ミスと開業と私~その5(業務あれこれと失敗談)

これから開業しようという方に実際に相談を受けるとしたら、たぶんコーヒーくらいはご馳走してもらうと思うので、有料にしようかとも思ったのですが、むしろこれこそ共有してもらいたいところでもあるので最後まで無料です。

・受けた業務(民事法務系)

今のところ、受けた依頼はまちまちです。就業規則作成依頼を除き、依頼が来たら全て受けています。情報収集すると、業務特化することを勧めておられる先輩が多く、自分でも特化したいという気持ちはあるのですが、なかなか絞り切れません。

内容証明の起案業務は1年目にしてはそこそこ受任しました。内容証明は証拠力以外に特段の効力があるわけではない書面ですが、訴訟になった際には、「有利不利関係なく」証拠として採用されるということは忘れてはならないですね。

内容証明は依頼人の名前で出していただいています。代理人を名乗るのは業法違反だと思いますが、作成代理人という表記も使っていません。文書作成者として署名押印をする形です。

行政書士という資格で督促等の効果があるかどうかという点を考えた場合、効果のある相手であれば代理人などと記載しなくてもどのみち内容証明が届いた時点で効果があるでしょう。行政書士が書いたものなら訴訟までにはならないだろうと高をくくられることはあるかもしれないとは思いますが。

経験上、弁護士が出てくるまではほっとけという人も少なくないように思っています。経営者とかだとそれくらいの知識はある人は結構います。それなら法令通りに本人名で出しておくべきですね。

離婚協議書公正証書、遺産分割協議書、法定相続情報一覧図の作成業務もやりました。法定相続情報一覧図は、相続業務を受ける場合にはとても役立ちます。銀行の窓口でははっきり「法定相続情報一覧図があると本当に助かります」と言われましたが、おそらく司法書士や税理士の先生に登記、申告をお願いするときも同じなんじゃないでしょうか。戸籍の確認というのはそれくらい面倒だと思います。

・受けた業務(許認可と法人系)

許認可系では古物商、レンタカー事業、清掃業くらいでしょうか。建設業許可とかやりたいんですが、ちょっと集客には苦労しています。というよりも、建設業はそろそろあきらめて他の業務を狙うべきかなと思わなくもありません。

補助金、融資関連は現在はコロナ支援を中心にやっています。これは前回も書いたように顧問契約をしていただく以上知悉しておく必要があると思ってかなり一生懸命研究しましたし、現在もしています。企業にとって資金調達は生命線ですから、今後もやっていきたいと思っています。ものづくり補助金とか手掛けたいですね。

持続化給付金はかなり多く手掛けています。簡単なように見えますし実際に行政書士なら難しくはないはずですが、自力でやった人に不備が頻発していることは知っておいてもいいのではないかと思います。不備のパターンについて共有することもあるかもしれないと思ってまとめてみたのですが、ざっと数えても十個以上の不備パターンがありました。

たぶん、PC関連に疎い人というのは想像以上に多いのでしょうし、会計用語に疎い人も想像以上に多いのだろうと思います。むしろそういった人こそ困っているわけで、士業の端くれとしては何とかお役に立ちたいと思ってやっています。

企業の資金サポートを考えるとなると、社労士資格が欲しくなるのですが、昨今のコロナ騒動を見るにつけ、助成金業務にはちょっと手を出しにくいなと日和ってしまいました。社労士の先生に直接話を聞いてみたいのですが、助成金申請はスポットで受けられるものではないように思います。労災関連なども見ていると大変そうです。

また、現実問題として、新人にとって行政書士業務の勉強時間を確保するのは必須ですので、他資格受験の勉強時間はなかなか取れないというのが実感です。開業してからダブルライセンスの取得を目指される方は本当に尊敬しますね。

電子申請業務もやっています。電子申請は申請そのものよりも、セットアップに苦労しました。電子関係で私が汗と涙を流しながら得た知見を公開しておきますと、電子入札で使うブラウザはIEのみです。いんたーねっとえくすぷろーらー。まじか。あと文字変換にATOKを使っている方は、Javaのインストールには要注意。

自賠責の請求書類も一度だけ作成しましたが、これはメイン業務にはならないかなという気はします。本当は成功報酬制でやりたいのですが、書類作成に成功失敗という概念がなじまない上に紛争性を帯びやすいというのもネックです。

農地転用は1回相談を受けましたが、ヒアリングの時点で許可は難しそうに思えたので特化している大先輩に相談したところ、そのケースはまず無理だということで受任には至りませんでした。在留資格も残念ながら相談までしか来ていません。ピンクカードの出番が欲しい。でもあれもう少しかっこいい登録証になりませんかね。昔のレンタルビデオの会員証みたい。

法人関連だと、株主総会の議事録も作成しましたし、契約書の作成はかなりやっています。そもそも自分が受任する際の、業務委託契約書などの行政書士業務に必要な契約書も、受けた業務に合わせて作成しますよね。当たり前ですが、業務によって文言はかなり異なってきます。例えば、相続関連業務と古物商許可申請業務を受任したとして、業務委託の内容が同じはずがありません。

業務委託契約書には免責条項などもきちんと入れたつもりですが、これも今後必要に応じてアップデートする必要があると思っています。預かり証(依頼人から何を預かったかというのを残しておくのは実務上極めて大事です)や委任状なども同様ですね。手間もかかりますしプレッシャーもありますが、こういうのを厭うようでは行政書士は務まらないと言い聞かせて、暇さえあれば自分の作成した契約書などに手を入れています。

意外と(でもないか)大事なのは反社会的勢力の排除条項、誓約書です。これはうっかりするとバッジが飛びますので、なおざりにしないようにしないといけないでしょう。

・落とし穴の多い自動車関連業務

自動車関連は移転登録や車庫証明などけっこうな数をこなしましたし、自動車の相続もやりました。(恥ずかしながら、自動車専用の遺産分割協議書があることを開業してから知りました)

自動車関連は業者からの依頼も多いですが、商慣習が強いのか契約関連は比較的緩いような気がします。(必要書類一式送りますねと言われて届いたものを見たら委任状も入っていなかったことがあります)

自動車関連で気を付けないといけないのが、費用の立替えです。支部の先輩に立替えは絶対にやめた方がいいと忠告されました。自動車関連は意外と諸費用がかかります。車庫証明、登録手数料、ナンバープレート代に加えて忘れがちなのが、自動車取得税(今は環境性能割という名称になっています)です。

行政書士が関わる登録は主として中古車の売買時なので、課税される基準額の50万円に満たないことがほとんどですが、ベンツやBMWなどの外車の場合は残価があることがしばしばあります。

たいていは中古車販売業者で計算または照会してくるのですが、稀にいい加減な業者がいてしれっとそのまま書類を送り付けてきます。で、申請時に納税が必要ということが判明して、業者にその旨連絡すると「先生、すぐ送金しますから立て替えて手続きだけ済ませて送ってもらえませんか。急ぎなんでお願いします」とか言ってくるわけです。で、送金してこないと。

なので、年式が新しい車や外国車の登録依頼があって残価の有無がはっきりしない場合は、前もって都道府県税事務所に照会するべきです。照会用紙(北海道はExcelです)をダウンロードしてナンバーやなどを記入してFAXすると、翌日には回答が来ます。

もし自動車取得税の納税が必要な場合には、その入金が確認できるまでは申請しないか、申請だけ終わらせて自動車取得税の申告書を同封して返送するということになります。申告書に必要事項を記入してあげるかどうかは微妙なところですが、悪意がない場合もありますので、私は書けるところは書いて返送しています。サービスですね。

ちなみに、自動車関連は書類の枚数も多いですし、事務所名や行政書士名を記入する箇所もたくさんありますので、PDFをダウンロードしたらあらかじめ書き込みソフトでそこを記載したものを保存しておいて、それを印刷して使うのがお勧めです。忙しいとゴム印押すのも面倒なので。

広い北海道では車庫証明はかなり遠方まで行くこともある(往復100km超えはしょっちゅうです)のですが、車の運転が好きなのでこれは大歓迎です。先輩行政書士に、どこどこの〇〇って店がうまいよとか聞いて食べ歩きがてら行ったりもします。

となるとやはり出張封印業務も覚えようかなと思ったりするのですが、賠償責任保険を別途で入らないといけないというのがちょっと悩ましいところです。何件か受任できれば問題ないはずなのですが。

賠償責任保険は1年目は一番安いDプランにしていましたが、2年目になってCにアップグレードする予定です。責任賠償保険にはABCDの4プランがありますが、DとCの間は保険料も補償額も大きな隔たりがある一方で、CとBにはそれほど差がないのでその辺を考慮して選べばいいと思います。入らない、という選択はちょっとないかなという気はしますが。補助者の分も加入しています。業務はまずしないのですが。

こうしてみると、業務を絞るのは本当に難しいなと思わされます。実はこの他に、HACCPやドローン関連も一通り勉強して準備しているのですが、HACCP導入期限間近にこのコロナ騒ぎになってしまって宙に浮いています。これは飲食業時代の知識が生かせそうなので、頑張りたいのですが。

・教えてちゃんになる前に

業務において、適法か否かを判断しなければいけない局面が出てくると思います。「先生、〇〇をやる場合は許可を取らないといけないのですか?」などという相談ですね。分からない時に安易に回答してはならないというのは新人研修でも教わりましたが、何でもかんでも先輩に聞いてばかりなのはどうかと思っています。

なので、時間をいただいて自力で調べる際に覚えておきたいのが「ノーアクションレター」です。

法令適用事前確認手続、という名前ですが、民間企業等国民が、その事業活動に関係する具体的行為が特定の法令の規定の適用対象となるかどうか、あらかじめ当該規定を所管する行政機関に確認し、その行政機関が回答を行うとともに、当該回答を公表する手続、ということになっています。

まだ使ったことはないのですが、印紙税を税務署に事前確認するのと同じような制度ということになりますね。こういうのも必要に応じて使っていくべきかなと思っています。

別の先生がとある場所で「何も知らなくても業務がこなせるようなマニュアルを支部で作成すべきだ」みたいなことを言っていてたまげたのですが、さすがにその理屈には賛同できません。2の6登録の先生に偏見を持ってしまいそうになりました。

・コストの話

御託ばかり並べていても仕方がないので、ここからはお金の話と失敗談。開業前後の方にとってはこれが一番役に立つかもしれませんね。

まず事務所の運営コスト。

事務所は自宅兼なので、家賃は家事按分で計上しています。3万円。固定電話とプロバイダの料金で1万円。携帯電話0.5万円。複合機のリース費用と印刷料金が1.5万円。水光熱費も按分計上で1万円。北海道は冬場の暖房費がかなりかかります。移動はほぼ車なので、車両費が月に均すと2万円くらいかかります。

HP関連が0.3万円。商工会議所の会費、商店街の会費を合わせると月に0.4万円。それ以外の交際費は支部の集まりやお中元お歳暮も含めて、月平均にすると1万円。飲みに出たりはしないので、そういう交際費はあまりかかりません。宣伝費も月に均すと1万円くらいは行きますね。

会計ソフトやウィルスソフトの月額料金が合計0.4万円。こまごました文房具は紙代も含めて月に均すと0.2万円。これに行政書士会の会費が0.6万円かかります。実務書などの書籍費が1万円。

合計すると月に約14万円運営コストがかかっていることになります。年間200万円くらいですね。事務所の電話は終日携帯に転送しているので、その分通話料金がかかりますが、私の場合、転送を設定したり解除したりするのを忘れるのはほぼ確実なので、外出時に事務所にかかってきた電話を取れないリスクをなくせるなら安いものだと思ってそうしています。

もっとコストがかかる先生もかけていない先生もおられると思いますが、私としては、これ以上削減するのは難しいかなというところではあります。なので、これ以上を稼がないとご飯は食べられません。倍くらい売上げないと生活費までは出ないということになります。

4月の半ばから5月末まで売上がかなり落ちたのですが、コロナのせいなのか自分の努力不足なのかよくわかりません。持続化給付金申請はかなりやったのですが、ほとんど売上にはならないので仕方ないのかな。でもこれ無料とか超安価でやったら後で税務署に「これは本来の報酬分を売上に計上し、同額を宣伝費として計上するべきですね」とか言われたりするんだろうか。

・嗚呼、失敗談

ここからは失敗談。まぁちょっと引くくらい失敗しています。

① 認め印を忘れる→これは前述しました。車庫証明を受領する際に認め印が必要ですが、それを忘れて取りに帰ったことがあります。認め印は1本である必要が皆無ですので、かばんや車に常備しておくべきだと痛感しました。私の場合は百均に売っているような姓ではないので、なおさらでした。

② 申請書の住所が住民票と違う→住民票には建物の名前が記載されていないことを見落として申請書に建物名を記載したことがあります。これは委任状があれば職印で訂正できることもありますが、出来ない場合はやり直しです。住民票を見て記入することを習慣化しないといけませんね。

③ 押印が欠落している→車庫証明の申請用紙は4枚複写になっているのですが、4枚目に押印がないのを見落として依頼者の所にもらい直しに行きました。たまたまご在宅で救われましたが不在だと大変です。恥ずかしいにもほどがあります。押印箇所はとにかく徹底的に確認するべきです。

④ 有害的記載事項を記載する→複写式の紙の上でうっかり別の書類を記入して、筆圧で複写に全く関係ない字句が写ってしまって書き直したことがあります。

⑤ 押印が印鑑証明と異なる→その場での印影確認を忘れました。これも依頼者の所へもらい直しに行くことになります。

⑥ 異体字を見落とす→京都に深草秡川町というところがあります。登記簿の住所表示は「秡川」ですが、郵便表記は異体字の「祓川」になっています。これを見落としました。当然書き直しです。これに限らず斎藤さんや渡辺さんなどのお名前には神経を使う必要があります。てか多すぎるでしょあのお名前は。

⑦ 住民票等の有効期限を見落とす→印鑑証明、住民票などは発行後3ヶ月以内の物という指定がしばしばあります。古物商の法人許可の場合は、役員全員の身分証明書と定款の写しが必要ですが、これらの作成日も3ヶ月以内でした。気づいたのがたまたまってのが情けなかったです。フローの中で気づくようにしないといけません。

ちなみに定款を提出する場合、「現行定款と相違ないことを証明する 何月何日 代表者氏名 代表印」という現行証明も綴じ込む必要があります。委任者の免許証などのコピーを付ける際にも、本人の名前で「これは自分の免許証の原本と相違ありません」という原本証明の記載と署名捺印が必要な場合があります。

⑧ 住民票の本籍地記載を要請し忘れる→住民票を添付する場合には本籍地の記載が必要なことがあります。依頼人に住民票の取得を要請する場合には「本籍地を必ず記載してもらってください」と指定しておかないと本籍地未記載の物が来たりします。古物商の許可申請や法定相続情報一覧図に住所を記載する場合などでは本籍地が必要でした。

というか、本籍地が記載してあるとダメというのは聞いたことがないので、基本的に本籍地を記載してもらうようにしておくべきなのかと思います。記載したからと言って追加料金がかかるものでもありませんので。逆にマイナンバーは記載の無いものという指定があることが多いように思います。

⑨ 車検証記載の住所と現住所が異なるのに住民票等がないことに気づかなかった→この場合、住民票か印鑑証明が必要です。場合によっては公共料金の領収書や郵便物などでも行けることもありますが、これは所轄に問い合わせてみるしかないように思います。車庫証明の場合は住民票等はコピーでも OK です。

この失敗は実際の業務ではなく、陸運のお手伝い前に研修をしている時の話で、わざと欠落している申請書類のチェックをして、手順を覚えているか確認してもらった時の失敗です。勉強になりましたね。

➉ 書類の順番が作法と違う→これもその時の研修の話です。自動車の名義変更では提出書類の並べ方に陸運的作法が有ります。こうすると窓口が確認しやすいというだけなので、これを忘れたからと言って特に何も起きませんが、先輩に「行政書士なんだからちゃんと並べるべきだ」と注意されました。

参考までに、十勝の陸運的作法による申請書類の並べ方(移転登録の場合)は以下(上が表に来て、不要なものは飛ばす)です。

OCRシート
手数料納付書
車検証
譲渡証明書
旧所有者の印鑑証明書
旧所有者の住民票等
旧所有者の委任状
新所有者の印鑑証明書
新所有者の委任状
新使用者の印鑑証明書または住民票
新使用者の委任状
車庫証明書(1枚目のみ、ステッカーなどは外す)

確かにプロとしてかかわる以上、役所の窓口にも「やっぱりプロが入ると楽だよね」と思わせるべきですし、それがまわりまわって行政書士のマーケット拡大につながります。

⑪ 返信用の封筒の切手が額面不足→これも前述しました。84 円切手を貼って出したら 10 円足りないことがありました。普通郵便の重さは 25g までが 84 円で、それを超えると 90 円なのですが、わりとあっさり超えてしまいます。コピー用紙4枚くらいでギリギリでしょうか。消費増税の影響で郵便料金の改定があったのは記憶に新しいですが、うっかり古い切手で出すと当然不足します。あ、レターパックも値上がりしてますね。

そもそもの話、戸籍の取得などはどれくらいの重さになるのかわからないので、「不足分受取人払」のゴム印を作って押すようにしました。

⑫ 書類を紛失しかける→古物商の申請をすると交付は約 40 日後ですが、受取証を出してくれます。許可が下りたという連絡をもらい、取りに行こうとしたら受取証が見当たりませんでした。嫌な汗がどばーっと出ました。必死で探したら机と壁の隙間に落ちていましたが、書類が大量に発生する仕事なので整理していないと探すのが大変です。探している間に 17 時になってしまい、受領が 1 日延びました。レターケースは本当に大事。

⑬ 領収書がない→これは確定申告の時に、買ったはずの備品の領収書がないことに気付きました。領収書をまめに整理していないと申告の時に大変です。青色申告なので赤字を繰り越せるのですが、領収書がないものを計上して後になって税務署に突っ込まれて答えられない、みたいなのは嫌なので計上しませんでした。繰り越せる赤字額が少なくなってしまいました。

ちなみに会計ソフトは「freee」を使っています。「弥生会計」と迷いましたがどちらが良いかは分かりません。

⑭ 製本を失敗する→これは単に私が不器用なだけですが、なかなかうまくできません。よじれたりして何度も印刷し直したことがあります。仕方がないので配偶者を補助者にしてやらせることで解決しましたが、これは解決方法としては強引すぎますね。

余談ですが、行政書士には守秘義務がありますので、自分の業務については配偶者といえども安易に話せません。なので、配偶者は補助者登録しておくべきだと思って登録しました。費用も2,000円くらいです。

なぜかわかりませんが、私はあまり配偶者に信用がないので、どんな業務をやっているか伏せたままだと不信感が増幅しかねないと思い、案件を共有できるようにしています。話の流れでうっかりしゃべってしまうということは避けなければいけません。というより、製本してもらっている時に中身は見えますし、経理だって手伝ってもらってますから当然かなとも思います。

信用がない原因について思い当たる節は全くありません。本当です。どうしてなんだろう。

⑮ 古い用語を使って書面を作成する→なまじ司法試験の勉強をしていたために、覚えている用語が古いままになっていることがありました。離婚協議書公正証書の作成業務を受任した時、子供と面会する「面会交流権」の規定を入れましたが、昔はこの権利を「面接交流権」と呼んでいました。平成 23 年の民法改正で「面会及びその他の交流に関する規定」が設けられましたので、いまどき面接交流権と呼ぶ人はそれ以前からやっておられる先生ではないかと思います。もちろんそれでも通じますが。

時効の中断や停止も民法改正に伴って呼び方が「更新」「完成の猶予」に変わっていますね。これも通じないということはないはずですが、勉強不足で新しい法律についていけていないのでは、みたいに思われないようにしないといけないかもしれません。というか、時効はかなり改正点が多いので、しっかり勉強しておかないといけないところですよね。依頼人の方が詳しいようでは話になりません。

⑯ 契印を忘れる→書類の契印は定款などの提出の際には必要になります。依頼者に送ってもらった定款に契印が無くて「あちゃー言うの忘れた...」と思いましたが、請け負った業務における契印の必要性について法律上の根拠が曖昧だったので、依頼者には契印のあるものを送り直してもらうようにお願いはしておいてから、指摘されないかもしれないということでしれっと提出してみました。

しっかり指摘されたんですが、ダメもとで、契印がなくても申請は受理されるのではないかと申し立てたところ、申請は受理され、後日無事に許可もおりました。ただ、非公式な形で「センセイ、許可は出たんですが、交付時にできれば契印のあるものに...」と依頼されたので、許可証の受領時に契印のあるものと差し替えました。依頼者に定款の写しをもらうときに、こちらから言わなくても契印が押してあることはまずないでしょうね。

⑰ 捨て印を忘れる→作成した書類が完璧であれば特に問題はないのでしょうが、万が一はやはりあります。推敲を繰り返していると、「てにをは」の消し忘れ等はけっこう起こります。私にとって、誤字脱字を完璧になくすというのはそれくらい難しいことなので、捨て印がもらえる場合はもらっておこうと思っています。

⑱ 請求すべきものを請求書に記載し忘れる→自動車のナンバープレートは北海道の場合1,740円かかりますが、その代金を請求書に記載し忘れました。忘れたからと言って再度請求するのがやはり恥ずかしく、泣く泣く自己負担しました。自動車の移転登録の報酬はもともとあまり高くしていないので、経費も含めた収支を考えると子供のお駄賃くらいになってしまい、けっこう脱力感がありました。

・失敗防止対策

誤字脱字等をなくすためにはやっぱり紙ベースでの確認が有効なのかなという印象は持っています。それから、完成したと思ってから1日以上置いてから確認すると意外と誤字脱字は見つかります。本当はスタバとかで颯爽と書類の確認などをしてみたかったりするのですが、守秘義務のことを考えて基本的に書類は外には持ち出しません。うっかり置き忘れたらこれは死ねます。

書類はバッチリって思っていそいそと提出に向かうと、今度は提出日を記入し忘れて窓口で記入したり、財布を忘れたりします。財布に行政書士証票が入っているので場合によってはUターンです。小学生の健康保険証じゃあるまいし、コピーをあちこちに入れておいたら何とかなるというものでもなさそうなので、本当に気を付けたい。でも病気かもしれない。

書いていて嫌になりますが、たぶんこういうそそっかしさはそう簡単には直らないので、自分はこういう傾向があるということを念頭に置きながら業務に当たるしかないなと思っています。ヒューマンエラーは0にはならない以上、致命傷を受けないように。

依頼者に何かの書類、戸籍類等の提出を頼む際は、極力丁寧に、分かりやすく指示しておかなければいけません。認め印でいいです、とか簡単に言うとシャチハタが押されます。認め印=浸透印と思っている人はけっこういるのです。

印鑑証明などの期限の指示は絶対です。指示せずに期限切れのものや不適切なものが出てきたらそれはこっちが悪いと思うべきです。押印箇所を指示する付箋(下にリンクを張りましたがアフィリエイトじゃないです)はけっこう重宝しますよ。鉛筆で丸囲みするよりおしゃれ。

本籍地、世帯主、マイナンバーなどの記載の要不要の指示が大変なら、申請書は作っておいて、これに印鑑押して役所に行ってくれればいいですから、までやった方がいいと思います。

・売上と展望

私は業務を絞り切れておらず、どうしても効率が悪くなってしまいますが、いろいろやれて楽しいのも事実です。これだけいろいろやって売上が300万円に満たないのかと思われるでしょうが、やはり単価が低い業務が多いのが原因です。単価の高い業務を増やしたいと思いますが、具体的な戦略はこれからです。

でも、やりがいはあります。目標としては専業行政書士として食えています、と言えるくらいの売上を安定して上げられるようになること。税制などを考えると500~600万円くらいかな。それ以上になってくると本当の意味での補助者が必要になってくると思いますし、そうなるとその人件費を捻出する必要が出てきます。600~800万円くらいの売上で補助者使っていたら収入は減少しますよね。

業務を特化するのであれば、リスクも考えないといけないでしょう。入管関連専門に特化していたら今は大変だったかもしれません。チャイナリスクなどという言葉もありますが、偏重にはそれなりのリスクはあります。

あまり事務所を拡大しようという野心はないのですが、いずれ行政書士業界は大規模法人が増えていくのではないかという気はしています。行政書士業務の幅の広さを考えると、個人で専門特化するだけでは足りず、専門特化した何人かでプロ集団としてやっていく方が営業しやすくなるのではないかなと思っています。

業界のトップランナーの先生を見ていると、業務を属人的にしないということに注力されているようですが、おそらく地方都市では属人的な依頼の方が多く来るのではないかと思います。よくわからんけどあんた任せるからうまいことやってくれよ、ということですね。

自分が依頼を取ってきて、法人として業務を完了させていくというやり方でいけるなら属人的である必要はないでしょうが、それまではそういう土地柄だということは意識していく必要はあるように思います。

そういう意味では、親しくしていただいている先生と法人設立するというのも考えたいと思ってはいます。と言っても、もう少し自分が業務に通じて売上を上げていけないと誰も組んでくれないですから、そこは頑張らないといけないです。

まぁこういうことはおいおい考えます。先送りは得意です。食えないと言われる行政書士業界ですが、大儲けはできなくても食っていくことはできるはずだと信じてやっています。立ち位置の幅が広すぎるので、統計とか平均とかあんまり意味がないように思っています。

というのは、他士業との兼業の方ってたぶん行政書士業務はあまりやっていないと思いますし、公務員の定年後に登録して開業される方も年金の足しになれば、みたいな人も多いのではないかと思います。そういう人を混ぜて取る統計はあてになるのかなって思いますよね。

いずれにしても、自分が目指すべきところは人によって様々かと思います。惑わされずに頑張っていきたいですね。

長々と(5回で25,000字を超えました。原稿用紙60枚以上ですね。)書いてきましたが、多少なりとも参考になれば幸いです。いつか皆さんと情報交換できればいいなと思っています。読んでくださってありがとうございました。

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