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【140字小説】とある先生とアシスタントの日常♯6~10

♯6(2022/02/04)

「先生、少し遅れてもいいですか?」
アシスタントから電話だ。
「いいけど、珍しいね。」
「…今日は長い夜になりますから、少し準備を。」
「…え?」
「先生!」
突然電話の声が野太くなる。
「締切の連絡無視やめて下さい!直接伺います!」

…今日は寝かせてもらえないな。


♯7(2022/02/04)

「先生、コーヒーいれましょうか?」
アシスタントが立ち上がるのを、編集者の刈谷が止める。
「ミキさん、もう遅いしあがって下さい。僕がやりますから。」
「…では、お疲れ様でした。」
…パタン
「…先生、今閉まったドアって…」
「…」
今、寝室のドアを開ける勇気は僕には無い。


♯8(2022/02/13)

「先生、お疲れですか?」
アシスタントが熱いコーヒーを置いた。
「君がいると眠れません…」
「…盗まれたら困る物でも?」
「…からかってるね。」
「では、逆にプレゼントします。」
と、僕の頬に軽くキスを落とした。
「女子大生のキスは貴重ですよ。」
…起きてても奪われるのか。


♯9(2022/02/14)

「先生、甘い物は好きですか?」
「…甘党です。」
「知ってます。」
と、綺麗なラッピングの箱を渡される。
中身は「義理」と書かれたハートチョコ。
「ハハハ…」
「食べないんですか?」
促され箱から取り出すと隠れてた部分に
“だと思います?”
とチョコで書いてある。
彼女は笑顔だ…


♯10(2022/02/19)

「先生、綺麗ですよね?」
「何が?」
「“早乙女柚人”って。」
「ペンネーム綺麗って…褒めてる?それ。」
「綺麗は褒め言葉です。」
「…どうも。」
「私の事も褒めて良いですよ。」
「仕事が丁寧で優秀です。」
「…綺麗って言ってくれないんですか?」
…そんな目で見られても困ります。



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