見出し画像

一丁目マルシェの奇跡

そのマルシェは2019年も暮れようとしている週末に突然現れた。

いつものバス停からの通り道。

「このイチゴ。すごっく美味しいから食べてみて!」

そう言われてもらった一粒を口の中に入れて足早に家へと向かった。

家の玄関に着く頃には、

口の中でかみしめたイチゴから、

なんとも言えない力が私の体に満ち溢れ、

1日の疲れが瞬時に取れた。

私は迷わず鞄を置くと、そのままマルシェに戻って、

イチゴを買った。

夕飯作りながら一粒、一粒と、つまみ食いする私。

横から見つけて、やはりつまみ食いする家族。

「おいしい!」

「元気が出るね!」

この日から、我が家は一丁目マルシェの常連となった。

イチゴだけではない。

プチトマトなんて、もう果物としか思えない。

すべてのお野菜が濃厚で、

身体に染み渡っていくのがよく分かる。

年越して、

コロナウイルス感染拡大の世の中が突如として始まった。

外出自粛、巣ごもりの日々。

夢でも見ているかのような現実。

非日常の中、

週末のマルシェで山のように野菜を買って料理するのが楽しみになった。

プチトマト1個口に入れると広がる香りに、

生きていることを実感する。

毎週買うイチゴでジャムを作る。

部屋中にただようイチゴのあま〜い香りに。

やっぱり、生きていることを実感する。

ほうれん草やれんこん、里芋、ブロッコリー。

白菜や大根は包丁を入れた瞬間にプシュっと水が飛び散り、

もう最高。

季節は移ろい、

たけのこ、山菜。

そして、今日は大きな大きなゴーヤを買った。

今年は花見も入学の姿もなく、

いつの間にか春がすぎ、夏になったけど、

一丁目マルシェのお野菜に、

季節の移ろいも味あわせてもらった。

青空マルシェは

安心で、

つかの間のおしゃべりが、

家族以外の人との唯一の交流の場ともなり、

小さいけど大きな幸せももらった。

一丁目マルシェのおかげで、

一丁目は、

健康で幸せな三ヶ月を過ごすことができたなあ。

一丁目マルシェありがとう。

これからの季節も楽しみだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?