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1.デキないオンナ

ピンクの作業着。
なんで私がこんなダサい作業着を着ているんだろう・・・。

田舎の会社は7時40分始業。
出張も、工場が田舎にあるのも前職時代から慣れていた。
それにしても丈が短い紺のダボパンも許せなければ、
私の肌には到底似合わない薄いグレーピンクの作業着が居心地悪い。

ここは福井県のとある山間部にある会社。
私は本社勤務だが、ここにある業務を本社に移管させることが決まり
それの引継ぎのために長期出張をすることが入社後最初のミッションだった。

とはいえ、私は「一般職」で転職したから大した仕事でもない。
きっと面白くもない事務仕事を、事務員さんとして9時5時でこなせばいい。
仕事というものでアドレナリンを出す必要のない職制を選んで入社した。


だから、これでいい。
もう私は、これでいい。
大人しく定年までこの会社でぬくぬくとやっていくんだ。
そのうち京都で結婚して、…できなくても、、、
それが母親を守っていく最良の選択肢なんだ。

同期入社は8人だった。
明らかに「女子っぽい」グループと「おっさんぽい」グループに分かれた。
私はというと、言うまでもない。

その中でも私は最年長だった。
厳密にいうと、上から二番目だった。27歳。
当時は転職するのに最終リミットと言われた年齢。

下は23歳。大して社会人経験のない子も同期として仲間になった。

前職がどちらかというと女性が少ない会社だったため、
性別比1:1くらいなんじゃないか?という女子の配分に反吐が出そうになった。

オンナは嫌いだ。
しゃべる事がない。どうせ私と気の合う人なんでいないんだ。
興味のあったことももうここにはない。
何より、当たり前のようにいつも支えていてくれた父親がいない。
こののんきな女子たちはどうせ恋愛話にしか興味がないのだろう。

私は母親を背負っているんだ。

一回で聞けばわかるような業務をただ引継ぎ、
要領を得ない引継ぎ方をする先輩社員にイライラしながら、
面白くない仕事を高速回転で処理すること。
「どや?違うやろ?」と上司や周りに見せることだけがそれからしばらくの間、私の心のよりどころとなった。

褒められたいのではなく、
ただ、「一緒にしないでね」を表現するために。

足つぼマニアの研究室の室長。 足指のトラブルに悩むお客様を7,000名以上見てくる中で、 心理的なものが足指にリンクするのではないか?と 新たな学びをはじめる。