東北大学SF研✕宇宙広報団TELSTARコラボ企画~おすすめ宇宙SF5選

人類は、遠い宇宙に好奇心を掻き立てられてきた。
それはSFにおいても同じである。その後の作品に大きな影響を与えたH・G・ウェルズの『宇宙戦争』や、SF映画の金字塔「スター・ウォーズ」はいずれも宇宙をテーマとしたSF作品である。そして近年大きな話題となった劉慈欣の『三体』やアンディ・ウィアーの『プロジェクト・ヘイルメアリー』もまた宇宙を舞台としている。
例を挙げだしたらキリがないほどに、今日まで多くの作家が宇宙を舞台としたSF小説を著してきた。
主に中高生へ向けて、文理にとらわれない宇宙の魅力を伝えている学生団体・宇宙広報団体TELSTAR(以下TELSTAR)とのコラボ企画として、この記事では東北大学SF研究会が考える宇宙SFとは何かについて扱っていこうと思う。

TELSTAR RADIO振り返り

東北大学SF研は、当記事と同日公開のポッドキャスト番組TELSTAR RADIOにゲスト出演し、各部員がおすすめする宇宙SF作品を紹介した。
そこでどのような作品が挙げられたのか、振り返ってみよう。

小説作品

『巨星』(ピーター・ワッツ)
『6600万年の革命』(ピーター・ワッツ)
『ディアスポラ』(グレッグ・イーガン)
『銀河ヒッチハイクガイド』(ダグラス・アダムス)
「人間たちの話」(柞刈湯葉 『人間たちの話』収録)
『ニューロマンサー』(ウィリアム・ギブスン)
「西城秀樹のおかげです」「地球娘による地球外クッキング」(森奈津子 『西城秀樹のおかげです』収録)
「陽根流離譚」(森奈津子 SFマガジン2007.2掲載)

映像作品

「ウルトラマンコスモス」
「ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE」
「ウルトラマンネクサス」
「ウルトラマンマックス」
「ウルトラマンメビウス」
「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」
「ウルトラギャラクシー大怪獣バトル」
「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」
「ウルトラマンサーガ」
「楽園追放-Expelled from Paradise-」
「地球外少年少女」
「ぼくらのよあけ」
「2001年宇宙の旅」
「2010年」
「不思議惑星キン・ザ・ザ」

ここではラジオ内で扱った作品の紹介だけに留めておく。しかしラジオではただ作品の名前を挙げていっただけではない。それぞれの宇宙SF作品の魅力の紹介など、ここでは書ききれないほどの話を展開していった。詳しく聞きたい方はぜひ以下から、TELSTAR RADIOを聞いて欲しい。

TELSTAR RADIOはそのほかのアプリでも配信している。下のリンクから好きなアプリを選んで聞いて欲しい。


宇宙SF小説5選

ここからは、数多くの宇宙SF小説の中から特に宇宙開発へのロマンを強く感じられるSF小説を5つピックアップして紹介する。

『2001年宇宙の旅』(アーサー・C・クラーク)

ラジオではスタンリー・キューブリックが監督した映画「2001年宇宙の旅」を紹介したが、ここでは映画版で脚本を担当したアーサー・C・クラークによる小説版『2001年宇宙の旅』を紹介する。
月面で、300万年前に埋められたと考えられる石板「モノリス」が発見される。それは人類よりもはるか以前に知的生命体が月にいたということを示していた。同じころに土星でも、同様のモノリスが発見された。それを受け、ディスカバリー号は急遽計画を変更し、土星軌道へ向かうこととなる。
モノリスの目的は何なのか、映画のあのシーンは何だったのか、最後のアレって何なのかなど映画で説明なしに描かれた数々のシーンや要素について、クラーク独自の解釈ではあるものの、明言されている。なので、映画を見て挫折した人にも、ぜひ読んでもらいたい。

『深紅の碑文』(上田早夕里)

舞台はリ・クリティシャスによって、海面が大幅に上昇し、ほとんどの陸地が水没した、25世紀の地球。人類は、残されたわずかな陸地やメガフロートに建設した海上都市で生活する陸上民と、居住用人工生物「魚舟うおぶね」と共に素朴な生活を営む、遺伝子改良が施された海上民に別れて暮らしていた。そんななか、ホットプルームの上昇によって、人類の存続さえも危ぶまれるほどの<大異変>が到来することが予測される。
この作品は滅亡の危機に瀕し、守りたいものを守るべく奮闘する人々の物語である。
主人公の一人、星川ユイは深宇宙研究開発協会に所属し、人類という種族を地球外にもさせる、滅亡を回避する計画に携わっている。しかし、過去の戦争のトラウマや、<大異変>に備えた物資不足によって、宇宙開発は人々からあまり歓迎されていなかった。
本作では宇宙開発における、技術的困難のみならず、社会的、政治的困難もしっかりと描かれているという点で興味深い。また、作品の社会性と、ガジェットのロマンを両立させている、個人的に大好きな作品である。
「オーシャンクロニクル」シリーズの一作だが、この作品だけでも十分に楽しめる。

「宇宙ラーメン重油味」(柞刈湯葉)

ラジオでも紹介した『人間たちの話』(柞刈湯葉)に収録されている短編小説。
遥か未来、人類が銀河連邦に加盟し、太陽系にも異星人がやってくるようになった時代を舞台にしたコメディSF。
トシオは自律戦闘用ロボットのジローさんと<ラーメン青星>を営んでいた。<ラーメン青星>はケイ素や金属の体を持つ異星人にも、体に合ったラーメンを提供するだが、あるひ巨大生物によって脅迫とも取れる注文を受ける。「消化管があるやつは全員客」をポリシーに掲げるトシオはどうにか巨大生物の口に合うラーメンを作ろうとするが……
著者の柞刈湯葉らしい軽い語り口と、妙にリアリティのある異星人たちの設定などが盛り込まれた面白い作品である。
SFマガジン2022年2月号には本作の続編「宇宙ラーメン鉄面皮」が掲載された。<ラーメン青星>にどのような客がやってくるのか、今後も楽しみである。

「航空宇宙軍史」シリーズ(谷甲州)

谷甲州による、太陽系での戦争を描いたシリーズ。
21世紀末、地球の植民地支配から抜け出すことを目的として、木星や土星の衛星を中心とした外惑星連合が成立し、地球-月連合の航空宇宙軍との戦争が勃発する。シリーズでは、戦争だけでなく、戦後の処理、そしてさらなる未来まで描かれる。
誰もが憧れるであろう宇宙での戦闘というロマンのあるテーマを、リアリティ重視で描かれているため、とても読みごたえのある作品である。
とくに潜水艦での戦闘を思わせる、宇宙空間での戦闘シーンは読んでいるこちらの息まで詰まりそうな迫力がある。
近年、完全版がハヤカワ文庫から刊行されたので、この機会にぜひ読んでいただきたい作品である。


『地球の長い午後』(ブライアン・W・オールディス)

自転をやめた地球は、永遠の昼と夜の側に二等分された。昼の側は陸地を覆い尽くした巨大なベンガルボダイジュを始めとした、異常な進化を遂げた植物によって支配されていた。人類の文明は衰退し、生き残ったヒトは自律移動する肉食植物に怯えながら暮らしていた。ある日、グレンは属していた部族を離れ、危険な植物が跳梁跋扈する世界を旅することとなる。
ブライアン・W・オールディスによる小説で、ニューウェーブの代表作とされている。端的に行ってしまえばニューウェーブは宇宙での大冒険は描かれない傾向にある。
この作品も地球の終末をテーマにしている。しかし作中では「綱渡ツナワタリ」という植物グモが登場する。ツナワタリは地球と月との間に糸を張って、その名の通り綱渡りをするようにして地球-月間を移動する。ツナワタリの移動の影響で、月も多少は植物が育つような環境に変化していた。地球上での覇権だけでなく、月への移動も植物の支配するところとなっていたのだった。
人類の叡智の結晶である宇宙船によってではなく、異常に進化した植物によって月へ行くというのが面白い。


面白い宇宙SF小説はまだまだたくさんある。ここではその一部を紹介したまでに過ぎない。
今回紹介した作品を読んで面白いと思った方は、紹介していない作品も読んでもらいたい。
そして、ここで挙げた作品に食指が動かなかった方も、それだけで宇宙SFを毛嫌いせず、面白そうな作品を探して読んでいってほしい。

TELSTARの紹介

今回SF研とコラボしたTELSTARは、主に中高生に向けて宇宙に関する情報発信を行っています。TELSTARについてもっと知りたい方は下をチェックしてみてください。

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(宮崎)

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