競馬連載001

「見た目と記録、強い競馬と強かった競馬」

【重賞回顧】
「第24回ユニコーンS」
6月16日(日)東京競馬場ダート1600m(重)、3歳オープン、別定、15頭立て


 3歳ダート路線は芝路線の充実とは対照的にレース番組に限りがあり、出走馬が分散しにくい傾向がある。使う側の競走馬の選別がはっきりし、なんでも芝路線だった時代はもう終わった。
 ダートで強い馬は使い出しからダートを使われるようになり、3歳春の時点でもダートのスペシャリストが増加、芝偏重の番組作りがいささか窮屈に感じる。
 
 ただし、有力馬が分散し、レースレベルが下がる芝と異なり、ダートのオープン特別はどのレースもクオリティが高い。高いレベルのレースを続けながら鍛えられる、それがダートのスペシャリスト。
 その証拠に同日に行われた青梅特別(3歳以上2勝クラス)ではユニコーンS有力馬が揃った青竜Sで4角4番手4着だったブルベアイリーデが2着に0秒4差をつけて快勝。その2着は同じく3歳のチュウワフライヤー。この時期の古馬2勝クラスのダート戦は降級制度廃止によって古馬が弱体化、今年はさらに旧3歳オープン勢の独壇場になる。

 その青梅特別は前後半の半マイル46秒7-49秒7、落差が3秒もあるハイラップ。勝ち時計1分36秒4は2勝クラスとしては水準以上。この時計で後ろを離したブルベアイリーデは秋以降の東京ダート1600mでは目が離せない。外枠からわざわざインに潜り込むなど器用な面を見せたが、上がり最速36秒4の脚を見る限り、ベストは東京コースだろう。

 3歳限定ながら重賞のユニコーンSは今年もハイレベル。米国で奮闘するマスターフェンサーを破ったデアフルーグ、デアに青竜Sで先着したデュープロセス、芝のニュージーランドTを逃げ切ったワイドファラオ、全日本2歳優駿を勝ったノーヴァレンダと役者は揃った。

 ダートのスペシャリスト化が著しい時代において二刀流で気を吐いたのがワイドファラオだった。東京ダート1600mで勝率が低い1枠1番という不利な状況をスタートから続く芝部分でのダッシュ力で覆し、一気に逃げ切ってしまった。前後半の半マイルは45秒8-49秒7は青梅特別を遥かに凌ぐ猛ラップ。 いわゆる後続もなし崩し的に脚を使わされる展開に誘い込んだことが勝因。

 これだけ猛ラップになっても、そう派手に止まらないのがダートのトップホース。先手を取って自分の世界に誘い込んだワイドファラオ以外にも3番手から3着に粘り込んだダンツキャッスル、番手から4着に踏ん張ったヴァニラアイスがいる。
 ワイドファラオも含めて、これらは強い競馬ではあるが、結果はワイドファラオの逃げ切り勝ちなだけに、果たして展開と逆の競馬をした強い馬といえるだろうか。粘っても伸びきれなかった2頭、前半の貯金を使い果たしたワイドファラオ、見た目は強そうではあるが、注意しておきたい。


 日曜日は快晴だったが、前日降り続いた雨の影響で馬場状態は重。前日の泥んこ馬場よりも乾く過程だった日曜日の馬場は究極の高速馬場で、勝ち時計1分35秒5は青梅特別とともに額面通り受け取れないが、基本的に先行有利なコース設定にさらに先行馬に好走する因子が集まったレース。
 真に見直すべきはワイドファラオに頭差まで詰め寄ったデュープロセスと7着デアフルーグだろう。

 特にデアフルーグはマスターフェンサーと似たエンジンの掛かりがいかにも悪いタイプ。乾いたダートや上がり時計を要するような設定、かつ大回りな競馬場なら巻き返す機会は十分にある。大井競馬場で行われるジャパンダートダービー(通称JDD)では当日の馬場状態次第で狙いたくなる一頭だ。


(※以下、JRAレース結果より抜粋)


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