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【140字小説】とある先生とアシスタントの日常♯21~25

♯21(2022/05/05)

「先生、何してるんですか?」
床に椅子とマーブルチョコと一緒に転がっている僕をアシスタントが見下ろす。
「…勢い良く開けたら僕まで勢いが…」
「そんなだからバツイチなんですよ。」
倒れたままの僕の鼻先をチョコで突く。
「…それは関係ないです。」
…とは言い切れないけど。


♯22(2022/05/13)

「先生、B型ですよね?」
アシスタントの手には僕が連載している雑誌。
占いコーナーを見ているようだ。
「今月は好調みたいですよ。」
「へえ…」
「私もBなんですよね。」
「…あれ?Aじゃなかったっけ?」
「ホントはCくらい欲しいんですけど。」
あれ?血液型の話だったよね?ね? 


♯23(2022/05/23)

「先生、今日はキスの日って知ってます?」
「日本で初めてキスシーンがある映画が公開された日だって。」
「そうなんですか?」
「あんまりロマンチックじゃないよね。」
「…例えばこんな風に…」
と顔が急に近づいた。
驚いて目を閉じる。
「…してもいいって事ですか?」
…ダメです。


♯24(2022/06/07)

「先生、苦しくないですか?」
アシスタントが僕のネクタイを結んでいる。
知人の受賞記念パーティーの為久しぶりにスーツに袖を通す。
「ごめん、こういうの苦手で。」
「いえ、新婚さんみたいで楽しいです。」
「…そうですか。」
「龍二さんって呼びましょうか?」
…先生で結構です。


♯25(2022/06/25)

「先生、質問いいですか?」
アシスタントが僕の新刊を読んでいる。
「なぜ最後別れちゃうんですか?」
結末が納得いかないらしい。
「…主人公達は20代では別れるけど、10年後には新しい物語が始まるかもね。」
「…私と先生の10年後も?」

…40のおじさんなんて忘れて幸せになってよ。



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