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【140字小説】とある先生とアシスタントの日常♯51~55

♯51(2021/12/26)

「先生、今から行ってもいいですか?」
「…家に?」
「はい。」
再びアシスタントとなった璃々香ちゃんがにっこり笑う。
「…君がいなかったから汚いよ。」
「分かってますよ。」
「…それに…」
「大丈夫です。勝負下着じゃないので襲いませんよ!」
…何だか寒気がするから解散で。


♯52(2023/01/01)

「先生、何ですか?」
僕が出したポチ袋をアシスタントが怪訝そうに見る。
「…はい、お年玉。」
「…子供じゃないです。」
「まだ学生さんでしょ。」
「じゃあ、私からも。」
彼女がポチ袋を差し出した。
「何これ?」
「姉からのお年玉です。」
“かわいい義弟へ”。
…僕は一応先輩だぞ。


♯53(2023/01/12)


「先生、開けなくていいんですか?」
玄関に大量に積まれたダンボールをアシスタントが指差す。
送り主は“神波虎一”
「…帰国する兄の荷物預かってるだけだよ。」
「先生、準備してきます!」
「え?何の?」
「え?顔合わせのご挨拶なら普段着じゃダメですよね?」
…本当にクビにするよ?


♯54(2023/02/01)

「先生、いいですか?」
「…うん。」
そっと目を閉じてアシスタントに顔を近づける。
カシャ…
「…兄さん、勝手に写真撮らないで。」
「つい、カメラマンの血が騒いで…」
「…チャンスだったのに。」
と僕の目薬をアシスタントが握りしめる。
…いいから早く目薬差して!


♯55(2023/02/14)

「先生、美味しいですか?」
今年のバレンタインは手作りのケーキ。
「美味しいよ。」
「…彼女の事も美味しく…」
「…思ってない。」
兄のカメラを手で塞ぐ。
「俺は真実を撮るプロだよ?」
「…兄さん動物専門カメラマンだろ?」
「私は美味しく頂かれたいです。」
…ケーキだけで十分。



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