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「創造」こそ「21世紀を生きる力」

 第1項の結論に入ろう。「創造力」こそ21世紀の社会を生きていく上で欠かせない力だ。
 突拍子もないことのように聞こえるかもしれない。なぜなら、生きていくためには「お金を稼ぐ」ことが必要だと考える人たちのほうが圧倒的に多いからね。
 でもお金を稼ぐってどういうことか考えてみてほしい。お金を稼ぐ目的は「衣・食・住」を満たすことだ。中でも食べ物(と水)を手に入れることがお金を稼ぐ最低限の目的だと言える。食べ物さえあれば人間はなんとか生きていくことができるよね。食べ物を自分で生み出したり、収穫することができる人は、(食べ物に関しては)お金を稼ぐ必要はない。

 人類が誕生して間もない頃は、(分業こそあれ)人類は自分の食べるものを手に入れるという生活をしていた。そのような社会では、食べるものを手にする力(狩猟採集力)があれば生きていくことができた。そのうち農業が誕生し、分業が進むにつれて、人間は物々交換という方法を思いつき、物々交換よりも便利なお金という概念を生み出したわけだ。お金がお金を生むという仕組みも考え出され、多くの人がお金の仕組みの中で暮らしているのが現代社会だ。
 さて、お金は誰かの役に立つことでもらえる対価だ。例えば、農家は自分たちが食べる量以上の野菜をつくることで多くの人の役に立っている。トラックの運転手さんは野菜を生産地から消費地に運び、町の八百屋さんは、その野菜を私たちが買いやすいように仕入れ、販売することでお金を稼いでいる。誰かの役に立つことができればお金を稼ぐことはできる。これが現代社会の基本的な仕組みだ。
 しかし、このような仕組みがほぼ世界中に行き渡った結果、これまでと同じような役立ち方では、手に入れられるお金はあまり増えなくなってしまった。
 また食べ物を生産する上で(言い換えれば、人類がこれからも生存していく上で)、今の社会の仕組みが持続可能な形では無いかもしれない、という状況も生まれている。
 どんなにお金を稼ぐ力があっても、食べるものがなかったら生きていくことはできない。飲むことができるきれいな水がなければ生きていくことはできない。「生きていく力=お金を稼ぐ力」という方程式が次第に成り立たなくなってきているのが現代社会とも言えるだろう。

 では、そんな社会で生きていく力とはなんだろう?「生きていく力≠お金を稼ぐ力」になりつつある社会ではあるが、「生きていく力=誰かの役に立つ力」という方程式は変わっていない。ここはとても重要なポイントだ。「誰かの役に立つ力」とは何だろう?それは「誰かの問題を解決する力」だ。「社会の課題を解決する力」だ。
 おっと、ここで、「お父さん、ちょっと待って。創造力とどう関係があるの?」という声が聞こえてきた。ごめんごめん、「課題を解決する力」と「創造する力」の関係を説明することにしよう。
 こんな言葉を聞いたことが無いだろうか?
「どんな問題も、それを作り出した同じ意識レベルでは解決できない」(アインシュタイン)
(The problems that exist in the world today cannot be solved by the level of thinking that created them.)
少し言い換えると
「問題が起きた時とは異なるレベルで考えることができれば、問題を解決できる可能性が生まれる」
 100人しかいないのに200人分の食べ物をつくることができるA村があるとする。B村は100人分の食べ物しかつくれないが、A村から食べ物を手に入れて200人まで人口が増えたとする。食べ物が豊かなA村から足りないB村に100人分の食べ物を与えれば、200人がくらしていくことができる訳だね。この「”ある”ところから”ない”ところにものを平行移動させる」のも悪くはないが、200人から1人でもB村の人口が増えれば飢えに直面することになるし、A村が食べ物を200人分作れなくなればB村は飢えてしまう。根本的な解決にはなっていないよね。
 他にどんな解決法があるだろうか?聡明な君たちならば、昔、君たちに話したことを思い出したもしれない。そう、「食べ物がない国の人たちに、食べ物の作り方を教える」ということだ。この方法ならば、食べ物がない国を食べ物を作れる国に変え、食べ物がない国をどんどん減らすことができる。「食べ物を作る」という発想を生み出したことで、食糧不足という問題を解決することができるわけだ。食べ物を与えるというレベルではなく、食べ物を作るという発想を生み出したことで問題を根本的に解決することができたわけだ。世界的な問題があちこちで発生している今、それまでにない発想を生み出して(創造して)問題を解決するということができれば、世界のどんな場所でも誰かの役に立つことができる。「課題解決には創造する力が欠かせない」というわけだね。「創造こそが21世紀を生きる力」ということの意味をわかってもらえただろうか。

 「センス・オブ・ワンダー」から始まった「21世紀を生きる力」までのストーリーは、どうだったかな?

 第2項では、どうすればそのような感性を身につけられるか?センス・オブ・ワンダーを育む方法について、我が家が実践してきたことを紹介しよう。お父さんが最も意識したのは、君たちが暮らす場所についてだった。

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