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港区女子を追いかけ12年。億を稼ぐ女から赤貧まで…パパ活女子・頂き女子・ギャラ飲み女子の歴史
十数年前。私は六本木ヒルズのホームパーティーにいた。
絶景が見られる一室には、私が見たことのないレベルの金持ちと、美女が何人も集まっていた。あまりにも場違いな自分にめまいがして、急いで帰った。
けれど、気になってしまったのだ。
女たちは、なぜこのような場にいるのか。ただいるだけならまだしも、すっかり場馴れした女性しか、そこにはいなかった。こんな「明らかに公に言えないパーティー」へ、なぜ足繁く通ってしまうのか。
かくして、私は港区女子を追いかけはじめた。
港区女子は、「金銭感覚を壊す人体実験」に使われる
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港区女子という単語が使われ始めたのは2016年頃。彼女たちは港区・六本木に集まる富裕層の添えものだ。単なる添えものなら、プロを呼べばいい。金持ちの暇つぶしとして「素人へお金を与え、金銭感覚が壊れる様子を見せる」のが、彼女たちの役割だった。
考えてもみてほしい。あなたは偶然、金持ちに見初められる。何度もパーティーに呼ばれ、会員制のバー、VIP顧客限定のイベントへ次々と同伴する。それなのに、彼はあなたへ「手を出さない」のだ。
彼はあなたの賢さや聡明さに惹かれたのだという。そして、あなたのちょっとしたニュースへのコメントを称賛する。
「こんなに賢いなんて、さすがだなあ。俺なんて全然わかんないよ。もっと教えて」
完全に乙女ゲームの世界である。
しだいに、あなたは自分の待遇が当たり前だと思いはじめてしまう。
そして、普通の男性に向かって
「私を呼び出しておいて、帰りのタクシー代も渡さないなんてどういうつもり?」
「こんな男とつまらない話をするくらいなら、◯◯さんのVIPパーティーへ行けばよかった」
と、思うようになる。
だが、港区女子でいられるのは、27歳がリミットだ。そこからは、他の女を呼び出すつなぎ役になるか、体を使うしかない。さもなくば、港区の男たちはあなたの連絡先を消すだろう。すでにまともな友人も男性もあなたの周りにはなく、夜の世界で生きていくか、人生をやり直すしかない。
港区女子とは、そういう遊びである。
港区女子から派生した「パパ活」女子の普及
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当時、港区女子はその名のとおり「東京都・港区」の物語に過ぎなかった。正直、人口の大多数を占める「それ以外」の人にとっては、他人の面白話にすぎない。そんなとき、リアリティをもって港区女子を全国区へ広めたのが「パパ活女子」という単語の登場だった。
2017年には「パパ活女子」でのGoogle検索数が過去最大となり、一世を風靡した。だが、港区女子との大きな違いは「金を出す男性が、富裕層とは限らない」点にある。
港区女子とはうらはらに、パパ活女子はより悪どいものへ近づいた。そこまでお金がない男性には、女性へお金を湯水のように与えて金銭感覚を壊す遊びなど、やりようもないからだ。
そして「いかにパパ(買い手)と体の関係を許さず、お金をふんだくるか」という駆け引きが、価値を持ち始める。お茶だけで5,000円払えない男性はハナから拒否しろ、メッセージで体の関係を迫られたらこう返信しろ……。あの手この手で、金のない男たち vs 金のない女たちの醜い闘争が始まったのだ。
こういった闘争に、かつての港区女子が参加する……はずはなかった。彼女たちはパパ活女子を見下し、ただ酒席に同伴するだけでお金をもらえる自分たちの価値を確信した。
そこで生まれたのが、「ギャラ飲み女子」である。
ギャラ飲み女子の誕生と組織化
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ギャラ飲み女子とは、ギャラ(お金)を得て飲み会へ参加する女性のことである。これまた、キャバクラ嬢を派遣すればいいだろうと思わなくもないが、「素人がいい」という声は、遊び慣れた男性の常套句である。
そのようなわけで、フットワークが軽く、お酒に強い女性はどんどん呼び出されるようになった。
そして、ギャラ飲み女子はすぐに業者の目にとまる。なぜなら、女性を派遣してお酒に相席させるだけなら、風営法の規制を逃れられるからだ。ギャラ飲み女子と飲み会をマッチングするアプリが雨後の筍のように登場した。さらには、都内に待機室を手配し、呼び出しに応じてギャラ飲み女子を派遣するサービスまで生まれた。ここまでくると、ただのデリヘルだ。
実は、筆者もギャラ飲み女子を呼んでみたことがある。風俗営業ではないのだからこそ、女性も登録し、ギャラ飲み女子を呼び出せるのだ。
そこにやってきたのは、まさかの女子大生だった。それも、ガチガチにふるえていた。ギャラ飲みに参加するのは初めてだという。
「学費を払うためにギャラ飲みのバイトを始めて……これなら食費も浮かせることができると思って……でも……始めての人と何を話せばいいか分からなくて……」
そのまま緊張のあまり押し黙る彼女へ、どう声をかけていいか分からなかった。お酒は飲めない、カラオケも嫌い、でもお金を稼がなくちゃ……と、暗い過去だけをぽつりと話す。もちろん場は盛り下がった。だが、素人が来るということは、こういうことである。私がクレームをつけていい理由もない。
かつての港区女子たちは、こうした「弱い素人」を駆逐していった。盛り上げ力、傾聴力、そして富裕層が好む話題への理解。生成AIが流行っていればプロンプトを書いてみせ、M&Aが話題に出ると知るや、ビジネス書で勉強してくる。聞き手としてステップアップするために、カウンセラーの民間資格を取得した女性まで知っている。
向上心、あるいは野心を持ったギャラ飲み女子と、何も知らずにフリーランスの水商売人になってしまった女子学生では、お話にならない差がついていく。
パパ活女子を嫌うギャラ飲み女子たち トップは累計11億を稼いだ
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港区女子は、いつしか区を飛び出してギャラ飲み女子となり、そして億単位で稼ぐものまで現れた。私が個人的に知っている、もっとも稼いだギャラ飲み女子は、この5-6年で累計11億を稼いだ。年商2億。かなり成功した、野球選手並だ。
トップ層になれる女性は、学歴もあるケースが多い。MARCH以上の大学を出て、それでも港区のきらめき、裕福な暮らしに抗えなかった人たちだ。彼女もそのひとりである。
大学時代に港区女子となった彼女は、年齢とともに切り捨てられる自分へ危機感を抱いていた。そこで、ギャラ飲みに活路を見出した。「大人の関係」がなく、多くの人間が集まる飲み会に呼ばれるだけ。経済や政治の知識も豊富でありながら、聞き役として相手を立てる。
多くの港区女子がそうであるように、トップ層のギャラ飲み女子は美しさでキャバ嬢に負ける。だが、だからこそハンデを研鑽と知識でカバーしてきた自負がある。
全身をMax MaraやLoro Pianaなどの1枚40万オーバーの服に包まれて、タクシー移動で現れる彼女を知ると、もはや「素人を呼び出せるサービスの建付けとは何だったのか?」と思わされる。
しかし、男性が求めるのは素人の仮面をつけたプロなのだから仕方ない。
顧客であるパパ・おぢを憎んで「頂き女子」になるパパ活女子
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実は、港区女子や高ランクのギャラ飲み女子に話を聞いても、顧客男性を憎んでいる発言は出てこない。彼女らへ深くインタビューすると「幼いときに家をでていってしまった父親への恨み」とか「10代の頃、塾で性犯罪の被害にあったトラウマ」といった過去が出てくることはままあるが、それが顧客そのものへの憎しみとしては明言されない。
なぜなら、客は富裕層で、大人の関係も求めてこないからだ。港区女子・ギャラ飲み女子も「お客さんにはまあまあ良くしてもらっている」という気持ちがあるのだろう。
だが、パパ活女子は違う。富裕層を相手にしているギャラ飲み女子と異なり、パパ活女子は「これだけ払ったなら、即物的な対価をよこせ」「もっと安くしろ」と値切ってくる相手と、常に交渉しなければならない。フリーランスの夜職には、身の危険から守ってくれる黒服がいない。だから、ストーカーや性被害にあうリスクも抱える。
さらに、パパ活女子は24時間365日、客からのメッセージへ応対せねばならない。まさか「本日の営業は終了いたしました。平日09:00以降におかけ直しください」ができる商売ではない。カスハラの固まりのような接客を経て、パパ活女子は客である男性を憎み始める。
ーー憎い相手なら、適当にあしらってもいい。いや、私の尊厳をここまで傷つけたのだから、もっと対価を払わせてしかるべきだーー
だからこそ、パパ活女子は、いかに「パパ・おぢ」から要領よく搾り取るかを考え始めるのだ。そのような背景から、パパ活女子向けの「おぢ搾取マニュアル」は多数販売されてきた。金を女性へ貢ぐ都合のよいおぢの見分け方。危険なおぢを避ける手段、おぢから自然に多額の現金をせしめる方法。
これらの集大成が、詐欺罪で逮捕された「頂き女子りりちゃん」こと、渡辺真衣被告である。頂き女子たちはロマンス詐欺の存在など、知りもしなかっただろう。だが、顧客であるパパのことは心から軽蔑し、搾取されて当然の存在だと思っていたはずだ。
頂き女子とギャラ飲み女子の残酷な格差
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筆者は、いわゆる「頂き女子」の行為を、全く正しいとは思わない。なんなら、パパ活女子の振る舞いすら、浅ましいと感じてしまう。しかし「1億5千万円と引き換えに男を憎み、それでも男から離れられず懲役刑まで食らった頂き女子」と、「11億円を稼いで人生を駆け上がったギャラ飲み女子」では、格差を感じずにいられない。
日本総中流社会と呼ばれ、上から下まで援助交際に手を染めていたのも今は昔。体の関係なくして億を稼ぐ女性から、一晩3,000円で交渉する立ちんぼの女性まで……。
女性の体は、これほどまでに格差を持つ。そして、女体の「値段」を決めるのは美貌ではなく、学歴と富裕層とのコネという、これまたひっくり返せない格差に根ざしているのである。
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