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#9 食育のヘビ話

続・孵化待ちの間に餌の話。

◆教育方針

 生物飼育の醍醐味が給餌タイムだという事は前回述べた通りですが、食わない個体ってどうするの?というのが今回の内容です。
野性のヘビの生態としては卵を沢山産み、大半は成長途中で食われたり死んだりして一部が大人になって生き延びてきたタイプの生物です。
 人工繁殖して飼育すると、食われることも無く大量に生きるので、本来だと弱くて自然淘汰される個体までもが生き残る事になります。
 ヘビの飼育難易度はとにかく餌食い。哺乳類だと通用する「腹が減ったら取り敢えず手を付ける」という概念が無く「食わずに死ぬ方を選ぶ」という相手です。その位、餌をコンスタントに食べてくれる事は重要です。

◆不満を述べよ
 基本的には個体の反応を見て何を嫌がっているのか原因見極める所から始まります。口を大きく開けるのがしんどいのか、咥えた時に口に重さを感じるのが嫌なのか、呑み込む際に手足が口の端に引っ掛かるのが嫌なのか、餌だと認識できない温度・ニオイなのか、元々「餓死する事を選ぶ!」という武士の様な心意気を持った頑固な個体なのか…
それぞれ反応を見ながら個別対応で色々と試してみるしかありません。
 ただ、食わなければ死んでしまうので、何週か食わない時点で自力で餌を食わせる事を諦めて強制給餌へと変更。
自分の所ではネズミの尻尾を与え、まず消化器を動かす事から始めます。
「自分から率先して食べないけれど口に突っ込めば自分で呑み込んでくれる個体」はかなり良い。この辺はまだ補助気分。
とにかく吐き出す事しか考えない個体の場合は呑み込ませた後に餌を外側から指で体を押すことで強制的に胃まで送り込みます。この辺りが介護気分。
ただ、ここから吐き戻してくる個体は正直ツライ。こちらの心が折れる。

餌が止まる所が胃。餌の位置が外から見える。

◆弊害
 人間でも吐くと胃酸で食道が荒れたり、繰り返せば歯が溶けるとか起きますが、ヘビでも同じく食道にダメージが残ります。そこそこ大きくて体力の有る個体で有れば1回餌を抜けば回復するし、食欲が戻るまで待ってから再度餌を与えても大丈夫ですが、孵化してしばらくのチビサイズの場合はそうもいきません。
 そもそも食わなくて体力が無い上に、食道がダメージを受ければ一度の吐き戻しが致命傷となってしまう事も…

◆結局…
 こちらが頑張った所で餌を消化できずに死んだりする個体は出ます。その場合は元々が生き残る強さを持っていなかったのだな、と諦めますが往々にして弱い個体ほど綺麗で…悔しい限り。

 昨年生まれたヘビで、ずっと半分にカットした餌を胃まで送り込み
カットしなくても送り込める様になり、咥えさせたら自分で食べる様に。
その後はマウスを口元に押し当てたら口を開いて食べる様になってきたので、1年近く掛かりながら少しずつ成長している個体が居ます。
売るタイミングを逃したので、自分の手元で育てているのですが、これはこれで謎の達成感があります。
 自発的食べている方が消化効率が良い様で、一気に成長速度も速くなるので出来る限り食べる条件を見つけてあげたいです。

 レインボーボア達は「食べる時の体制」を変えたら食いつきが良くなりました。習性が分ってからは、棚とか適当な高さの棒に引っ掛け、ぶら下がった状態にしてから餌を見せる様にしています。
自発的に口を開けない場合は咥えさせてから引っ掛けるのでも可。
割と高確率で自主的に呑んでくれます。
(ボールパイソンの給餌でも同じらしいのでボア・パイソン系の習性?)
自然下で枝に擬態して下を通る生物を捕食していた名残なのかな?という気はしますが真相は不明です。

ぶら下がり給餌

 ネズミ食のヘビだけでもここまで苦労するのにこれにまだカエル食や魚食のヘビもいますから…飼育している方々には尊敬するしかありません。
タマゴヘビって卵を殻のまま呑み込んで、殻だけ器用にぺッと吐き出すヘビが居るのでそいつは飼ってみたいと思っています。
あ、でもチビの世話大変か…(*シリンジで卵黄を飲ませます)

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