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今日は一日 布団の中で ふゆごもりしよう。

ずっと家にいたい子どもだった。特に 寒い1月2月は ずっと家にいたかった。

寒くって暗い冬の雨の日は、家にあった小さなソファに顔をうずめて 一日一点だけをみつめていたい気分に浸るのだ。

そこは、給食を食べるのが遅いことや、お気に入りの折り紙を取られたこと、マット運動がこわくて全然できないことなど、毎日の嫌なことから切り離された【ぜったいに あんしんな 場所】だった。
誰から見られるわけでもなく 誰とも関わらなくてもいい 場所だった。

5歳の息子も なかなか起きてこようとしない。

「もう ずっと布団の中でくらしていたい。
美味しい食べ物いっぱい集めて、好きなだけ寝るの。」
「いいねぇ。クマの冬眠みたいでいいね。」

そんな会話をしていた時、出会った絵本「たのしい ふゆごもり」(片山令子 作 /片山健 絵)

こぐまとおかあさんが ふゆごもりの 用意をする話。
こぐまは、まだ ひとりで眠れない。

息子もまだ、ひとりで眠れない。一緒だね。

「いっしょに ねむる ぬいぐるみ つくって。そしたら あたし、ちいさいベッドで ねむれるわ」

こぐまの決心から物語は始まっていく。

次の日 ぬいぐるみ作る前に ふゆごもり の用意をしようと 2人は外へ出る。辺り一面に広がる落ち葉、澄みわたる 青い冬の空。枯葉を踏む音。画面いっぱいに 冬になっていく冷たい空気が伝わってくる。

お友達と木の実やお魚を釣ったり、おじいちゃんとはちみつを取ったり、こぐまもお母さんのマネをして頑張るけれど、ちょっとズレていて失敗しちゃう感じが 愛おしい。
そして、それを注意するわけでもなく、また やり方を教えるわけでもない、お母さんとこぐまとの関係が羨ましい。

「おかあさん。わたしのかわりに、おなかが ただいまって いったよ。」  
「あら、かんしんな おなかね」

2人の会話は、いつも
こぐまから見える世界から発信される。そして その世界から答えるおかあさん。

息子も大人にはないじぶんで見つけた 自分の世界の言葉を巧みに使って表現する。大人になった私からみると 最高にセンス良くって ずっと側で聴いていたくなる きらきらした言葉たち。

木の実やお魚で豪華な夕ごはん。
その後、ついに お人形を一緒に作り始める。
今日出会ったお友達のこと、おじいちゃんのことを考えながら 作っていく時間。 

「おじいちゃん、いまごろ なにしているのかな。
「きっと、あなたのこと おもいだして、おちゃ のんでいるよ」

そのおかあさんの一言を読んで 心の奥が熱くなり、ゆっくりと謎がとけていく。
幼い頃の私は あたたかいからという理由だけではなく、両親やおじいちゃんおばあちゃんという【ぜったい あんぜんな そんざい】があったから、ずと家に居たかったんだね。
学校や友だちと上手くいかなくても、顔をうずめるソファと、それを 何も言うことなくただ見守っていてくれた存在があったのだ思い返した。

学校に行くようになったら、ふゆごもりしたくなるほど 嫌なこと息子も出会うだろう。ふゆごもりしたい場所が この家かは分からないけど、今日は もう少し 一緒に 布団の中でぬくぬくふゆごもりしていよう。

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