東京都高校駅伝2022
今年も都駅伝が無事に開催されました。早実は5位で、2年ぶりに関東駅伝への切符を手にしましたが、目標としていた優勝、都大路出場には届きませんでした。
1区 吉倉ナヤブ直希② 区間3位
先頭はペースの上げ下げが激しい展開になりますが、吉倉は過剰に反応せず、落ち着いて先頭集団の後方でレースを進めます。
その後、鈴木と平井璃空(拓大一)が飛び出し、吉倉は尾熊迅斗(東実)と区間3位争いを繰り広げます。
残り300mで北爪先生から「お前にはスピードがあるんだから」と声がかかります。尾熊もU18ジュニアオリンピック3000mで2位に入るスピードを持つ東実のエースですが、吉倉は彼に勝ち区間3位。先頭と18秒差の好走でした。
昨年も1500mでは関東新人で優勝するなど、実績を残してきましたが、今年は10km区間を任されるまで長い距離に対応できるようになりました。来年、早実記録(14'04"54・宍倉OB)の更新に期待がかかります。
2区 浅川京平② 区間8位
記録は昨年を下回り、本人も悔しいと思います。ですが、彼は果敢に他校のスピードランナーに挑みました。1.5km地点を寺田向希(800m久我山記録保持者)とほぼ同タイムで通過。未だ経験のない8分40秒台を狙えるペースでした。
冬の頑張り次第では都総体で表彰台に上る力を彼は持っています。チーム状況によりますが、私個人としては来年も2区を走って今年のリベンジを果たしてほしいです。
3区 小平敦之③ 区間5位
この区間で駒大の中島優太(和田ちゃんの中学時代の後輩)に抜かれてしまいますが、前を走っていた拓大一が途中棄権したこともあり、5位のまま襷リレー。大崩れはしませんでした。
昨年、17年ぶりに関東駅伝を逃した早実が復活できた理由を、5区を走った鈴木貴広が話してくれました。「全部小平キャプテンが作ったチームです。」彼がキャプテンとして取り組んだ数々のことが、この1年で着実に身を結んでいきました。上手く言葉に表せないのですが、都駅伝での彼の走りは、「中学時代から全国レベルで活躍する、箱根駅伝を目指す選手」としては悔しいものだったかもしれません。しかし早実のキャプテンとしては立派な走りでした。
4区 幸田英彦③ 区間5位
8.0875kmの単独走でした。荒川河川敷は平坦な直線ですが、実はかなりの難コースです。5km区間ではどの選手も5000mの持ちタイム+30秒はかかってしまいます。そんな難コースを彼は最後まで目線を下げることなく、25分台で走り切りました。
都駅伝という大舞台にも関わらず、彼の左手には「日々前進」と書かれていました。怪我でマネージャーの仕事をする期間も長かった彼の、3年分の思いがつまった言葉だと思います。
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レースは今年も4区で動きます。先頭を走るのは藤尾岳穂(久我山)。インターハイ3000mSCで9位に入った実力者です。その藤尾を、襷をもらった時では1分11秒後ろにいた岡村享一(城西)が猛追します。区間タイ記録の走りで差を3秒まで詰め、会場の雰囲気を変えました。
5区 鈴木貴広② 区間6位
目標の8分45秒には大きく届きませんでした。残り600mの地点に私はいましたが、チームメイトの声かけを受けても切り替えができず、苦しい走りでした。
練習熱心な彼ですが、本番で出し切れない点が彼の課題です。私がそうだったのですが、都駅伝では普段の弱点(本番に弱い、向かい風に弱い、単独走が苦手など)がいつにも増して現れ、結果に影響します。来年のトラックシーズンでどれだけ結果が残せるか。駅伝を走る上でも大事になってくると思います。
チームメイトからは「ロペス」と呼ばれています。大会などで「ロペス頑張れ」という声が聞こえてくると怪訝に思うかもしれませんが、その時はぜひ、一緒にロペス(鈴木)を応援してあげて下さい。
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久我山と城西の優勝争いは佳境を迎えます。久我山の5区は添田陽大。お父さんは国士舘大の添田正美コーチ(前駅伝監督)です。対する城西は2区区間記録保持者の大室杏夢を5区に持ってきます。並走して迎えた2度目の折り返し地点で、大室がロングスパートを仕掛けます。城西はトラックシーズンに全員が複数回1500mのレースに出場し、スピードを鍛えてきました。大室はラスト500mで添田と8秒の差をつけ、悲願の初優勝を近づけました。
6区 武田知典③ 区間7位
前が見えない位置だったことに加え、ここにきて吹き始めた風が彼を苦しめましたが、粘りの走りをしました。今の3年生に共通して言えることですが、彼らは大崩れをすることがありません。去年よりもポイント練習の質が上がったことはもちろん、特に武田の場合は陸上を始めて3年が経ち、走るコツを掴めたことも大きかったのかもしれません(フォームも昔より大分良くなりました)。
都駅伝前に練習にお邪魔した際「14分台出したいんですよね」と言っていましたが、先日の東海大記録会でついに14分台の記録を出しました。おめでとう!小刻みにPB更新を繰り返していけるのも、彼の長所の一つです。
7区 山田晃央① 区間6位
前後のチームともかなりの差が開いていて、順位はほぼ決まっている状況でしたが、堅実に自分の走りができたのではないでしょうか。楽そうに走る(速そうに見えない)あたりが、コモディイイダの小林宏輔選手に似ている気がします。都総体1500mで当時高1歴代8位(3'51"05)のタイムを出した彼には将来、小林選手にも負けないスピードランナーになってほしいです。
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城西vs久我山の優勝争いはアンカー勝負にもつれ込みます。久我山は6区で花井日友雅が城西の林春空(国体3000m東京都代表)をとらえ、再度首位に立っていました。久我山のアンカーはインターハイ3000mSC3位の本間創。4秒遅れでスタートした城西の鈴木愛音はすぐに追いつき、2人はしばらく並走します。
勝敗は3km付近で決しました。鈴木のペースアップに本間がついていけず、その差は30秒以上に開きます。鈴木は14'44の区間新記録。城西が初優勝で都大路への切符を掴みました。
過去最強のチーム
私は今年の早実は間違いなく、過去最強のチームだったと思います。実際、その後の関東駅伝では2時間9分27秒で襷を繋ぎ、北爪先生が長距離を担当して以降で最速のタイムを出しました。先述の通り、小平が皆を一つにまとめ、新しいチームを一から作り上げてきた成果です。
ただそれでも都大路へは行くことができませんでした。久我山の連覇を途切れさせたのは早実ではなく、強化4年目の城西でした。厚い選手層に加え、春先からの徹底したスピード強化が特に3km区間での力走に繋がりました。長距離部員が15人ほどしかいない早実は、ある意味スタート前から厳しい戦いを強いられていたといえます。
ただ当の選手達はそんなことは微塵も気にしていなかったでしょう。彼らが見ていたのは優勝であり、都大路であり、決して他校ではありませんでした。外部の私にも伝わってきます。彼らは過去のどの代よりも真剣に、本気で都大路を目指したのです。
関東駅伝の5区は都駅伝で出走できなかった平林瑞己が任されました。トラックでのPBを上回る8'56で走り切り、48チーム中の区間15位。インターハイ路線に出るチーム内の3人にどの種目でも選ばれたことがなかった平林にとって、最初で最後の大舞台は引退レースとなりました。一般入試で早実に来てもここまでやれるということを、幸田と平林が3年間の努力で示してくれました。本当にお疲れ様。マジでかっこよかった!
卒業から時間が経つにつれ、OBの考えはチームの実情から離れていきます。なので今年もこういった記事を書くか、正直悩みました。でも書かずにはいられませんでした。後輩達へのリスペクトを伝えたくて、気づけば4000文字の長文になってしまいましたが、最後に言いたいことはもちろん一つです。今年も言います。早実こそが最高のチームです!
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