さなのばくさん。

まずは一言言わせてほしい。『最高だった』

本当に、本当に、最高すぎて、悔しくてたまらない。



名取さなのイベントに参加したのは今回がはじめてではない。2019年10月20日、私は渋谷にいた。オシャレな人と街、見慣れないスクランブル交差点やハチ公を眺めながら、私は一人ビルの前に立っていた。無難な服装だけでは隠し切れぬオタク&陰キャオーラを放ちながら、どこか挙動不審になりながらも見慣れた彼女の描かれた看板の元へと吸い込まれていく。意外と小さなそのビルの5F、そこで一分間、彼女と会話するためにこの会場にいるのだ。

思えばあの一分間からずっと、心のどこかに『名取さな』という存在を抱き続けていたのかもしれない。これほどまで誰かを熱烈に、ファンとして応援していきたい、推していきたいと思ったことは今まで無かった。口下手なくせにろくな会話も用意せずに彼女と相対した私は気の利いたことなど何一つ言えることもなく、用意してきた駄長文ファンレターと引き換えに彼女からもらったのは、心の底からとめどなく湧き上がるしあわせな気持ちと『きぐみん』というニックネームだった。

冷静になってみればなんてことはない、とてもシンプルなニックネームじゃないか。そうであったとしても、彼女から貰ったはじめてのものという存在は私の中でとても大きな価値があったのだ。


ヌォンタート(名取さなのファンアートの呼称)を描くでもなく。なにかの表現をするわけでも贈り物をするわけでもなく。たくさんの素敵な気持ちを与え続けてくれる彼女に対して、負けないくらいたくさんの大きな愛を表現し続ける素敵なせんせえたちを羨みながらただ配信をみつめ、私といえばチャットやtwitterにようわからんコメントを付けるだけの日々。そんな私のような何も為せないせんせえでも恩返しができるかもしれないと思わせてくれる場所が今日、『さなのばくたん。』だった。

だったのだ。


幸運なことにチケットに当選した私は、当日現地へ行きたくても行けないせんせえ達のぶんも全力で盛り上げようと決意に燃えていた。しかし、その日が訪れることはなかった。どこかで覚悟していた。何度もそうなるかもしれないと考えていた結果ではあったものの、やはりその喪失感は簡単に取り繕えるものではなく。きっとイベントスタッフさんたちも、関係者の人たちも、せんせえたちも、もちろん名取本人も。ここに関わるたくさんの人たちが同じ悔しさを覚えたのだと思う。正直チケット代など返ってこなくてもいいとは思っていたものの、これを使って別の形で応援してほしいというコメントもあって私はチケットを払い戻した。すごく切なかった。財布が膨らむことがこんなにも悲しいことだとは思わなかった。そのお金でtwitterで話題になっていたあふれメンチチーズと、彼女が以前ドリンクバーで欲しいと言っていたメロンソーダを買った。とても、美味しかった。

私がそんなアホをして感慨に耽っている間にも彼女は次の手を用意していた。


『さなのばくさん。』


とてもにがくて、せつなくて、くやしくて、彼女らしい配信ページがそこにはあった。

ただでは倒れぬという彼女の力強さ、名取さなを全うし続けようという決意に、このまま悲しいだけの気分のままでいるのは違うのだと気付かされた。

さなのばくたん。中止の発表後、彼女のPIXIV FANBOXが更新された。それは、このイベントにかけていた熱も、名取さなとしての在り方も、そしてなによりも普段は見せない彼女自身の悔しさも込められた感情の動かされる記事だった。一番悔しい思いをしているのは他ならぬ彼女自身なのだというのに、彼女は前を向こうとしていた。


そして今日、さなのばくさん。

忘れてはいけない、今日は紛れもなく名取さなの誕生日のその日。

日付が変わった直後、配信ページもtwitterも彼女を祝う声で溢れていた。

こんなにも優しくてあたたかくて愛に溢れるコミュティーの一部になれたことが何よりも嬉しかった。誰かと好きを共有すること、推しと同じ方向を見続けることができる幸せを味わったのは孤独で陰のオタクたる私にとってははじめての経験だった。

配信がはじまる。

いつもと変わらぬ彼女、初のソロイベントが中止になってしまったという事実すらも笑い話に昇華しようとする姿勢には本当に、根性を感じた。

そしてイベントのために用意していた3Dの新衣装がお披露目された。そこにはお姫様がいた。頭のてっぺんから足の先まで、とても可愛かった。多くは語れない、語彙力が喪失したので。

そこから間もなくしてGB素材のプレゼントコーナー。彼女が本日の主役であるというのに、せんせえたちを楽しませようと色々なリクエストに応えるその姿からは、なんというか、ファンを大切に思う彼女らしさがとても感じられた。そういうところ、本当に推せる。

とっても濃厚なファンサービスを終え、3Dの体のままトークへ。イベントグッズの扱いであったり今後投稿されるイベント関連動画であったりとせんせえが泣いて喜ぶたくさんの情報が公開された。そして、イベントで発表されるはずだった新曲の発表。感情を抑えきれずに涙声になりながらも気丈に振る舞い、スタッフへの感謝の言葉を語る彼女。その思いが伝われば伝わるほど、私の中での悔しさの感情は増していった。

『PINK, ALL, PINK!』

名取さな視点ともせんせえ視点ともとれるその歌詞。彼女の精一杯を感じる歌声とダンス。

最高だった。

本当に、ピンクの海で、彼女の色で、その空間を満たしたかった。

悔しいと思う気持ちはネガティブなだけではない。誰もが望むリベンジをばくたん以上の素晴らしいイベントに。

きっと、この場に居合わせた誰もが同じ方向を見ることができた瞬間だったのだと私は願う。



ところで、私は今日夢をみた。

詳細な経緯は省略するが、そこには小さなステージながらも涙を浮かべながらも満面の笑みで歌って踊る名取さなの姿があった。夢の中でもさなのばくたん。は中止、そんななか現地とは異なる舞台ながらも精一杯にパフォーマンスをする名取の姿は、今日の配信の景色とどこか似ていてとても目頭が熱くなった。

予知夢なんて大それたものではなかったのだろう。でも、いつかの景色を空想することくらい、でっかいラブに溢れる最高の場所を夢見ることくらいは許されるんじゃないかと私は思う。


最後に、イベントスタッフのせんせえ、関係者各位さま、名取さなにラブを届ける同胞たるせんせえたち、そして名取本人にむけて。

精一杯の感謝の気持ちと次へのリベンジを誓って、ありがとうという言葉を贈らせていただきます。


名取!!!!誕生日おめでとう!!!!愛してるぞ!!!!!!


   2020/3/7 木組みとうふ


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