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【140字小説】とある先生とアシスタントの日常♯41~45

♯41(2022/12/16)

「先生、どうしたんですか?」
もう“元”になったアシスタントの声は落ち着いている。
「…ごめん。」
「…大丈夫ですから。」
電話越しの声が最後だけ震えた気がする。
「…奈々香に強制されたんじゃないよ。」
「…はい。」
「僕の今の気持ちを聞いて欲しい。」
僕の声の方が震えてるな…


♯42(2022/12/17)

「先生、先に聞いていいですか?」
「…うん。」
「今から言う事は、“先生”として?“義兄”として?」
彼女の言葉にゴクリと唾を飲み込んだ。
そして、ゆっくり息を吐く。
「…神波龍二としてです。」
「…」
今君がどんな顔をしてるのかは分からない。
「君を泣かせたままにしたくない。」


♯43 (2022/12/18)

「先生って呼んでるのいつからだろう?」
「…アシスタント始めて1ヶ月位です。」
「前はお義兄さんだったよね。」
「…私と姉の声は似てるから…時々辛そうに見えて…」
「…だから、か。」
「…」
「でも、あの時僕は…」
スマホを握る手に力を込めた。
「…君がいてくれて救われた。」


♯44(2022/12/19)

「…先生?」
途切れた僕の声に彼女の声が重なる。
「…上手く言えないけど、最後まで聞いて。」
「…はい。」
「僕は家族が兄しかいないから、離婚しても『義兄さん』って呼んでくれて複雑だけど嬉しかった。」
「…」
「…兄でいたいのに、キスを受け入れてる僕を僕が許せなくて…」


♯45(2022/12/20)


「先生、私すごく悲しかったんですよ?」
「うん。」
「…勢いとか雰囲気でキスした訳でも無いんです。」
「…分かってる。」
「ハッキリ言葉にしてないのに、先生は分かるんですか…?」
「う…」
それを言われると…
「…好きだからキスしました。」
…随分ハッキリ言ってくれたなぁ




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