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【140字小説】とある先生とアシスタントの日常♯36~40

♯36(2022/11/09)

「先生、どういう事ですか?」
アシスタントが珍しく怖い顔をしている。
「…今日で契約終了。」
「先生、また締切前に空腹で倒れたり、取材に行ってカメラ無くしませんか?」
「…それは困るんだけど。」
「…キスしたの怒ってるんですか?」
…キスされて怒ってない自分に怒ってるんだ。


♯37(2022/11/11)

「せーんせ、どういう事?」
…声はそっくりだが彼女はアシスタントの姉であり元妻だ。
「…奈々香に関係ない。」
「妹が泣いてるんだよ!」
「…」
何も言えない僕にそっと奈々香が赤い箱を差し出す。
「これで妹とポッキーゲームしたら皆ハッピーじゃない?」
…今そのノリは笑えません。


♯38(2022/12/04)

「先生のままでいいの?」
「ん?」
アシスタントが辞めてから毎日の様に彼女の姉奈々香が訪ねてくる。
「私と龍二はダメだったけど、妹とはうまくいくかもだし。」
「…僕にとっては、今もかわいい義妹なんだ。」
「中学生の義妹に寝てる隙に唇奪われたくせに~。」
…それ、僕知らない。


♯39(2022/12/12)

「先生でいられなくなった?」
奈々香が意地悪そうに笑う。
「…そんなに前にキスした事言われてたの?」
「違うよ~。私が目撃しちゃったの。」
「は?」
「…安心してよ。離婚の原因それじゃないから。」
「…」
「本気で答えを出す時が来たんじゃない?」
…僕に出せる答えなんて…


♯40(2022/12/15)

「『先生』って壁作って逃げてる?」
「…」
「龍二は昔から“はっきり言ってくれないと分からない”が口癖。」
「察するのが苦手なんだよ…」
「女も来る者拒まずで最後は皆に『最低』って言われてた。」
「…反省してる。」
「…私達に『最低』なんて言わせないで。」
…その言葉は重い。



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