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「成功方程式より”生きる力”」 はじめに(2/6)

これからの時代を生きていく子ども達に「成功方程式はあるのか?」

この解を求める際に考えなくてはいけないことは「現代社会は地球レベルで解決しないとならない課題が山積みである」ということだと思います。「ひと握りの優秀な人が解決できるほど課題は小さなものではなくなった」と言い換えられるでしょう。そのような環境において求められるのは、かつての成功方程式である「偏差値競争に勝つこと」ではありません。21世紀は複数の人が力を合わせて課題を解決しなければならない時代です。しかも「答えが一つ」という単純な課題ばかりではありません

冒頭の問いに対する私なりの答えです。
「短期間だけ通用する成功方程式は存在しても、通用する期間はどんどん短くなる。つまり、21世紀という長期間に渡って通用する成功方程式は存在しない。その代わりに「”3つの力”を組み合わせ 様々な課題に対して その時々の最適解を創り出せる総合力が生きること(成功)に繋がる。」

そして”3つの力”はこちらです。
▽どんな環境に置かれても最後まで諦めない力(グリット)
▽他の人と喜びや苦しみを共有する力(共感力)
▽仲間を作って難題を解決する力(共走力・共創力) 

このような力を子どもたちに身につけて欲しいと拠り所にしたのが「自然体験」でした。自然体験が上記3つの力をどのように育ててくれるのかについては本編で丁寧に書いていきますが、「成功方程式よりも生きる力」が大切であるということを、昆虫を例にとって紹介します。

生物には環境に応じた「生存戦略(成功方程式)」があります。ミドリシジミという蝶はハンノキ(という木)に卵を産み、孵化した幼虫は葉を食べて育ちます。その卵の産み方には大きく2つのパターンがあります。大きなハンノキがたくさんあるような環境では、母(蝶)は細い枝に卵を1〜数個ずつ産む他にも、幹にまとめて卵を産むことがあります。幼虫が食べる葉は豊富にあるし、天敵に襲われても群れでいれば一部の幼虫が生き残ることができます(最新の知見が変わっていたらご指摘ください)。しかし、大きなハンノキが伐採されて小さなハンノキしか残されていない環境になると、母(蝶)はまとめて卵を産むことはしません。細い枝に1つずつ卵を産みます。限られた葉(食料)に見合った数しか卵を産まないのです。環境に応じてどのように卵を産むか?ということがミドリシジミの成功方程式と言えるでしょう。
しかし、環境の変化に応じて産み方を変えた(成功方程式が変わった)としても「(硬い葉でも食べることができる)体力のある幼虫が生き残り、天敵に見つかりにくい場所で蛹になる(このようなセンスも生きる力)ものが再び蝶になることができる」という”生きる力のある蝶だけが子孫を残し続けられる”という部分は、どちらの環境においても変わりません。

人も同じです。
あらゆるものがインターネットで結ばれていく21世紀において、「IT技術とAIに習熟することは成功方程式の一つ」であることは間違いないでしょう。しかし、それは成功方程式の一つに過ぎません。インターネット全盛という環境が、いつまでも続くという保証はどこにもありません。大きな自然災害で地球全体の発電量が足りなくなれば、電力をベースとするインターネット社会は衰退するでしょう。もしかしたら電気を使えるのは一握りの人だけという社会になるかもしれません。
「環境で変わる生存戦略(成功方程式)」を追い求めることも大切だとは思いますが、人類の歴史を振り返ってみた場合、いつの時代も「人とは何か?どう生きたいか?どうありたいか?幸せとは何か?」ということを大切にしてきた人たちが存在していました。水と薪と食料生産を大切にしてきた人たちが存在していました。「本質を考え続けることができるというのが”生きる力”」であり、環境が変わっても”生きる力のある人が子孫を残して”きました。

こんなことを「自然界の生き物」は気づかせてくれます。そして、豊富な自然体験の延長に「グリット」「共感力」「共創力」が位置付けられてくると私は考えています。

後に紹介しますが、わが娘たちはサラリーマンの家に生まれ、賃貸住宅を移り住み、公立の小学校で学んだ、どこにでもいる子どもです。”特別な誰か”ではありません。なので、このコンテンツを読んでくれている誰もが同じように「自然体験」を通して「21世紀を生きる力」を育てることができると思っています。

※次は「リベラルアーツ」について書きます。
(不定期に更新します。興味を持たれた方はフォローお願いします)


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