ミスと開業と私~その2(試験直後から開業まで)

なぜ俺はあんな無駄な時間を

行政書士試験は11月の第二日曜日に試験があり、発表は1月末。択一の結果だけで合格が確定しなかったので、何となく過ごしてしまいました。合格を前提にして準備を始めるなり、不合格を前提にして決断(受験勉強を再開/資格取得を断念)するなりしなければいけませんでした。これは大きな反省として残っています。

前回も書きましたが、結論をだらだらと先送りするという悪癖がここにも如実に出ていますね。合格しているだろうという手ごたえがあったのだから、それを踏まえた行動をとらなければいけませんでした。

先生、実務がしたいです

行政書士になったら、少なくとも遺言などの終活や車庫証明などの自動車関係の業務はするつもりだったのですから、その勉強はさっさと始めておくべきで、開業前にできる行政書士業務、すなわち本人申請でやってもできるものがいくつかありますから、それをやっておけばよかったです。

その一つが自分の戸籍を遡ることです。言ってみれば家系図作成です。戸籍謄本を郵送で取得する場合にかかる費用や時間はこれでわかりますし、祖父母の代まで遡ればかなり古い戸籍も目にすることになります。崩し字や旧仮名遣いで書かれた戸籍を読むことにも慣れておくべきでした。

ついでに自筆証書遺言も作成してみれば良かったなと思います。もちろんこれは後からでもできますが、一度やってみる、という体験は開業前から持てるなら持つ方がいいはずです。

これを怠った結果、開業後、終活関連の業務を受任してから大いに苦労することになりました。戸籍の文字が判読できなかったのです。先輩行政書士の先生に教えてもらって事なきを得ましたが、恥ずかしい思いはしました。

もう一つは古物商の許可を取得してみれば良かったなと思っています。

建設業許可などとは異なり、古物商は一度取得すれば更新がありません。費用も印紙代19,000円と戸籍取得の手数料でできます。必要書類を集める、申請書類を記入する、といった作業に馴染んでおけば良かったなと思います。私はあまり字が綺麗ではないので行政書士の登録準備を始めてからPDFの書き込みソフトを購入したのですが、こういうソフトもどうせいつか買うことになるのだからもっと前に買ってみて使いこなしておくべきでした。

いずれにしても、許認可というのは規制されている業務についてその規制を取り払うということですが、規制されている理由が何で、どうすればその規制を免れるか、ということをフローにして考えるには古物商許可はうってつけの許可だと思います。

また、買ってみて初めて知りましたが、加除式書籍の価格の高さを考えると、本の転売などはこの先やる機会もあるかもしれません。遺品整理士という民間資格もありますが、終活業務をやっていくなら古物商も使える資格のはずです。

そういえば、行政書士そのものの登録の申請作業も比較的似たものがありますが、これは事務所の見取り図作成も含めて、「許認可」というものについて経験させようという意図があるのかもしれませんね。

少なくとも、行政書士業務の実務について私はほとんど何も知らなかったので、その実務を学ぶ必要があったし、それは早い方が良かったと思います。

実は、合格確定後にそこそこのお金を払って予備校の実務講座を受講したのですが、これは正直そこまで必要ではなかったかなと思います。無駄、という意味ではなく、費用対効果を考えれば、ということですが。座学<体験、というか、条文と手引きを読み込んで苦しみながら許可を取得する経験を私としては推したいですね。どうしても分からなければ、役所(例えば警察の生活安全課)の窓口に行けばいいのですし。

それ以外にも本人申請でチャレンジできる業務は結構あると思います。車検証の住所変更などをしていない人も意外と多いです。行政書士登録のためには単位会の定める事務所要件を満たした事務所を開設する必要がありますが、それまでの自宅が事務所としては適切ではなく、引っ越す人もいるでしょう。そんな時に自動車の変更登録をやってみるというのもありです。当然そこには車庫証明の取得も入ってくるでしょうから、いい練習になると思います。

自分でやれば費用は5,000円以下でできます。ナンバーが変更になると7,000円近くかかるでしょうか。それにしたって実務講座よりは安いです。私の場合は車検が近かったので、その時についでにやろうと思って延ばしてしまいました。

もちろんそれは面倒かもしれません。でも要するに、そういう「自分でやると面倒な作業」を我々行政書士は効率的に代理代行していくのが飯の種だということを理解するにはいい機会ではないでしょうか。

おそらくこんなことをやっているうちに結果発表までの2ヶ月はすぐ経過したでしょう。古物商の許可は標準処理期間が40日ですから、普通にやっても2ヶ月近くかかります。戸籍の取得も郵送でやれば一週間くらいはかかるでしょう。並行してやっていくなら結構忙しかったはずです。郵便小為替の買い方なども含めて知らなかったことはたくさんありました。

車庫証明だって一筋縄ではいきません。賃貸物件の人が車庫証明を取得する場合、「保管場所使用承諾書」というものを貸主からもらう必要があることはご存じでしょう。けれど、賃貸契約書に駐車場について記載がある場合、契約書で代用できることもあります。承諾書を書いてもらうとお金を取られるという時はそれでやってみるといいのではないでしょうか。そういったことも知識としてはわりと役立ちます。

また、北海道の場合は自動車登録関係の委任状には行政書士会専用の書式があって、それを用いると職印での補正が可能なので重宝します。その他委任状などの様式が統一されていないということも知識としてはあってもいいのではと思ったりもします。当然これは開業前には使えませんが。

事務所が決まらない

それから、私はそれまでに居住していた部屋の間取りが事務所としては不適切でした(居住スペースを通らずに行ける個室がなかった)ので、新たに探さざるを得なかったのですが、手ごろな物件を探すのに2ヶ月かかりました。合格が確定していないうちから賃貸物件を探すのはさすがにリスクがあるので、これはやむを得なかったと思いますが、そういうこともあり得るということは知っておいていただきたいところです。

事務所探しにはかなり苦労したのですが、幸運にも良い物件を見つけられました。4LDK三階建てで、1Fは事務室として作られた1部屋だけで、2,3Fが居住スペース。駐車場3台分。これで65K。いくら田舎でも安い部類ですが。

不動産探しはタイミングが大事ですが東京は事務所を持つには家賃が高すぎますね。自宅と事務所で毎月10万円では足りないでしょうから、年間の支出が50万円以上変わってくるんじゃないかと思います。とはいえ、田舎では必須の、自動車を持つ必要がありませんからその点は考慮に入れるべきでしょう。

ただ、性別や年齢なども影響してくるところなので、この辺は何とも言い難いかなと思ったりはします。自分が女性で単独開業だったら自宅を事務所にはしないと思いますし、打ち合わせは極力オープンスペースでするつもりで事務所を作ると思います。

賃貸物件を借りる際には賃貸借契約書を熟読しました。行政書士をやっていて、契約書に読み抜けがあり退去時に損失を被るなんてことがあったら恥ずかしいなという意識はやっぱりありました。

それから行政書士登録の書類を作成し始めたのですが、お分かりの通り、明らかに遅いです。物件を探すのと並行して作成できる書類は作成しておくべきでしたし、PCなどもさっさと揃えておくべきでした。

開業前に練るべきこと、そして参考にすべきツイッタラー

同時に、行政書士事務所としての営業戦略を練らなければなりませんでした。何の業務を収益の柱とし、どういうスタイルで集客をしていくか。地縁がないことはかなりのハンデですが、それを補うだけの戦略を練らなければなりません。インターネットなどで情報収集をしてみても、皆さん口をそろえて経営戦略の重要性を説いていましたから、これをせずに開業するということは避けなければなりません。

地方で開業するということは、大都市部とは違う戦略は必要でしょう。ではどうするか。

この情報取集にはTwitterを使うべきでした。面識もなくリプライのやり取りをしたこともありませんが、ツイートを拝見していてこの人は本当に役立つ情報を発信していると感じた何名かの先輩のアカウントを紹介しておきます。

もちろんステマでも何でもありません。むしろ直接存じ上げないのに勝手に紹介してご迷惑でないか心配になります。ネットに公開されているものとは言え、リンクを張るのも軽率にやらない方がいいのは間違いありませんので。

鈴木先生はブログの内容が非常に充実していて参考になります。心構えや戦略の立て方など、開業前に一読の価値はあります。ホント開業前に一通り読んでおくべきでした。

川人先生は風営法と運送業のスペシャリストですので、そちらをやられる方はHPをぜひ読んでおくべき。業務内容で検索するとHPが常に引っかかってくるので、多くの検索アルゴリズムの変更を通り抜けているコンテンツなのだと思います。

上山先生はWEBの専門家でもある行政書士ですが、HP制作の苦手な方ならいっそこういう行政書士のこともよく分かっている方に依頼してしまうのもいいんじゃないでしょうか。自分で一からやるのは何の分野でもとても時間を食います。時間を買う、売るのが行政書士の仕事でもありますよね。

小川先生は行政書士が受任する離婚関連や遺言相続に関して(要するに予防法務的観点です)非常に勉強になります。函館は同じ北海道ですが7時間くらいかかるのが残念。

冨楽先生も開業前後の新人向けのコンテンツが非常に充実しています。予備校の実務講座より冨楽先生のノウハウを購入すれば良かった。いや、買ってないんですが、ツイートを見ていればそれくらいの当たりはつきます。普段のツイートからしてとても参考になりますから。

どの先生もHPやブログのコンテンツが非常に充実しています。逆に言えば、これくらい充実していれば私のようなひよこにもリーチしてくるわけですね。他にもたくさんいると思いますが、全てを網羅できるわけではないので、自分のリテラシーを使って探すことも必要でしょう。先達はあらまほしきかな、です。

集客と備品の購入については次回以降に。

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