『彼らの見つめる未来と孤独』UVERworld “UNSER TOUR” 2019.12.25 at Kobe

 この日は、武道館の改修工事のため、クリスマス初の関西での開催となった。

 新しい時代のUVERworldを届けるという強い決意を感じるアルバム、UNSERを引っ提げてのクリスマス。アルバムツアーのうちの一つではあるが、特別な日ということもあり、彼らの引き出しの''とっておき''が何曲も披露された。

 私は目撃した。昔の彼らを。

 彼らは昔を決して否定しないし、過去に満足もしない。あの頃の自分を投影するスクリーンとしての彼ら。それは真っ直ぐに未来を志向している。彼らのプレイは過去の再生に留まらない。だから私たちは懐かしさ以上のものを感じ、彼らの''今''を含んだパフォーマンスに心を震わせるのだろう。

 変わっていくことに果敢に挑む強さはUVERworldが多くの人を引きつける要素のひとつだろう。どんなに新しいものを作っても、流行に飛びついて身に纏っただけの生半可なものは、ひとつだってない。大切なものを守るため、勇気を持って削ぎ落としたものが彼らを形成している。彼らのしなやかで洗練された「新しさ」を形作っている。だから私たちは彼らの音楽を何度でも初めて彼らに出会い、何度でも新しい恋に落ちる。

 TAKUYA∞の力強いMCの中でも、今回意識したのは「仲間」というキーワード。バンドとして成長を続けた故の「孤独」と向き合い、戦ってきた彼らだからこその『AFTER LIFE』のリリック。これは昨年のツアーで繰り返しTAKUYA∞が口にしていたMCから生まれたものだと思う。

 売れなくなって周りの人が離れていった時、誰もいなくなっても俺はお前の隣にいるという未来は保証する。そんな未来が楽しみだ。
──TAKUYA∞

 自分が何者でなくても側に居てくれる仲間、共に歩む未来が楽しみに思えるそんな仲間はUVERworldのような特別な存在が口にできるものだと思っていた。手の届かない話、そんな風に思っていた。

 UVERworldのライブに参戦したのがちょうど1年前のクリスマス。あの頃と今の自分に決定的に違うのは、理想だと思っていた「仲間」に自分なりの答えを出せたことだ。

 あの頃は、仲間なんて必要ない位自分が強くなれば傷つかないと思っていた。「これ以上頑張っても何も変えられないのではないか」。そんな不安に疲れ、努力することに臆病になっていた。裏切られることを恐れていたけれど、本当はわたしが誰も信じていなかったのだ。「こんな自分じゃ必要ない。認めて貰えない」。みんなと仲良くしなければいけない、輪の中で笑っていなければ、賢くてしっかりしたわたしでなければ仲間になれない。そう信じていたのに、ほんとうはそんなことなかった。

 ときどき機嫌が悪くなるし、自分の時間を優先する時もある。失敗もする。そんなわたしでも彼らは認めてくれたし、負の面も知った上でわたしのことを信じてくれた。認めてくれた。そのことにようやく気付けて、TAKUYA∞のMCが不意に響いた。「私が何者でなくても、認めてくれる人たちがいる」。特別じゃない、何者にもなれていないわたしにも仲間ができたと感じた瞬間だった。

 わたしは『AFTER LIFE』を聴きながら、自分の仲間を思い出していた。わたしたちは「みんな」とは違う自分に悩んでいて、どこか寂しそうだった。

誰といても独りぼっち
解けぬ問題集
一人が好きなわけじゃない
誰も好きになれなかった
── AFTER LIFE

 それぞれがそれぞれに不器用で、色んな傷を抱えて生きていた。生きるべきか死ぬべきか。そんな問いと大真面目に向き合う、不安定な人たちがたまたまこの世代に集まった。離れていく人もいたし、否定しようとする人もいた。何もかも違う私たちがただひとつだけ、必死になれることが一緒だったということだった。不安定で、未完成で、それでも大事にしたいと思える存在、それこそTAKUYA∞が示した仲間だったのだ。

 TAKUYA∞のメッセージに対して答えを見つけた私だからこそ、膝から崩れ落ちてしまいそうになるほどの強烈な感動を覚えたのだろう。

 『AFTER LIFE』は拡がり続ける宇宙という壮大な存在を暗示させるようなメロディが特徴的だ。孤独を選び自己の内側を見つめ続けると、いつしか自己を超えた存在に行き着くのかもしれない。「世界を超える」という名前を背負った彼らは過去を、今を超え続けるという果てしない挑戦を続ける旅の途中。彼らの哲学もまた移ろい、拡がっていく超自己的で壮大な存在、まさに宇宙のようだ。

孤独ゆえの自由、自由が課す孤独。

 彼らが掴み取った自由は、思っていたものと違っていたかもしれない。だけど、彼らは自由を守るためにこれからも戦い続けるだろう。

きっと、これが彼らの現時点での「UNSER」なのだ。

やっとあり方の自由を勝ち取り
この旅はまだ始まったばかり──Making it drive