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大人の一年はあっという間に

「トウコは仕事しすぎだよ」と彼にも夫にもよく言われるけれど、そうしてるほうが気が紛れる。でも、この「忙しいほうが気が紛れる」みたいなのって、感傷的すぎるなーと思う。

それもこれも、時間が出来ると、つい彼のことを考えてしまうからだ。それ自体は幸せなことのはずなのに、「早く会いたいねえ、」と言えない状態が続くと、思いを馳せてるのが寂しいことに思えて、その寂しさに絡め取られそうになる。よくない。

不倫には、“ラリ期”ってものがあるらしい。言葉通り、罪悪感やリスクを忘れるくらい互いに盛り上がったり、恋愛に取り憑かれて周りが見えなくなるような沼ってる状態のこと、と。

3か月とか半年続くことが多い、とも書いてあった。私と彼はまだ一年未満の付き合いだけど、そういうのよりも、すぐ慈愛みたいな気持ちに移行した。「ちゃんとご飯食べてるかなあ」「髪乾かして寝ろよ…」みたいな感じ。そうするとつい、連想ゲームみたいに、隣で横になってる時に眠そうにこっちを見る二重とか、電車にドドっと人が入ってきた時に、少しだけ腰の辺りを引き寄せて避けてくれるやさしい手とかを思い出して、ぼうっとなる。

先週は、「トウコも忙しいのに、合わせてもらっちゃって、わりいね」「好きだから、申し訳ないとか思うんだよな…」とか彼がしおらしくしてるから、「私のほうが時間の融通効くんだからいいじゃない。申し訳ないとか言ってたらいつまで経っても会えないよ!」と言って、車を飛ばして、ほんの少し会えたのだった。

婚外恋愛を始めてから、1か月が、半年が、ものすごーく長く感じられた。でも、本当は大人の一年はあっという間なことを思い出す。仕事を始めてずいぶん経つけれど、年々早く過ぎていく。予算に追われ、締切に追われ、後輩たちの面倒に追われてると、どんどん季節が変わっていく。

タイムリミットもないはずなのに、悠長に構えてもいられないのはなんでだろう? 大人の毎日は大きな変化がないけど、育ち盛りな子どもたちの成長を目の当たりにする彼は、環境の変化も、気持ちの変化もあるんじゃないかっていう漠然とした不安だろうか。最後の最後は、楽観的な自分の性格がなんとかしてくれると信じよう。


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