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被災者に聴いたトイレの話(C-008 2018.06.26)

東日本大震災の被災地である仙台市と塩竃市を訪れ、被災者から当時の体験を聴きました。災害トイレの啓発を行う私にとって最大の関心事は「トイレはどうしたのか」。記録誌の行間や裏側、そして外側にある事実や気持ちは、直に聴いてこそ得られました。今日の気づきは、「人から学ぶ、体験から学ぶ」「気づきが行動を変える」です。

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この記事は、メールマガジン【前進の軌跡】(2018年6月26日配信)の転載です。

大阪北部地震の体験談

この度の大阪北部を震源とする地震により亡なられた方々のご冥福を心からお祈りするとともに、負傷された全ての被災者の皆様方に対し、お見舞いを申し上げます。

先週のメルマガは、地震の一報を受けた直後に書きました。関西地方の読者の方が、感想とともに被災状況を知らせてくれました。
● 阪神淡路の時よりも揺れた
● 断水を経験した
● 電車から出られなかった
など。

中でも印象的だったは「阪神淡路で家具転倒を経験して以降、家具を固定してたので転倒は免れました。いつ来るかわからない地震対策を続けていて、本当に良かったと思います」という感想です。被災経験者ならではの言葉が強く響きました。

以前紹介した安田典充さんが、23日に京都の防災イベントで携帯トイレトレーニングを実施しました。「地震から4日目でもあり、予想を上回る来場者。皆さん携帯トイレトレーニングに釘付けでした」と安田さん。体験してこそ大きく気づき、それが行動に変わるのだと自分を含めて実感します。

週末、仙台に行ってきました。今日のコンテンツは仙台と塩竈での私の体験です。

人から学ぶ、体験から学ぶ

2月に開催した「三陸&東海防災フェスティバル"伝"」で生まれた仙台とのご縁。今回は仙台の方にお呼びいただき、携帯トイレトレーナー講座を行いました。

「トイレはどうしていたのか」と、被災された方から直に聴きたい、と以前から思っていた私。絶好の機会と思い、講座参加者を含む12名の方の「体験」を聴きに様々な場所を訪れました。

最初に行ったは旧仙台市立荒浜小学校です。

荒浜と塩竈で聴いた壮絶な体験

東日本大震災において、児童や教職員、地域住民ら320人が避難し、2階まで津波が押し寄せた荒浜小学校。被災した校舎のありのままの姿と被災直後の写真展示等で、津波の脅威を実感し、防災意識を高める場とすることを目的に、2017年4月30日に震災遺構としての公開が始まりました。

私の知らなかった「被災」がそこにありました。

荒浜小学校の最寄り駅である荒井駅構内に、せんだい3.11メモリアル交流館があります。ここで二人の方にお話を伺いました。ひとりは荒浜で津波に遭われた方でした。

壮絶でした。ついさっき見て来た風景の中の話。生死を分けた話。自分の中の感情がぐるぐると回りました。

翌24日は塩竈へ行きました。学校で避難所運営をされた市職員の方に会うためです。その方から応急給水での体験談を聴きました。大変だったことは知っていましたが、本当だったのか、どれほどだったのかを確かめたかったのです。

想像以上でした。追い詰められた人同士のせめぎ合いの緊張感が伝わり、胸が締め付けられました。

気持ちが大きく動いた2日間でした。

被災者のトイレ体験談

目的だったトイレの話はどうだったか。

気づいたこと、あらためて知ったこと、驚いたことをまとめました。
● 断水状態で使用を続け、便器に排せつ物が溜まって使えなくなった(やっぱりそうなんだ)
● その使えなくなったトイレの横で新聞を敷いて、しゃがんで用を足した
● 便袋を使った。凝固剤はなく尿もそのまま。1袋を1日使い続け毎日処理した
● プールの水が使用禁止だった(理由は不明)
● 応急給水量は1人1日、2リットルのペットボトル1本(トイレには使えないはず。どうしていたのかは不明)
● 家の庭で排せつした
● 水で流した(水源は、浴槽の残り湯、川、マンションの外部の蛇口、井戸水など)
● 行政の「(下水道の被災で)水を流さないで欲しい」という呼びかけは記憶にない、または薄い
● 40年前の宮城県沖地震の時、母が残り湯をためていて役立った印象が強く、以来ずっとそうしていた。今回もそれでトイレを流した(2人がまったく同じエピソード)

わかってはいたことですが、一人ひとりの「被災体験」なのだと痛感。確認できたことは、
◎多くの方が、やはり水で流した
◎下水の被災を知らなかった
◎携帯トイレの知識と技能は、被災経験者にも価値があった(受講者のアンケートから)
です。

記録誌から学ぶことはとても多い。しかし記録誌の行間や裏側、そして外側にある事実や気持ちは、直に聴いてこそ得られる。

被災された方の声を聴くことは、始まったばかり。
続けていきます。

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◇今回の気づき
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人から学ぶ、体験から学ぶ
気づきが行動を変える

【関連情報】

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この記事は、メールマガジン【前進の軌跡】(vol.008  2018年6月26日配信)のコンテンツ部の転載です。(タイトルの"C"は、"Content"の頭文字)
あきらかな誤字・脱字を除き、当時の文章をそのまま「軌跡」として残します。

この日の「編集後記」はこちら。


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