「パワハラ上司を科学する」を読んでみた件

 とても読みやすくて、わかりやすい本でした。売れている理由がわかります。
「パワハラはダメ」ということは、多くの人が認識していることだけど、実は誰でもパワハラをしてしまう可能性を秘めているわけです。その発生メカニズムを理解して、「おいおい、自分はなんかパワハラへ向かっているぞ」と自己認識して、方向転換する能力を身につけることは大切だと再認識しました。
 成功した人は誰しも、自分が経験してきたことを正しいと思い込んでしまう傾向にあります。そして、学んだことしか教えることができないわけで、知識だけでなく、行動に関しても同じなので、どうしても自分のやり方、正しいと思っていることを押し付けてしまいがちです。その行為に関しては悪意がないわけで、それがまた厄介。最近、謳われている多様性を重んじる社会というのは、ある意味でハラスメントを失くす社会と言えるのかもしれないなあ。
 本書には、自分がパワハラをしない方法が最後にアドバイスとして書かれています。また、途中には怒りをコントロールできるようになる方法も書かれています。不安な人、ぜひ読んでみてください。こういうのも、中学生あるいは高校生くらいで科目として学びを用意して、自分も他人も気持ちよく生きていく手段を早めに身につけた方が有意義な人生を過ごせる気がします。
 ちなみに会社と学校は組織としての目標や仕組みが違うので、大学で起こっているパワハラ(アカハラも含む)は会社で起こるパワハラと似て非なるものである気がしています。発生原因の勘違い(私は偉いんだという勘違い)というメカニズムは同じかもしれないけど、教員はより勘違いしやすい環境にあると思うし、研究室という小規模な組織における上下関係で苦しんでいる学生はかなりの数で見受けられます。先生と学生という関係性は、先生側からの意識も学生側からの意識も上下関係を生みやすいという問題もあります。とくにアラフィフ以上の世代の価値観とアラフサー以下の世代の価値観は大きく違い、そのギャップは年々開いていく一方なので、50代以上の大学教員がパワハラをしたというニュースを見るたびに、どうしたらいいんだろうなあと胸を痛めます。そして、ニュースになるのは余程の事例であり、氷山の一角であるのも確か。ニュースにはならないけど、組織の中で公にはならないけど、泣きながら相談にくる学生がいるのも事実。大事にはなっていないけど、ブツブツ愚痴を言いにくる程度にストレスを感じている学生がいるのも事実。こういう状態は、大学で享受できる本来の学びを得られないということにつながるわけです。でも、こういう状態が失くなるどころか、増えている気がする。そして、私も50代に突入し、いつ道を踏み外すのだろう…と不安でしかない。そんなこんなで、津野先生には、大学におけるパワハラに関しても科学してほしいなあ。

https://www.amazon.co.jp/パワハラ上司を科学する-ちくま新書-1705-津野-香奈美/dp/4480075348

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