競馬連載008

「スタイルは守るのか破るのか」 【第55回函館記念】回顧

「先週の重賞を回顧してみた」
編集部Kによる重賞回顧。レースをあらゆる角度から読み、
独自の視点で語ってみる。次走狙いたい馬、危険な馬を指摘しつつ、
なんとなく役に立ちそうなコーナー。
基本、競馬が終わった、ちょっと寂しい月曜日に掲載。


「スタイルは守るのか破るのか」
【第55回函館記念】回顧
2019年7月14日(日)3歳上OP、GⅢ、函館芝2000m

 単勝オッズ5.0倍の1番人気なんて喜んで蹴っ飛ばす性質なので、この結果にはなんにも抵抗しようがありません。いつも水曜日に思い出話している人もこの馬券をとるはずがありません。 
 
 穴党を黙らせた1番人気マイスタイルが逃げて差し返すという味な競馬をし、2着は4角2番手、道中も番手追走のマイネルファンロン。3着は動いて4角3番手のステイフーリッシュ。実況アナが「追い込んできた」なんて喋ってましたが、実際は好位からの競馬でした。そんな錯覚を呼ぶほど後続からはどの馬も伸びてこなかったということです。
 
 いわゆる「行った行った」の単調な競馬でした。今年の函館はここ数年のような高速化はせず、良馬場でも力が要るというかつての函館らしい馬場で、差し追い込みも上位に来るようなスリルあふれるレースが多かったので、函館記念がここまで単調な結末になるとは思いもよらなかったです。はい、外れた言い訳です。

 マイスタイルは逃げ戦法で日本ダービー4着、穴党を興奮させ、ちょっとだけ落胆させて以来、秋は距離の壁にぶつかりつつ、4歳夏の函館で降級戦2連勝でオープンにすぐ戻るという力がある馬じゃないとできない芸当を披露。
 
 その後は逃げたり控えたりという陣営の苦悩が想像できる脚質迷走状態。そんな状態でも人気以上に走る穴党の味方でした。そんなこんなが実を結んだのが函館記念。控える競馬を試みたことが徹底した逃げ戦法、逃すと厄介だという意識を薄れさせたんでしょうか。この日はほぼノーマーク。1番人気馬が原点回帰でスイスイと逃げても追いかける馬なし。自分のスタイルを試行錯誤の果てに取り戻し、まさにマイスタイルな競馬でタイトルを手中に収めたわけです。
 
 競馬におけるスタイルを貫くのか崩してアドリブを仕掛けるのかって難しいところです。アドリブ仕掛けて負ければ叩かれるでしょうし、スタイルを守って負ければ、「この馬の競馬はできた」となるわけです。
 
 しかしですよ、競馬は必ず先頭に立つ馬が作るペースに支配されるわけで、逆に先頭に立つ馬がレースを支配するものです。その支配からどこで脱出するのか、それが駆け引きになり、レースを面白くします。
 
 このレースでいえば、マイスタイルの支配から脱出を試みたのは2着マイネルファンロンのみでした。そのマイネルファンロンの仕掛けを弾いたのがマイスタイル。じゃあ、ほかは? 正直、みんなマイスタイルを貫いて負けたように見えてしょうがないです。どこかでアドリブを仕掛けられなかったかなぁと。やっぱり、1番人気馬が逃げる展開で後ろで虎視眈々というのは、勝ち負けに加わる気があるのかと思ってしまいます。

 函館記念に人並み以上の闘志を燃やす丹内祐次騎手だけがマイスタイルを徹底的にマークする競馬を展開。最後は一旦は先頭に立ち、見せ場はたっぷり作りました。これもマイネルファンロンのスタイルを守っただけともとれます。そもそもマイスタイルの術中にハマった競馬だったので、そこに抵抗するような馬がもう少しいてもよかったんじゃないでしょうか。
 スタイルを崩す、アドリブを仕掛ける、それは競馬に限らず、あらゆる社会のあらゆる場面でやりにくい空気感が蔓延しています。だからこそ、そんな世の中だからせめて競馬に踏み出す勇気を見せて欲しいと願うわけです。ま、勝手ですがね。しかし、JRAのHolidaysじゃないCM「weekend memories」のように自己を投影できることも競馬の魅力ですから。

ーーー


当編集部の所属する東邦出版では、毎月様々な書籍を出版中! 
競馬、プロレス、サッカー、実用書……多種多様なタイトルの詳しい内容
は下記公式tumblarよりご覧ください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?