EBMに基づく治療法、診療ガイドライン④
EBMの推進方策の一つである診療ガイドラインは、最新の知見に基づく治療法などを経験の浅い歯科医師やコ・デンタルにも容易に活用できる効果が期待できるのみならず、患者さんにとっても治療法などの拠りどころとなる科学的な根拠が明示されるため、病状をよく理解し、治療法を選択することが容易となる。さらに、医療の透明性を高めインフォームド・コンセントの実践に役立つ。
特に、歯周疾患のような慢性疾患においては、患者の主体的な参加が重要になるので、患者が自分の病状を知りEBMに基づく治療法を理解することは、患者の協力が容易になり治療効率の改善につながると思われる。
EBMに関して、わが国で最も早くその必要性について議論を行った「医療技術評価推進検討会」が日本語訳として出した概念は、次の3要素を統合するものと考えられる。
・利用可能な最前の科学的な根拠(Research Evidence)
・患者の価値観及び期待(Patient Preferences)
・臨床的な専門技術(Clinical Expertise)
すなわち、EBMとは「診ている患者の臨床上の疑問点に関して医師が関連文献等を検索し、それらを批判的に吟味した上で患者への適用の妥当性を評価し、さらに患者の価値観や意向を考慮した上で臨床判断を下し、専門技術を活用して医療を行うこと」と定義している。
自治医科大学学長(医療技術評価推進検討会座長)高久史麿先生は、『EBMは患者の立場に立った新しい医療を目指すものである。EBMを利用することによって地域による診療内容のばらつきをなくすことが可能であるし、またEBMに基づいたインフォームド・コンセントを得ることによって、患者と臨床医との間によりよい信頼関係を構築することができる』と述べている。
また、医療技術評価推進検討会の報告書では、医療技術評価(Health Technology Assessment)の目的は、国あるいは地域全体における望ましい医療の在り方が明確になり、それが実施されることである。このためには、第一段階として、社会レベルで個々の医療技術の臨床的有効性や経済的効率等について総合的に評価する必要があり、医療技術評価はこの役割を果たす。次に、この評価結果を利用して、医療機関レベルでは個々の医療技術の選択や医療の質の評価のための基準を設定し、医療の質の改善を進めると結論づけている。つまり、医療技術評価によって得られた科学的な根拠に基づいて診断・治療法等を選択、決定することがEBMを実施することであると述べている。
EBM(ガイドライン)の実践手順としては
Ⅰ.臨床での疑問点の抽出
Ⅱ.疑問点に関する文献の検索
Ⅲ.メタ分析のできる専門家の育成
Ⅳ.得られた文献を自分で批判的評価
Ⅴ.文献の結果を臨床応用
Ⅵ.自らの医療の評価
であるが、歯科治療のガイドラインの用件としての論理的なステップは以下のようになる。
1st:問診、診査、検査
2nd:問題点リスト=診断 ←解決法(Possible treatment options)
3rd:治療目標
4th:予知・治療ゴール
5th:治療計画
6th:治療
7th:長期術後評価・予防
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