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【140字小説】とある先生とアシスタントの日常♯16~20
♯16(2022/03/25)
「先生、今何て言いました?」
「コーヒー入れて。って…あ。」
「“君”ですよね。」
「…名前で呼んだだけで怒るの?」
「…先生が“君”と呼ぶ女性は私一人です。」
と勢い良くカップが机に置かれた。
「ですよね?」
アシスタントの視線が痛い。
…僕はコーヒーを飲みたかっただけです。
♯17(2022/04/01)
「先生、嘘つかないんですか?」
「嘘つく前に聞く?」
今日はエイプリルフール。
アシスタントは絶対何か企んでる。
「僕は正直者だから。」
「…初めて会った時からずっと好きです。」
「え?」
「とか、どうですか?」
と彼女が背中を向ける。
…冗談に思えなかったよ。
♯18(2022/04/11)
「先生、お花見しませんか?」
「いい天気だね。でも…」
締切の日付を見てため息をつく。
「そう思って…」
アシスタントが鉢植えの花を飾り始めた。
「いい香りだね。」
「…それだけですか?」
「何?」
「ジャスミンの香りには催淫作用があるって…」
…持ち帰らせよう。今日中に。
♯19(2022/04/13)
「先生、柚の花言葉知ってます?」
アシスタントはジャスミンを僕の目の前で撫でる。
「…知りません。」
「“汚れなき人”です。」
「へぇ…」
「先生らしいペンネームですね。」
「…考えたのは君のお姉さんだから。」
彼女の目が潤んだ様な気がしたけど、
僕は原稿に目を伏せてたから…
♯20(2022/04/18)
「先生、お荷物が届いてますが?」
「誰から?」
「…先生のお兄様です。」
思わずペンを落とす。
「…“厄除けお面”だそうです。」
「…また怪しげな物を。」
「じゃあ、お礼の電話しますね。」
「何で君がするの?」
「未来のお義兄様かも知れませんし。」
…もう、勝手にしてくれ。
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