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井の中の蛙大海を知らず、されど

私の人生において
"自分から何かをする"というのは縁遠いものでした
かといって、周りがあれやこれやと世話を焼いてくれたのではありません
面倒事に厄介事。人の「やりたくない、出来ない、したくない」を片付ける毎日
それはそれで毎日が充実して…案外、キライではありませんでした
これを片付ければ〇〇さんが楽になる
あれをしておけば✕✕さんが喜ぶなど
誰かの為の私でも、都合の良い私でも
それで、良かったんです

「初めまして」

貴方に出会った時もそうでした
少し…ほんの少し、人より大変な思いをしてきた貴方に
「(私は何が出来るだろう?)」と
そんな事ばかり考えて、思って…思い上がって
貴方も私を"使う人間"だと思っていたのが
今では無性に恥ずかしい

「お早う御座います。今日もよろしくお願いします」

貴方は規則正しい人でした
真面目で、勤勉。人を助けるのに戸惑いはなく
気持ちの良い、いい人だと思いました

「はい、分かりました」

貴方は私の話をよく聞いてくれました
分からない事は都度、それでも私の負担にならないようにと自分で調べられるだけ調べる人でした
優しい人だと思いました。温かい人なんだと思いました
私には勿体無い位だと…初めて、自分を省みました

出来る事をしてきました
熟せるだけ熟してきました
自分の為じゃありません
全て、人の為でした
それで構わなかった
それで、良かったんです

「(私は……何が"したい"んだろう?)」

貴方と過ごして、初めて私に問いました
出来る事は沢山ある
やれる事も沢山ある
経験値だけなら人一倍だろう
けれど、しかし

「(私は自分の使い方が分からない)」

途方に暮れました
立ち止まってしまいました
いえ、最初から私は進んでなどいなかったのです
進まされていただけ、流されていただけ…
そう、気付くことが出来たのです

そこからは試行錯誤の毎日でした
答えのない問を繰り返し、あれこれ考えてまた問い続ける

「(嗚呼、何て楽しいんだろう!)」

童心に還った気分でした
毎日、毎日。別の遊びをしているようで
転んでも、痛い思いをしても…明日には忘れて楽しんでいた
貴方のお陰だと思いました。事実、そうだから
「(私に気付かせてくれて)ありがとう!」と貴方に言い続けました
今考えれば、さぞ迷惑だっただろうと思います。しかし、貴方は優しい人なので

「いえ、力になれて良かった」

と、笑ってくれました
満ち足りた気分になりました。とても、安心した
"私は私でいい"のだと、実感しました





私は貴方が好きだったけど、この気持ちが【恋】なのかが分かりませんでした
けれど、私には些末なことで。取るに足らないことで
なんだってよかったし、どっちでもよかった

「(貴方は私の恩人で、特別で。大切な人だから)」

私にとってはそれだけで良かったんです
今まで目にもくれなかったチーズケーキ、貴方が好きかもしれないと手を出してみた
食べてみたら美味しくて「これならイケる!」と好きになった
今まで敷居の高かったスカート、学生服のスカートだって嫌々履いてた
着てみたら、「何だ、案外」。大したことなかった。吃驚した
化粧品にも興味を持った。あれが可愛い、これが綺麗とはしゃいでいた
バッグも靴も、アクセサリーだって。見るもの全てが新鮮だった
世の中に掃いて捨てるほど溢れていても、私には何も見えていなかった

「(日常も非日常も、言うほどそんなに変わらないんだなぁ)」

なんて、そんな事を思うようになった
まるでコインの裏と表、片面が無くなればもう片面も存在しない
今の自分が前を向いているのか、後ろを向いているのか…それだって物は見ようで、考え方次第だと思った
そう、思えるようになった

「ありがとう」

と、沢山。貴方に伝えた
沢山、貴方を想った
それだけでよかった、本当にそれだけでよかったのに

「…出来るなら、それありがとう以外の言葉も下さい」
「貴方が好きです」

私、私でよかった
貴方が貴方で…本当によかった


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