行っていない場合」、後に注釈付きで書かれた場面は「PCが大休憩を行っていた場合」の描写である。

洞窟へと続く道

 洞窟へと続く道には一匹のイーグル(DM用ルール:P.14)が飛んでいる。これはメイリルが言っていた『鷹使い』(データは後述)のペットであり、侵入者がやって来れば速やかに主に知らせる。ただし、悲しいかな鷹は鳥目であり、夜陰に乗じて潜り込んでくる相手には文字通りの鷹の目も発揮できない。
 PCたちは全員〈隠密〉判定を行い、鷹の受動知覚10(夜間のため、難易度が下がっている)を超えた成功をすれば鷹に気づかれずに進むことができる。失敗したならば、敵がPCの侵入に気づき、カンカンと鐘がなり始める。加えて、PCに向けて鷹使い及び山賊2名がロングボウとクロスボウによる射撃を行い始める。この状態では彼らは3/4遮蔽(PL用ルール:P.76)を得ているものとする。

もしPCたちが大休憩を行っていた場合:
 昼間のため鷹の受動知覚は15となる。また、鷹だけでなく『鷹使い』が既にスタンバイしており、PC側の〈隠密〉判定には不利が付く。

洞窟内のランダムエンカウント

 洞窟内では巡回している山賊と最大2回までエンカウントする可能性がある。
 PCが部屋を出入りするたびに1D20を振り、1が出た場合部屋の出口周辺の通路に山賊2体が現れて戦闘になる。これはエンカウントしなかった判定のたびに+1され、エンカウントが起こるとリセットされる。(例:1回目の判定でエンカウントしなかった場合、2回目は2でエンカウント、3回目は3でエンカウントが起こる)。合計で2回エンカウントして以降はランダムエンカウントは起こらなくなる。

見張り部屋

 見張り部屋には鷹使いと山賊2名がいる。まだPCたちが彼らに発見されていない場合、「不意打ち」(PL用ルールP.71)を行っても良い。戦闘に勝利した場合、PCは200XPを獲得する。

もしPCたちが大休憩を行っていた場合:
 見張り部屋には鷹使いと山賊4名がおり、加えて彼らがPCを発見していた場合は部屋の入口にボールベアリング(PL用ルールP.51)がばらまかれている。

練兵場

 この広い場所は練兵場の代わりになっており、薄汚い山賊が2人がかりで、棍棒で12歳かそこらの男の子を殴りつけている。少年はお仕着せのようなダガーを渡されたようだが、もはやダガーを振るう力もなく息も絶え絶えだ。

 この卑劣漢たちは、ニヤニヤ笑いながら口々に以下のようにうそぶいている。

「どうした、お姉ちゃんを逃した根性はどこに行ったよクソガキ……?」
「てめえみたいなガキが大人に逆らわないようにするには棒でしつけてやるのが一番さ!」
「ヒヒヒ、何発殴ったら死ぬかなァ! 死んだらさらし者にしてやるよ!」
「そうだ、村の奴らの前にこいつの死体を投げだしてやろうぜ!」

 彼らはお楽しみであるため、表で騒ぎが起こっていたとしてもろくに気にしていない。PCが〈隠密〉判定に成功すれば、彼らを不意打ちできる。
 『山賊』2人との戦闘を行うこと。ただし、彼らの武器は『クラブ(PL用ルール:P.48)』に変更されているため、ダメージは1D4+1点であり、クロスボウも持っていない。

 彼らを全滅させると、PCは50XPを獲得する。
 男の子は苦痛に喘ぎながらも礼を言う。

「ありがとうございます……メイリル姉さんは無事ですか……」
「奴らの参謀は恐ろしい女妖術師です……彼女は何か悪いものの力を借りて、死体を操っています……どうか気をつけてください……」

 この言葉を言い終わると男の子は気を失う。PCたちはインスピレーション1点を獲得する。

もしPCたちが大休憩を行っていた場合:
 練兵場には子供の死体が倒れている。全身痣だらけで、手足はおかしな方向に曲がり、顔は涙と絶望で歪んでいる。おそらく山賊共はこの子供をいたぶり殺したのだろう。吐き気をもよおすような所業だ。
 だが、更に吐き気をもよおすことに、死体はあなた達が近寄ると、ゆっくりと起き上がり、襲いかかってきた……! 『ゾンビ』(DM用ルール:P.39)1体との戦闘が始まる。倒した場合、ゾンビはうわ言のように、
「姉さんを……助けて……」
と言い、今度こそ安らかな眠りにつく。

 ゾンビを倒すとPCは50XPを獲得する。

台所

 台所では4人の山賊たちがしたたかに酔っ払っており、PCが入ってくると慌てて立ち上がる。彼らは毒状態(PL用ルール:P.109)として扱う。彼らは警報があれば武器を用意しているが、そうでない場合は1回目のアクションを武器を準備するために費やすことになる。
 酔っ払った山賊たち4人を倒すとPCは50XPを獲得する。
 台所には彼らが掛け金として使っていたらしい100SPに加えて、難易度10の〈知覚〉判定に成功すればワインが1瓶手に入る。〈歴史〉で難易度10の判定に成功すれば、これが年代物の高級ワインで、売却すれば40GPになると分かる。

もしPCたちが大休憩を行っていた場合:
 台所の山賊は全員シラフで襲ってくる。倒した場合、PCは50XPを獲得する。
 また、ワインは台所の奥のほうに隠されており、発見の難易度は15になる。

寝室

 寝室にはならず者1人がいる。彼は先程まで眠っていたのか、鎧を着ていない。そのためACが11ではなく10となる。倒した場合100XPと「貯蔵庫の鍵」を獲得する。

もしPCたちが大休憩を行っていた場合:
 寝室の遭遇は飛ばす(貯蔵庫の鍵は手に入らない)。頭目の間でならず者が追加で1人現れる。

貯蔵庫

 貯蔵庫には鍵がかかっており、〈手先の早業〉で難易度15に成功するか、貯蔵庫の鍵を開ける必要がある。内部には以下のようなアイテムが保管されている。

・300GP分の金貨
・ブーツ・オヴ・ストライディング・アンド・スプリンギング(DM用ルール:P69)1つ

牢獄

 牢獄の前にはならず者1人が存在し、武器を手に子どもたちを脅しつけている。PCたちが部屋に入ると、彼は襲いかかってくる。彼を倒すと、「牢獄の鍵」を落とすとともに、100XPを得る。
 悪人たちが倒されると牢獄の中の子どもたちはPC達にこう言う。

「助けが来たってことは……ありがとう、メイリル姉ちゃんが呼んでくれたんだね……」
「マルクは大丈夫? 彼は姉ちゃんを逃したからって理由で、ごろつきが連れて行ったんだけど……」
「どうか気をつけて、頭目は一番広い部屋でふんぞり返ってる嫌な奴で、すごく強い。ただ、同じくらい恐ろしいのは"サロメ"と呼ばれている女神官で、なにか悪いものから力を得てるみたい。それと、あの神官の魔法には気をつけて……傷が治らなくなる呪いをかけてくる」

 PCたちが牢番の悪党たちを倒し、子どもたちと交流した場合、インスピレーション1点を獲得する。

祭壇

 祭壇は邪悪な存在のものであるのに間違いはなく、いくつもの動物と人間の骨で飾り立てられている。〈宗教〉か〈魔法学〉で難易度15の判定に成功すれば、これがデーモン・ロードのオルクスの祭壇であると分かる。オルクスの神官はアンデッドを使役する力を得、死を振りまくこと、誰かを苦しめ生贄に捧げることに喜びを感じる。

もしPCたちが大休憩を行っていた場合:
 祭壇には呪いの罠が仕掛けられており、近づいたキャラクターは難易度15の【知力】セーヴィング・スローを行わなければならない。失敗した場合、呪いによってキャラクターの頭はゾンビのように朦朧としはじめ、1段階の「消耗状態」(PL用ルールP.110)になる。一度こうなった場合、小休憩or大休憩を行うか、戦闘中にダメージを受けた時に難易度15の【知力】セーヴィング・スローに成功するまで効果が続く。

頭目の間

 頭目の間には鎧兜を付け、長剣を持っているものの捻れた性根を隠せていない大男――フルガール卿――と、モーニングスターを持ち、妖艶であるが邪悪な雰囲気を持った女――邪神官サロメ――、及びPC人数と同数の山賊がいる。彼らがこの山賊共の頭だ。PCたちはインスピレーション1点を得る。
 彼らは僅かな焦りの混じった残忍な笑みを浮かべており、大男は君たちに向けてこう言う。

「よくまぁここまで攻め込んできたものだ! よほど自分に自信があるのか? 言っておくが、私はフルガール・ウィルチェスター、ウィルチェスター辺境伯として派遣された正規の騎士だ。私に逆らうというのは国賊に等しいぞ! 国に逆らう気かね?」

 〈ペテン〉か〈歴史学〉で難易度15の判定に成功すれば、それが全くの嘘八百であり、ウィルチェスター辺境伯などはどこにも存在しないことが分かる。もちろん正規の騎士などというのもまるで嘘であり、そこらのごろつきが騎士を自称しているだけだ。

 もしPCがこの判定に失敗した場合、敵は君たちが一瞬怯んだことにつけこみ、不意打ちを行ってくる。また、彼らのイカサマを見破ったにせよ、見破れなかったにせよ、彼らは既に『ブレス』の呪文を自分たちに掛け終えている。

 戦闘中フルガールと部下の山賊たちはサロメへの接敵を妨害するように移動し、またもっともACが低そうなターゲットに近接攻撃を集中させる。
 サロメは後ろからフルガールが狙った相手にチル・タッチによる攻撃を行うが、自身に敵が隣接した場合、インフリクト・ウーンズで攻撃する。また、部下の山賊もしくはフルガールが倒された場合、疑似呪文能力によりそのキャラクターをゾンビへと変化させる(データはそのままゾンビのものを使用すること)。また、もしまだ倒されていない山賊がいる場合、2ターン毎に生き残りの山賊たちのうち1人が敵に追加される。

 この邪悪な頭目と参謀を倒した場合、PCたちは大体500XPの経験点を得る他、フルガールの持っていた『キーンブレード』(ロングソード+1)をゲットする。

もしPCたちが大休憩を行っていた場合:
 寝室の遭遇の代わりに、ならず者1体が最初から追加される。ただし、サロメはゾンビを既に作っているため、「オルクスの加護」による蘇生は行わない。
 得られる経験点は600XPとなる。

エンディング

 PCたちが山賊たちを見事倒した場合、PCたちはメイリルや子どもたちに感謝され、報酬を獲得する。加えて、もしPCがマルクを生存させていた場合、彼は「山賊の持っていたものをこっそり盗った」として、「ワンド・オヴ・マジック・ディテクション(DM用ルール:P69)」1つを君たちに手渡す。
 彼らを救ったことにより、君たちはレベル3にアップし、次の冒険に旅立つこととなる。

NPCデータ

・"鷹使い"

 かつて鷹匠の弟子だったらしいこの人物は、聞きかじったレンジャーの技を盗み、山賊の一員に成り果てた。このろくでなしは人間を遠くから射殺すことを喜び、鷹匠の持つ誇りなどひとかけらも存在しない。

中型・人型生物(エルフ)、混沌にして悪
AC:14(スタテッド・レザー)
HP:16
移動速度:30フィート

 【筋】12(+1)	【敏】15(+2)	 【耐】12(+1)
 【知】10(±0)	【判】14(+2)	 【魅】11(±0)
 
セーヴ:【敏】+5、【判】+2
技能:〈隠密〉+4、〈生存〉+4、〈動物使い〉+4
感覚:受動〈知覚〉15
言語:共通語
脅威度:1/2

素早い離脱:このキャラクターは離脱アクションをボーナス・アクションとして使用できる。
動物の相棒:「イーグル」1体とテレパシーで会話し、見たり聞いたりしたものを共有できる。

アクション
・複数回攻撃:2回の遠隔攻撃を行なう。
 ショートソード:近接武器攻撃:攻撃+4、間合い5フィート、目標1つ。
 ヒット:5(1d6+2)[斬撃]ダメージ。
 ロングボウ:遠隔武器攻撃:攻撃+4、射程150/600フィート、目標1つ。
 ヒット:6(1d8+2)[刺突]ダメージ。

・自称"ウィルチェスター辺境伯"フルガール

 この自称"辺境伯"様は勿論全く爵位などは持っておらず、元々は口の回るごろつきの大将だった。彼がより邪な道に進んだのは、隣りにいる魔女サロメにそそのかされたためである。義侠家を気取っていたこのゆすりたかりのチンピラは、美貌の魔女によって倫理観を完全に狂わされ、弱いものをいたぶり、女子供を殺すことに何一つ良心の痛みを感じない極悪人に成り果てた。

中型・人型生物(ヒューマン)、中立にして悪
AC:16(チェイン・メイル)
HP:35
移動速度:30フィート

 【筋】16(+3)	【敏】11(±0)	 【耐】14(+2)
 【知】11(±0)	【判】11(±0)	 【魅】15(+2)
 
セーヴ:【耐】+4、【判】+2(ブレスによるボーナス+1D4)
技能:〈威圧〉+2、〈ペテン〉+2
感覚:受動〈知覚〉10
言語:共通語
脅威度:1

アクション
・複数回攻撃:2回の近接攻撃を行なう。
 『キーンブレード』(ロングソード+1):近接武器攻撃:攻撃+6、間合い5フィート、目標1つ。
 ヒット:9(1D10+4)[斬撃]ダメージ。
 ヘヴィ・クロスボウ:遠距離武器攻撃:攻撃+2、射程100/400フィート、目標1つ。
 ヒット:5(1d10)[刺突]ダメージ。
(ブレスによるボーナス+1D4)

リアクション
受け流し:フルガールに近接攻撃がヒットしそうになった時、このNPCは自分のACに2を加えることができる。
これを行なうためには、フルガールが攻撃者を見ることができ、かつこのNPCが近接武器を使用していなければならない。

・"オルクスの巫女"サロメ

 オルクスに魂を売り渡した邪神官である彼女の行動はシンプルで、より多くの命を奪い、あるいは苦しめることを好む。特に無垢なもの、善良なものであればあるほどよい。そのため彼女はフルガールをそそのかし、いくつもの強盗殺人や商隊襲撃を行わせた挙げ句、辺境の村の支配者となる作戦を囁いた。

中型・人型生物(ティーフリング)、混沌にして悪
AC:15(スケイル・メイル)
HP:25(+本来のHP17、フォールス・ライフで+8)
移動速度:30フィート

 【筋】10(±0)	【敏】12(+1)	 【耐】14(+2)
 【知】12(+1)	【判】16(+3)	 【魅】15(+2)
 
セーヴ:【判】+2、【魅】+2(ブレスによるボーナス+1D4)
技能:〈ペテン〉+4、〈宗教〉+3、〈説得〉+4
感覚:受動〈知覚〉13
言語:共通語、地獄語
脅威度:1

地獄の魔法支援:サロメは呪文に対する精神集中判定に有利を得る。

アクション
呪文発動能力:この司祭は2レベルの“呪文の使い手”であり、
呪文発動能力値は【判断力】である(呪文セーヴ難易度13、呪文攻撃+5)。
この司祭は以下のクレリック呪文を準備している。

初級呪文(回数無制限):チル・タッチ、ライト、レジスタンス
1レベル(4回、うち2回使用済み):インフリクト・ウーンズ、フォールス・ライフ、ブレス

オルクスの加護:1日に1回だけ、1リアクションを使うことで、サロメは呪文スロットを消費することなく、
死亡した味方キャラクター1体を「ゾンビ」もしくは「スケルトン」として蘇らせることができる。
これによって作り出した「ゾンビ」もしくは「スケルトン」が60フィート内にいる場合、
サロメは1回のボーナス・アクションを使用し、その「ゾンビ」か「スケルトン」に念じてで命令を下せる。
命令はそのクリーチャーの行うアクションと移動を指定することができる。
あるいは、「この場所を守れ」などの命令を下すことも可能である。
複数体の「ゾンビ」や「スケルトン」が範囲内にいる場合、同時にまとめて同じ命令を下すことができる。

モーニングスター:近接武器攻撃:攻撃+2、間合い5フィート、目標1つ。
ヒット:4(1d8)[刺突]ダメージ。
(ブレスによるボーナス+1D4)

チル・タッチ/負力の接触
初級呪文、死霊術
発動時間:1アクション
射程:120フィート
構成要素:音声、動作
持続時間:1ラウンド
 君は射程内の1体のクリーチャーのスペース内に、幽霊じみた骸骨の手を作り出す。墓場の悪寒でそのクリーチャーを苛むべく、1回の遠隔呪文攻撃を行う。ヒットした場合、目標は1d8[死霊]ダメージを受け、次の君のターン開始時までHPを回復できなくなる。
 アンデッドを目標としてヒットを与えた場合、目標はさらに次の手番まで君への攻撃に「不利」を得る。

終わりに

 このシナリオは商用目的でなければ、自由にプレイ/改変/転載してもらっても構わない。ただ、そのときにはできれば元のこのシナリオへのリンクを張ってもらえれば嬉しい。

更新履歴

21/08/10 公開
21/08/12 誤字脱字を修整
21/09/05 経験点ルールを勘違いしていた! ので変更

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