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【140字小説】とある先生とアシスタントの日常♯31~35

♯31(2022/07/25)

「先生、『鴉の濡羽色』ってどんな色ですか?」
「…青みがかった艶やかな黒かな。」
「時々教授が私の髪をそう言うんです。」
「褒められてるんだよ。」
「鴉の羽に似てます?」
「ん?」
「よーく触ってよーく見ないと分かりませんよ?」
と髪を近づけてくる…
…顔の方が近い、近い!


♯32(2022/08/16)

「先生、どれ食べます?」
アシスタントがカップアイスを並べる。
「チョコ。」
「はい。」
僕にあーんする気だ。
「…自分で食べます。」
「ゆっくり食べないと頭痛が…」
「…気をつけるから。」
「大変!スプーン一本しか付いてないです。一緒に食べないと!」
…いや、おかしいでしょ!


♯33(2022/08/31)

「先生、花火しませんか?」
「いいね。夏も終わりだし。」
外に出ると、早速アシスタントが線香花火に火をつけようとする。
「…つかないですね。」
「どれ?貸して。」
彼女が持っている線香花火に手を添える。
「…何か、キャンドルサービスの練習みたいですね。」
…本番はありません。


♯34(2022/10/01)

「先生、違い分かりますか?」
コーヒーを飲む僕にアシスタントが聞く。
「豆変えた?」
「集中力が高まる香りです。」
「…締切前だしね。」
「もう一つ変えてます。」
「何?」
「バニラを加えました。」
「へぇ…いい香り…」
「コーヒーと私に一滴ずつ。」
…って、嗅がないからね!


♯35(2022/10/31)

「先生、お菓子くれないとイタズラしますよ?」
魔女の仮装をしたアシスタントだ。
「はい。」
用意していたお菓子の袋を出す。
「イタズラ出来ないね。」
勝った!
次の瞬間スッと近づいてきた彼女の唇が…
「イタズラじゃないから大丈夫です。」
…柔らかかっ…
いや、大丈夫じゃない!



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