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ニンジャスレイヤー自作NPC集(前編)

はじめに

これはニンジャスレイヤーTRPGに登場する自作のNPC集であり、基本的にはPCの敵として運用するのに合ったキャラクターである。
NMは自由にこれらのNPCをシナリオで使ってほしい。

後編はこちら

アイドーロン/オイランドロイドを憎む元アイドルニンジャ

「ワオオーッ!」
 ネコネコカワイイの非人間的ジャンプを見て、20万人のファンは一斉にサイリウムを振り立て、サイバネ置換した足を折り曲げて同じくジャンプし、シャウトし、泣き、笑った。
 彼女らは完璧なアイドルだ。泣かない、疲れない、わがままを言わない、特定の人間と恋愛行為しない、企業のプロパガンダを諾々と受け取る、その他あらゆる点においてファンとスポンサーとマネージャーのWinWin関係を産む。
熱狂するNERDSの中に、同じく熱狂するヨシマ・トモマキもいた。彼はカワイイコの信奉者であることを表す赤いボブカットを意匠化したシャツを着て、シャウトしていた。
 突然音楽が中断し、舞台が暗転する。「技術的トラブルドスエ」というマイコ音声が響き、熱狂に冷や水を浴びせかけられたファンからはブーイングが上がった。そして、そのブーイングをかき消すように。「BATATATATA!」「BATATATA!」「イヤーッ!」「ピガーッ!」
 数発の銃声とカラテシャウトが鳴り響いた。会場はざわめき、困惑の声が漏れた。暗転が明けた時、舞台の上には5人の女がいた。ネコチャン、カワイイコ、そしてそっくり同じ顔の3人の重サイバネの女。女のことをどこかで見た気がして、ヨシマは困惑した。
 ネコチャンとカワイイコは弾丸とカラテを受け、火花とパーツをそこかしこに散らしていた。会場は静まり返った。3人の女が会場に手をかざす。アサルトライフルへとサイバネ置換された腕から、弾丸の雨が降り注いだ。
「アババーッ!!」「アイエエエエエ!」
 悲鳴が上がり、ファンたちは逃げまどう。その中で、ヨシマは気づいた。ネコネコカワイイ開発より前に活躍していたアイドルグループがあったことに。女の顔は、その時のグループリーダーに似ていた。
「まがいもののアンドロイドめ……」/「貴様等は私から夢を奪った!」/「カスのような消費者ども! お前たちが前世紀に消費し尽くしてゴミのように捨てた偶像が帰ってきたぞ! ありがたく死ね!」

アイドーロンはネコネコカワイイによって職を失い、夢を大資本に破壊された前世紀のアイドルがオナタカミ(そして、背後にいるアマクダリ)のエージェントに唆され、憎悪の果てに人工的なニンジャソウル憑依実験を受けた存在である。
彼女はネコネコカワイイを、ピグマリオン・コシモト社を、オムラを憎むこと甚だしく、またアルゴスを除いてあらゆるAIが自律思考するという行為そのものを許すことができない。
たとえばモーターユンコのような存在は、彼女にとっては最大の敵であることは言うまでもない。
アイドーロンはオナタカミ製のサイバネによって全身を置換されており、自身が脳波によってコントロールする2体の自身の複製とともにユニットを組んで戦闘を行う(彼女自身もどれが複製でどれが本体なのか、実のところ見分けが付いていない)。
実のところ彼女の脳は3つの肉体いずれの中にもなく、オナタカミはすでに脳を摘出してバイオ脳チップ化してしまっている。
3つ全ての肉体が破損してなお自意識が残ることに気づけば彼女は自身がオナタカミに何を奪われたのか気づくだろうが、それを見越してオナタカミは彼女に爆弾を仕込んでいる。

アイドーロン(種別:ニンジャ/重サイバネ)
カラテ:8  		体力:13
ニューロン:5		精神力:7
ワザマエ:8 		脚力:6
ジツ:0   		万札:10
近接攻撃ダイス:11	遠隔攻撃ダイス:11	回避ダイス:12(Hard)

◇装備とサイバネ
生体LAN端子+
テッコ+、内蔵マシンピストルx2
サイバネアイ、マルチロックオン照準
強化骨格
ヒキャク、ブースター・カラテ・ユニット

◇スキルとジツ
●連続攻撃2、●連射2、●マルチターゲット、●疾駆
●不屈の精神、●スローモーション回避、『テクノカラテ』、『完璧な連携』、
『妄執』、『オイランドロイドへの憎悪』、『バイオ脳チップ蘇生者』、『脳爆弾』

『テクノカラテ』:
アイドーロンが行う近接攻撃の出目に6が含まれていた場合、そのダメージを+1する。
加えて、【精神力】1点を消費することで、その手番の間だけ有効な「連続攻撃回数+1」を得る。

『完璧な連携』:
アイドーロンは自身と全く同一のデータを持つ複製体2体とともに出現し、
それらと完璧なまでの連携をとって攻撃する。
そのため、自身(及び複製体)が遠隔攻撃を命中させた対象に対しては、
自身が同じターンに行う近接攻撃の回避難易度が+1される。
ただし、この効果を得られるのはどれか1体のアイドーロンだけである。

『妄執』
アイドーロンの激しい妄執は、自身を傷つけた者への激怒として発せられる。
機体のうちいずれか1つが破壊された場合、このニンジャの近接攻撃ダイスは5つ増加する。
機体のうち2つが破壊された場合、このニンジャの連続攻撃回数は+1回され、
「キリングマシーン」を得る。

『オイランドロイドへの憎悪』:
アイドーロンはオイランドロイドを激しく憎んでいるため、
オイランドロイドに対する近接攻撃や遠隔攻撃のダイスが2個増加する。

『バイオ脳チップ蘇生者』:
アイドーロンはバイオ脳チップにより蘇生された存在であり、
そのためにサイバネ由来のあらゆる狂気や精神力最大値低下を無視しているが、
微妙なラグによってあらゆる回避難易度が+1されている(反映済み)。
しかし、本人はこのことを知らず、自分のいずれかの肉体に生身の脳が存在すると思っている。
自身の機体が3機とも破壊された場合、アイドーロンは自身に脳がないことに気づき、
アイデンティティ崩壊によって発狂して無差別殺戮を行う。

『脳爆弾』:
アイドーロンのバイオ脳チップには小型爆弾が仕掛けられており、アマクダリへの反逆行動を行った場合このニンジャは即死する。

◇補足
2機のアイドーロンが内蔵マシンピストルによる連射4x2を行い、命中した相手に最後のアイドーロンが近接攻撃を行う。

ガンズプリーチャー/銃を盲愛するカルティストニンジャ

 ヒルビリーは油断なく目の前のニンジャを見た。己のホルスターの上で手がほんのわずか動き、汗が肘の裏を滴る。
 ヒルビリーが発砲音を聞きつけて駆けつけたとき、目の前の巡回牧師めいたニンジャは、おのれの支配下にあったバイオ米農家の死体の前で、いまだ硝煙漂う銃をぶら下げていた。
 残念なことにヒルビリーが背中を撃つ前に、ニンジャはこちらへ向き直っていた。もう少し慎重に足音を殺して向かうべきだったのかもしれないが、ここしばらく襲ってくるのは獣程度のものだったため、また凶暴なバイオ雀の襲来かと思ったのだ。
 強い。ヒルビリーは舌を巻いた。目の前の男の銃のワザマエは相当だ。奴が片手に持った拳銃の弾丸を回避するのは相当に困難だ。己の二丁拳銃の連射で殺すことはできるが、重傷を負うのは間違いない。
 一丁拳銃使いのニンジャと、二丁拳銃使いのニンジャ同士のイクサでは、ワザマエが拮抗している場合先に一丁拳銃側が射撃すれば敗北する。先に撃った相手の弾丸軌道に合わせて、自身の弾丸を当てることで、回避不能の弾丸を撃ち落とし、もう一丁の弾丸を急所に当てる。ヒルビリーはこれで何度も拳銃使いを殺してきたのだ。
 相手が引き金を引いた瞬間、ヒルビリーはリボルバーを抜き放った。右手の弾丸が敵の弾丸とかち合って叩き落とし、左手の弾丸は大きく逸れた。
「グワーッ!」
 ヒルビリーは左手の肩口に弾丸を食らい、よろめいた。じわじわと血が己の装束を濡らすのがわかった。
「変態野郎めが……」
 ヒルビリーは呻いた。そいつは楽しげに、口から生えだしたライフルの銃身を舐めた。
「主はライフルを撃ち、野の獣をしとめ、群衆にお配りになった。一丁のライフルしかなかったにも関わらず、群衆全員が満腹し、骨が駕籠9個を一杯になるほどの肉が取れた」/「合衆国修正法第二条は永遠に有効だ」/「ああ、愛しのシャーリーン……」/「ジーザス!」

ガンズプリーチャーは崩壊したアメリカからネオサイタマへと移住してきた白人ニンジャであり、旧時代への懐古趣味甚だしい巡回牧師めいた格好をしている。
彼は旧アメリカへの歪んだ郷愁と銃器への偏愛、過激派キリスト教カルトめいた思想から彼の頭の中にしかない宗教を作り上げていた偏屈な老人だったのだが、ある時ニンジャソウルが憑依した結果メガロ妄想が拡大、教義に従ってかつてアメリカ軍が使っていたアサルトライフル(ガンズプリーチャーはこの銃を『シャーリーン』と呼ぶ)を飲み込んで持ち歩き、自身のカルトを布教するという奇行に出た。
言うまでもなくガンズプリーチャーは狂っているのだが、彼はテッポウ・ニンジャクランのソウル憑依者であり、片手に持った炸裂弾入り拳銃のワザマエはすさまじく、さらに口の中に仕込まれたアンダーバレルグレネードランチャー付きアサルトライフルのアンブッシュは大抵のニンジャを殺すに足りる。
ガンズプリーチャーは自身のメガロ妄想的アメリカのルールに従って農家を襲撃し、脅迫によってコメ畑をバイオトウモロコシ畑に変更させる、非白人を銃撃する、旧ドルでの取引を拒んだ商店を燃やすなどの狼藉三昧を働き、複数人の信仰を強制したカルトを率いている。

ガンズプリーチャー(種別:ニンジャ)
カラテ:5  		体力:8
ニューロン:6		精神力:7
ワザマエ:8 		脚力:6
ジツ:5   		万札:15
近接攻撃ダイス:5	遠隔攻撃ダイス:14	回避ダイス:9
ソウル:テッポウ・ニンジャクラン(銃器による遠隔攻撃ダイス+5)

◇装備とサイバネ
『炸裂弾入りリボルバー拳銃』、巡回牧師めいた装束(特筆する効果なし)、
ライフル薬莢型十字架(ブードゥー)、バイオサイバネ胴体、『臓器内蔵銃』

『炸裂弾入りリボルバー拳銃』:
「遠隔武器」「拳銃」「リボルバー」「ダメージ2」「連射2」「時間差」「マルチターゲット」

『臓器内蔵銃』:
手番終了時に胃の中に仕込んだ旧世代アサルトライフルを発射する(射撃は自動成功する)。
この銃撃は予想もできないアンブッシュであるため、
この銃による射撃を見たことがないキャラクターは「回避難易度+1」を受ける。
以下の2種類の効果を選ぶことができる。
旧時代アサルトライフル
「内蔵武器」「遠隔武器」「銃器」「小銃」「ダメージ1」「連射4」「時間差」
旧世代アンダーバレル・グレネード
「内蔵武器」「遠隔武器」「銃器」「小銃」「爆発:カトンLv3」

◇スキルとジツ
●連射2、●マルチターゲット、●時間差
●タツジン/ミリタリー、●ウィークポイント射撃、●アランの作法、
『ニンジャ動体視力』、『弾道曲げ』、『ファニングショット』

『ニンジャ動体視力』:
このニンジャは「マルチターゲット」「時間差」を得る。
さらに、ガンズプリーチャーが使うあらゆる銃器は「時間差」を得る。

『弾道曲げ』:
ガンズプリーチャーは【精神力】1を消費し、「難易度:Hard」の「ジツ発動判定」に成功することで、
手番終了時まで自身の非内蔵銃器(つまり、『炸裂弾入りリボルバー拳銃』による攻撃)に
「対ニンジャ仕様」を追加できる。

『ファニングショット』:
ガンズプリーチャーは、【ワザマエ】で「難易度:Hard」の判定に成功することで、
射撃の代わりに自身から射線が通るキャラクター最大3体を対象とし、
それらのキャラクターに「ダメージ2」「回避ダイスダメージ2」を与えることができる(回避難易度:Hard)。
これはリボルバーの弾3発を消費し、弾丸が足りない場合は使用できない。

◇補足
手番にダメージ2の射撃を時間差で2回(精神1消費した場合回避H)→旧世代アサルトライフルで4連射orグレネード攻撃を行う。

シャイロック/ふわふわローンの邪悪なマッチポンプ借金ニンジャ

「ニャイエエエエ!」
 目の前の債権回収クローンヤクザに向けてツインテイルズは恐怖した。ツインテイルズが河川敷に勝手に作った段ボールハウスから次々と物が運び出されていく。キャットフード、マタタビ、ぼろぼろの楽譜、お気に入りの毛布、爪とぎ用の板、ビニールに包んだハッパとキノコ、サイケ音楽が入ったカセットデッキ、そしてネコたち!
 ツインテイルズがネコとお気に入りの毛布に入り、ハッパと音楽をキメていた時、突然荒っぽく段ボールハウスを追い出され、債権回収を告げられたのだ! もちろん全く身に覚えはない!
「絶対なんかの間違いだって!」
 ツインテイルズはもがきながら抗弁した(彼女の両手両足は戦闘用オイランドロイドにがっちりと握られており、カラテに乏しい彼女には抜け出せそうにない)が、クローンヤクザは無慈悲なヤクザシャウトを放つと、彼女に一枚の紙を突きつけた。それは……借款契約をツインテイルズ自身が行ったという確かなログ! それも借金はなんと……1億円!
「ニャイエエエ! これは……こんなの知らない!」
「チャルワレッケコラー! 臓器全部摘出だッコラーッ!」
「ニャイエエエエ!」
◆◆
「アハーハーハー。マケグミの足掻きはいつ見ても笑えるな」
 オイランドロイドのカメラアイ越しにその光景を眺めていたニンジャは手を叩いて笑った。彼の名前はシャイロック。彼がLAN直結しているのはふわふわローンのUNIXだ。違法ではない。彼はふわふわローンの支店長であり……そして自店舗の売り上げを上げるため無作為に選んだマケグミ市民の口座をハッキング、億単位の借金を抱えさせているのだ!
「さぁて……次のマケグミは誰にしようか……おっ」
 シャイロックは名簿から良さそうな名前を見つけた。中産階級のサラリマン。これなら悪くない。彼は「フジキド・ケンジ」と書かれたその銀行口座に向けてハッキングを行うことに決めた……!
「アハーハーハー。マケグミの足掻きはいつ見ても笑えるな」/「てめえの借金は1億円だ。どうやって返すね?」/「ここに証拠があるんだぞ! てめえが金を借りたって証拠がよぉ!」/「これがマネーの力だ! 見ろこのオムラ製高級ガードオイランドロイドとモーターヤブを!」/「バカナ……財力は俺のほうが上のはずなのに……」

 シャイロックはふわふわローンの支店を任されている邪悪なハッカーニンジャだ。彼は自身のハッキング能力を悪用し、それによってモータル・ニンジャ問わず強制的に1億円のローンを組ませようとする。
 ニンジャや有能なハッカーであれば高速タイピングによって介入し、ローン攻撃を中止できるだろうが、そのようなワザマエがないのならシャイロックを殺害するしか方法はない。
 シャイロックはふわふわローンの支店にこもりきっており、そこのUNIXに直結してハッキングを行っている。
 彼はカラテは弱いが、戦闘中はオイランドロイドを護衛としながら、できるだけ多くのキャラクターにローンを背負わせようとする。また、モーターヤブやクローンヤクザを次々に呼び出して、自身を守ろうとする。
 シャイロックは無差別にハッキング対象を選んでいるため、スレイトのようにその相手がニンジャスレイヤーだったり、あるいはPCだったり、重要なNPC(例:ソウカイヤの中堅どころのニンジャやハッキングに疎いシックスゲイツなど)だったりすることは十分起こり得る。

シャイロック(種別:ニンジャ)
カラテ:2  		体力:3
ニューロン:9		精神力:10
ワザマエ:6 		脚力:3
ジツ:5   		万札:50
近接攻撃ダイス:2	遠隔攻撃ダイス:6	回避ダイス:9 ハッキングダイス:19
ソウル:ハッカーソウル(ジツ発動判定にハッキング修正追加)

◇装備とサイバネ
生体LAN端子+、『脳内埋め込み型UNIX』
『脳内埋め込み型UNIX』:
ふわふわローンの支店長であるシャイロックは、財務計算用に脳内に小型UNIXを埋め込んでいる。
これは本来の財務計算能力強化に加えて「ハッキング」ダイスを+4個している。

◇スキルとジツ
●IRCコトダマ空間認識能力(使用しない)、●ネットワーク完全没入、★サモン・クローンヤクザ、
★★サモン・オイランドロイド、★★サモン・ウォーカー、『強制ローン加入』

『強制ローン加入』:
シャイロックはハッキングによって敵ニンジャの銀行口座に潜り込み、
即座に財産を奪い取った上ローン加入させる。
このニンジャは本来ハッキング対象でないキャラクターをターゲットに、特殊な「電子戦」を行うことができる
(この時、『☆タツジン/電脳戦』と同じく直結攻撃と無線LAN攻撃が可能)。
シャイロックが3ダイス以上電子戦に差を付けて勝利した場合、そのキャラクターは所持する万札全てを失い、
ふわふわローンを「万札:10000」で組んだ状態にされる。それ以外の場合は特にダメージなどはない。
その戦闘中に「その他の行動」を消費し、「ハッキング:U-Hard」の判定に成功するか、
シャイロックを倒せば万札は戻ってくるし、ローンを組む必要がなくなるが、
戦闘で敗北した場合ローンは確定する
(どうにかして『万札:10000』を返済しなければキャラクターロストだ)。

◇補足
戦闘開始時から没入状態であり、「★★サモン・オイランドロイド」を使って自身を守ろうとする。
それ以降はクローンヤクザやヤブを呼びつつ、『強制ローン加入』でふわふわ死を狙う。

デスロジスト/外道の快楽殺人ニンジャにして、ヌエの怪物使い

 自宅のガレージでミカゼ・エイミはダーツを投げた。ダーツは見事に的の中心に突き刺さり、友人を驚かせた。「急にダーツ、上手くなったじゃん!」 パンクスの友人が言う。
「へへ。なんかさ、最近、急にできるようになったんだよね! こういうのが!」ミカゼは笑いながらコークを口に運んだ。数日前、熱を伴う奇妙な夢を見た。それから、気づくと何かをうまく投げられるようになった。この前まで運動音痴だったのに、100メートルを9秒切ることができるようになった。そして、この時期に多い静電気を浴びることが減った。というか、なくなった。
「そういや、お前のオヤジも得意だったんだろ? 運動。だったら急に遺伝したとか」「やめてよ」ミカゼは顔をしかめた。父親とは折り合いが良くない。彼はパンクスだとか、そういうものを理解しない。アベ一休のこともわからないし、その他のことだって……だからこのガレージに自室を作った。本当は一人暮らししたかったが、まだ若すぎると言って許してくれなかったのだ。センタ試験の時期は近づいてるんだぞ、まだ一年あるからって気を抜いていたら将来が不安だ、などと顔を合わせるたびに言われる。父親がいなくなればいいのに。ミカゼはコークを飲みながらそう思った。もし自分がニンジャだったら、ニンポで父親をパッ! と消してしまって、アベ一休みたいなバンドを始めるのに。
 がしゃん、という音が母屋からしたのはその時だった。「なんだろ」ミカゼは友人を見た。「俺、確かめてくるよ」「いいの?」「いいよ、ほら、俺、男だし」 大して筋肉もついていない腕をまくりあげて、友人は笑った。
 ドアの向こうに消えた友人が、しばらくすると顔を出した。「こっちきて」「え?」「こっちきて」「何? 何があったの?」「こっちきて……」友人の頭が消えた。小さく舌打ちすると、ミカゼはアベ一休のCDを停止させて、そちらに向かった。
 テーブルの上に父親と友人がいた。いたというか、あった。父親は両手両足をばらばらにされて、友人の腰から下はなかった。その背中に、まるで人形か何かを操っているかのように手を突っ込んでいる男が居た。PVC白衣に、マスクに、眼鏡。ニコニコ笑っているので、医者のようにも見えた。でも、そうじゃなかった。だって、医者は誰かを治す人間だろうから。どう見ても、そいつは人殺しだった。いや、もっと悪いものだろうことが分かった。
「こんにちは!」そいつは笑顔で挨拶した。友人と父親の口がかくん、と開いて、手の動きに合わせて胸がしぼむと、喉から声が出た。「「ごお゛んにぢわ」」「え……」
「ああ、ごめんなさい……ついやりすぎちゃいましたね! いや本当はもっと穏便なやり方で行こうと思ったんですが、ほら、銃を向けられちゃったんでついね……こう! ほら、人を撃っちゃダメだって普通は教わるでしょ? いやー、これは残念だなあ。こういうファーストコンタクトしたら頭をいじるか殺すかするしかないもの! ドーモ、デスロジストです」
「ドーモ、デスロジストです。で、これが君のお父さんだった人です」/「さて、腹話術が見たい子はいるかな?『こんにちは、私はオイランのハナコです。さっきまで生きていたんですが、ソウカイヤに逆らったせいでこんな風に殺されちゃいました!』」/「君がさっき殺したのが君の友達です、良かったですね、アハハ!」/「触診の結果君の死因は触診でした。はい、君の内臓がこれです」/「い、イヤだ! 私はもっと玩具で楽しみたいだけです! 死にたくない!」

デスロジストは極めつけに下劣なソウカイ・ニンジャであり、ソウカイヤのつまはじき者だ。
彼はヌエ・ニンジャクランのソウル憑依者であるが、ソウル憑依以前から自身の医療技術を利用して、人気のない場所で自分より弱そうな相手を拷問して殺し、死体を玩具にしたりしていた。ソウル憑依によってその邪悪性は更に増し、ボトク・ジツを利用してモータルを苦しめることに血道を注いでいる。
彼は邪悪な小児科医めいた丁寧な言動で、殺した相手の死体を繋ぎ合わせて怪物や玩具を作り、敵を動揺させつつ捨て駒として操ることを好む。その上でモータルを恐怖させて殺し、脳を食べて自身の"演出"がどれほど効果的だったか再確認するのだ。
その快楽殺人鬼的な無軌道殺戮は全くといっていいほどソウカイヤ向きではなく(というより、あらゆるニンジャ組織に向いていない)、当然ながらラオモトの不興を買い、粛正される可能性が高い。
また、デスロジストの外道行為によって「Wasshoi!」判定が起こりやすくなる。
戦闘が始まると、デスロジストはヌエの獣に自分をガードさせ、その状態で出来る限り多くのモータルがいる場所へ逃亡して肉人形やヌエの獣を次々に作成する。

デスロジスト(種別:ニンジャ)
カラテ:5  		体力:6
ニューロン:8		精神力:9
ワザマエ:7 		脚力:5
ジツ:6   		万札:15
近接攻撃ダイス:5	遠隔攻撃ダイス:7	回避ダイス:9
ソウル:ヌエ・ニンジャクラン(☆ボトク・ジツ)

◇装備とサイバネ
PVC白衣と医療メンポ(タクティカルニンジャスーツとパーソナルメンポとして扱う)、
脳味噌入りジャム瓶(トロ粉末)

◇スキルとジツ
(●連続攻撃2)、●連射2、●時間差、●マルチターゲット、●疾駆
☆ボトク・ジツLv3、『肉人形の作成』、『ヌエの獣の作成』、『攻性ボトク・ジツ』
●邪悪なサディスト、●タツジン/ボックスカラテ、『外道の人形劇』、『弱者いたぶり』、
『DKK:10』

『肉人形の作成』:
モータルの肉体に手を差し入れ、腹話術人形めいて操作する。
「種別:モータル」「種別:ニンジャ」のキャラクター1体の死体に隣接した状態で、
【精神力】1と「その他の行動」を消費するとともに「難易度:Normal」のジツ発動判定に成功することで、
その死体が存在したマスに「肉人形」を出現させる。
「肉人形」はデスロジストの命令に沿って行動する。

『ヌエの獣の作成』:
モータルの死体を繋ぎ合わせ、巨大な怪物を作成する。
「種別:モータル」「種別:ニンジャ」のキャラクター3体以上の死体に隣接した状態で、
【精神力】2と「その他の行動」を消費するとともに、
「難易度:Hard」の「ジツ発動判定」に成功することで、
それらの死体が存在したマスのうち1つに「ヌエの獣」を出現させる。
「ヌエの獣」はデスロジストの命令に沿って行動する。

『攻性ボトク・ジツ』:
ボトク・ジツやアナトミ・ジツの効果を攻撃に転用する。
手番開始時に【精神力】2を消費し、「難易度:Hard」の「ジツ発動判定」に成功することで使用可能。
使用した場合手番終了時まで術者の「素手」による攻撃は以下の効果を得る。
・近接攻撃ダイス+2
・「肉体破壊」(出目5・5で『サツバツ!』が発生する)
・「装甲貫通1」
ただし、これらは「戦闘兵器」には効果を発揮しない。

『外道の人形劇』:
デスロジストは自身が操る肉人形を叫ばせたり苦悶の声を上げさせ、敵を精神的に追い込もうとする。
また、自身が負傷したときにも肉人形を泣き叫ばせ、攻撃の手を緩めようとする。
そのため、「カルマ:善」を持つキャラクター(及び、NMが『善良』と考えるPC)が
デスロジスト及び「肉人形」「ヌエの獣」を攻撃する場合難易度が+1される。

『弱者いたぶり』:
デスロジストは弱い者にはどこまでも強い。
このニンジャは「種別:モータル」の敵、
またはいずれの「成長の壁(1)」も越えていないニンジャに対しては攻撃ダイスが2個増加する。

『DKK:10』:
デスロジストはかなり控えめではなく邪悪なため、
彼が味方にいる場合ニンジャスレイヤーが出現する可能性がかなりある。
デスロジストはDKKを10ポイント持っているものとし、
PCのDKKか10のうち高いものを使って「Wasshoi! 判定」を行う。

◇補足
戦闘開始時には「ヌエの獣」1体及び「肉人形」2-3体程度を同時出現させるのが良いだろう。
肉人形(種別:モータル/ジツの産物)
カラテ:3  	体力:3
ニューロン:1	精神力:-
ワザマエ:1 	脚力:2
近接攻撃ダイス:3	遠隔攻撃ダイス:1	回避ダイス:-
◇装備とサイバネ
なし
◇スキルとジツ
●突撃、『精神がない』

『精神がない』:​肉人形はあらゆる「精神力ダメージ」を【体力】へのダメージに変換する。

ヌエの怪物(種別:モータル/ジツの産物)
カラテ:7  	体力:10
ニューロン:2	精神力:-
ワザマエ:2 	脚力:3
近接攻撃ダイス:6	遠隔攻撃ダイス:2	回避ダイス:6(Hard)
◇装備とサイバネ
おぞましい拳(ダメージ2)
◇スキルとジツ
●連続攻撃2、●痛覚遮断、『警護』、『怪物』、『精神がない』

『怪物』:
このキャラクターは「重サイバネ」と同様に回避を行うことが出来る。
『警護』:
デスロジストがヌエの怪物と隣接している場合、彼は本来ならば『回避判定』を行うタイミングで、
代わりに『警護』を宣言できる。
『警護』を宣言した場合、そのヌエの怪物がデスロジストのダメージを肩代わりする。
余剰ダメージが発生した場合、それらのダメージは単純に失われる。
これは1ターン中に何度でも使用できるが、警護対象にできるのはデスロジストのみである。
強制移動を伴うようなダメージを肩代わりした場合、警護対象のマスを起点として強制移動させる。

​『精神がない』:​ヌエの怪物はあらゆる「精神力ダメージ」を【体力】へのダメージに変換する。

ドラウンド/おぞましきINWの液体ゾンビーニンジャ

「しちめんどくせえ仕事だなァおい。それに寒いしよ」
 ヘンチマンのぼやきを聞き流しつつ、バードハンターは違法カキノタネを噛んだ。
「あんたはまだいいだろ、その鉄の手があるんだから。俺はたまらんぜ、全く……報酬が美味しくなきゃこんな地下に潜るにはゴメンだ」
 ヘンチマンはふん、と鼻を鳴らした。
「ま、医者のコネは大事だわな。そこらの闇医者よりはサイバネを入れるのも上手かろうし。にしても寒いし、妙に湿気がある……」
 そこでヘンチマンは言葉を切り、無骨なクロームの義手に置換された右手を握りしめる。ゆっくりと赤く義手が輝き始めた。バードハンターは大型ブーメランを取り出すと投擲する。壁から滲み出してきたそれには、しかしブーメランはほとんど効果が現れず、たださざなみを表面に立てるだけだった。
「クソ、相性が悪い。目標はあいつだったな」
 ブーメランをキャッチしたバードハンターは壁から現れた液状のニンジャを指差した。
「お? 俺に任せちまうか? なら報酬は7対3でどうだ、ヘタレ野郎」
「やかましい。ああいう相手には熱の方が……」
 更に大きな液状のニンジャがいくつも滲み出してきたのを見て、バードハンターとヘンチマンは絶句した。
「おい、目標は1体って話だったよな」
「ああそうだ。分裂するタイプの1体ってェのは話が違うぜ、クソ、舐めやがって」
 内部にいくつかの骸骨が透けて見える、ドロドロとした塊は一斉にアイサツした。
「「「「アバー……ドーモ、ドラウンドです」」」」
「アバー……ドーモ、ドラウンドです」/「ゴボボボ……」/「ゴボボーッ!」

ドラウンドはイモータル・ニンジャ・ワークショップの作り上げた液体ゾンビーニンジャであり、元は高位のスライム・ニンジャクランのソウル憑依者の成れの果てである。
ドラウンドの姿は内部にいくつかの骨が浮かぶ半透明の灰色をした粘液であり、かろうじて表面にメンポの残骸が浮かんでいなければとうていニンジャとは認識できない。
このゾンビーニンジャの特徴は生命を際限なく吸収し、分裂増殖する点にある。餌を与えればどこまでも数を増やしていくため、INWは作ったはいいもののこのニンジャの扱いに苦慮することになった。万が一ツキジ・ダンジョン地下の既に使われていない下水管などにもぐり込めば、ネオサイタマがドラウンドに覆い尽くされる危険性すらある!
ドラウンドはスライム・ニンジャクランのニンジャであるため炎にはかなり弱く、火炎放射器などがあれば容易に追い払うことができる。
ドラウンドは強さの調整が効きやすいニンジャで、周囲に餌となるモータルが多数おり、PC側に適切な攻撃手段がなければ分裂するドラウンドになすすべもなく苦しめられることになる。ドラウンド側のカラテがある程度上昇していれば、攻撃能力もかなりのものとなる。一方で火炎放射器やグレネードなどの武器があれば、簡単に倒すことができる。

ドラウンド(種別:ニンジャ)
カラテ:5  		体力:15/6(※)
ニューロン:2		精神力:2
ワザマエ:3 		脚力:3
ジツ:5   		万札:0
近接攻撃ダイス:5	遠隔攻撃ダイス:3	回避ダイス:5(Hard)
ソウル:☆スライム・ニンジャクラン(スイトン・ジツ)
※分裂直後の値

◇装備とサイバネ
なし
◇スキルとジツ
☆スイトン・ジツLv3、『ゾンビーニンジャ』、『アメナガレ・ジツ』、
『液化常態化』、『捕食吸収』、『分裂』、『炎への恐怖』

『ゾンビーニンジャ』
 ゾンビーニンジャは以下の有利特徴と不利特徴をあわせ持つ。
  ・ゾンビーニンジャの【体力】は、【カラテ】x2、もしくは【カラテ】+10で算出する(反映済)。
  ・ゾンビーニンジャの【脚力】は、本来よりも-1される(反映済)。
  ・ゾンビーニンジャに「カナシバリ・ジツ」などの精神攻撃や、【精神力】/ニューロンへのダメージは作用しない。
  ・ゾンビーニンジャはあらゆる『遠隔攻撃』に対してのみ有効な『ダメージ軽減1』を持つ。
   ただし、爆発や火炎ダメージに対してはこの『ダメージ軽減』を使用できない。
  ・ゾンビーニンジャはあらゆる毒によるダメージや効果を無視する。
  ・ゾンビーニンジャは精神反応速度が遅いため、自身の行うあらゆる『回避判定』の難易度が+1される。
  ・ゾンビーニンジャが『サツバツ!』の出目6を受けた場合、即死効果の代わりに追加ダメージD6を受ける。

『液化常態化』:
ドラウンドは常に「スイトン・ジツLv3」の効果が発動しているものとして、
ダメージ軽減や火炎ダメージ倍加を得る。

『アメナガレ・ジツ』:
「スイトン・ジツ」の効果中(つまりドラウンドの場合常に)、
普通なら通過することができないような水道管や換気口、ドアの隙間などを通り抜けることが可能となる。
加えて、近接攻撃で「出目6・6」を含む攻撃が敵に命中した場合、
「サツバツ!」の代わりに「スライム拘束」を宣言しても良い。
「スライム拘束」を受けた場合、拘束脱出に「その他の行動」が必要になる。

『捕食吸収』:
肉を分解する体液が、触れたものを溶解・吸収する。
ドラウンドの素手の基礎ダメージは2となり、更に素手によって「戦闘兵器」でない敵を殺す度に
自身の【体力】が+3(上限を超えて回復する)され、【カラテ】が+2(上限は18)される。
これによってドラウンドの【カラテ】が7を越えた場合「連続攻撃2」、13を越えた場合「連続攻撃3」を得る。

『分裂』:
肉体を分裂し、増殖する。
手番に「その他の行動」と【体力】6を消費して使用可能。
そうした場合、自身に隣接するコマに【体力】の現在値が6点、【カラテ】は5のドラウンドが出現する。

『炎への恐怖』:
ドラウンドは炎を本能的に恐怖する。
ドラウンドが「火炎ダメージ」を受けた場合、ただダメージが倍加するだけでなく、
「精神ダメージD3」も追加で受ける。

◇補足
ゲーム開始時にPCの強さによって分裂数や【体力】【カラテ】の値を決めておこう。
PCが弱いなら「ヨロシ・デコンダミネーター火炎放射器」などの武器を渡すと良い。

残り5体のNPCについては後編で。

最後に

このプラグインは非営利かつ悪意のない使い方であるなら、好きなように転載/改変をしてもらって良い。ただし、その場合はこの記事へのリンクを示してもらえれば嬉しい(万が一公式のプラグインと混同するようなことがあっては困るので、それを防ぐためだ)。

更新履歴

20/11/17 公開
20/11/18 「肉人形」「ヌエの怪物」に『精神がない』のスキルを追加。​

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