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【140字小説】とある先生とアシスタントの日常♯26~30

♯26(2022/06/28)

「先生、似合いますか?」
アシスタントが水色のスカートを跳ねる様に広げてみせる。
「うん、似合ってる。」
「ちょっと来て下さい。」
手招きされるままに入口の姿見の前に立つ。
僕と彼女が並んで映る。
「…何?」
「スカートより似合いませんか?この二人。」

…今僕の顔見ないで。


♯27(2022/07/07)

「先生、何お願いしますか?」
アシスタントが短冊を貰ってきた。
「…僕は健康第一で。」
「…じゃあ、私も先生の健康って書きます。」
「自分のお願いは?」
「私のお願いは先生しか叶えられないので、直接お願いします。」
とボールペンで僕を指す。
…叶えられる範囲でお願い。


♯28(2022/07/12)

「先生、夏の予定は?」
アシスタントがカレンダーを笑顔で見ている。
「…大人に夏休みはないよ。」
「私と毎日会えますよ。」
「…若者はもっと夏を満喫して。」
「…課題があるので。」
と、レポート用紙を取り出す。
“夏は本当に恋に陥りやすいのか?”
…君は普段何の勉強してるの。


♯29(2022/07/17)

「先生、私って必要ですか?」
「また、急だね。」
「小説家にアシスタントって聞いた事無いって友達が…」
「…痛いとこ突くね。」
と、コーヒーを一口飲んだ。
「…あの時の僕には必要だったんだよ。」
「…私じゃ無くても良かった?」
…と言うより、君で良かった。とは口に出せない…


♯30(2022/07/22)

「先生はいつもので、お姉ちゃんはカプチーノね?」
アシスタントが上機嫌で飲み物を用意する。
今日は新刊のコメントを書いた件の礼に来た彼女の姉もいる。
「妹とうまくやってる?」
「…僕達よりはね。」
「私の親、龍二お気に入りだから結婚したら喜ぶよ。」
元妻のお前が言うなよ!



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