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ボードゲームにおけるカードドラフト時の考え方 ~アナログゲームマガジン~

こんにちわ、とどちゃまです。
ついに、『アナログゲームマガジン ゲーム攻略編』が始まります。

今回僕が書いていくのは、近年のボードゲームにおいてシステムとして組み込まれていることがある「カードドラフト」。その「カードドラフト」における「カード選択の考え方」についてとなります。ただ、文量が多くなりそうなんで、何回かにわたってお届けしていきます。

みなさん、「カードドラフト」があるボードゲームをやった際に、一度は思った事があると思います。

『何を取ればいいんだろう?』

至極、最もかつ率直な意見だと思います。初めてやるゲームで見た事もないカードのどれを取ればいいのか、わかる人は普通いません。そして、この疑問を解決し最終結論に至るためには、かなりの量のプロセスが必要です。そこには、そのゲームをたくさんやり、いろいろなカードを試してみて、いろいろな相手とプレイしてみて……、と解決するにはとても多くの時間、そしてやりこみが必要となります。

そんな皆さんに、ドラフトの際にどんな事を意識したらよいのか、やりこみ前からできる攻略は何かないのか、といったところをこの記事の中で示していけたらなと思います。

カードドラフトとは

まずは「カードドラフト」というものがどういうものかおさらいしておきましょう。

「カードのドラフト」とは、複数枚のカードを全プレイヤーに配布し、その中から一定の枚数を手元に残す。余ったカードを隣のプレイヤーに渡し、逆隣のプレイヤーからその人が余らせたカードを受け取る。受け取ったカード群から再び一定枚数を手元に残し隣に渡す。これをカードがなくなるまで繰り返す。といったものとなります。

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「カードドラフト」が組み込まれているボードゲーム

この、ドラフトというシステムが組み込まれているボードゲームとして代表的なゲームといえば、『アグリコラ』があります。このゲームはワーカープレースメントとして有名ですが、そのゲーム中で使うカードを、開始時にドラフトでピック・確保していく形をとっています。

ドラフトという仕組みを、組み込むどころかゲーム全体の基本システムとしている代表的なゲームが、『世界の七不思議』『イッツ・ア・ワンダフル・ワールド』などです。

ドラフトに慣れてる人慣れてない人

では、これらの「カードドラフト」に臨む際、どういった事を考えてドラフトを行っていけばよいのでしょうか。ドラフトというものに慣れていないプレイヤーは、当然ここが大変です。なんせ、ドラフトがあるゲームのカード枚数は、慣れていない人にとっては尋常じゃなく多く感じからです。

ところが、この「カードドラフト」というものに慣れている一団が、世の中には存在します。それはカードゲームのプレイヤーです。トレーディングカードゲームの中には、このドラフトというシステムで遊ぶ事を前提に作られている作品もあります。

例えば、『マジック・ザ・ギャザリング』の商品には、『ドラフトブースター』という商品があります。これは、「カードドラフト」という遊び方ができるように設計されているという商品であり、『マジック・ザ・ギャザリング』では、「カードドラフト」の大会が、20年も前から開催されてきた実績があります。そういったゲーム環境だということです。

そういうわけで今回、この記事で提示していくのは、カードゲームの「カードドラフト」において有効だった考え方を、ボードゲームの「カードドラフト」にも利用していこうじゃないかという事になります。

カードドラフト思考リスト

早速ですが、「カードドラフト」を行うに際し、準備から実践までの間にどういった事を考えたり用意してるのかを、以下にまとめておきます。項目を見ただけではよくわからないと思いますので、さらにその項目ごとに個別の掘り下げをしていきたいと思います。

これらの中には最初から実践できるものもあれば、できないものもあります。最初からできないものは、先に書いた「時間がかかるプロセス」=やりこみ要素という事になります。逆に言えば、そうでない部分が最初から実践可能な、攻略ポイントという事になります。

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事前準備

「カードドラフト」に臨む際、事前にできる準備というものはだいたいが「やりこみ要素」となります。初めてそのゲームに触れる時には絶対にわからないものばかりという事です。「ドラフト強くなりたい!」という人は、先に示した表の優先度の★が多いほうからマスターしていくことをおススメします。

それでは、項目ごとに掘り下げていきましょう。

ゲーム環境を把握しておく

ゲーム環境を把握しておくというのは、ゲームシステムやエキスパンションの有無など、のちにカードの強弱を判断するための情報を把握しておきましょう、という事です。

例えば『アグリコラ』において、
 ・旧版なのかリバイズド版なのか
 ・拡張はどこまで入っているのか
 ・何人でゲームを行うのか

などといった要素は大きな状況の違いとなります。この状況の違いによって、カードの強弱や強いピックのパターンなどが大きく変わる場合があります。例えば、『アグリコラ』旧版の「乳母」というカードは、十分に強いカードではありますが、5人ゲームよりも4人ゲームの時のほうが強力です。

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こういった情報を整理しておかないと、ドラフトをしている最中に誤った強弱判断をしてしまいます。

強いカードは何かを知っておく

ゲーム環境を把握したところで、今度はその環境にあった強いカードを知っておく必要があります。これはゲームの勝敗に大きくかかわってくるポイントなので、やりこんでいく際には一番最初に手をつける要素になると思います。

『世界の七不思議』において、第一世代の1手目にピックしたいカードといえば、「『1金2資源』の産出カード」です。このゲームでは、不足している資源は隣のプレイヤーから2金で購入しなくてはならないため、今後一生使える資源への投資1金はあまりにも安く、際立って強いカードと言えるでしょう。第三世代のコスト感を知っていると、より強さをわかってもらえると思います。

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『イッツ・ア・ワンダフル・ワールド』では、『リサイクル工場』が強い事で有名です。建設コストを先払いして、最初の白資源産出の前に完成させておく事で、今後のコストを大きく賄ってくれます。

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どのゲームにも当然強いカードが存在しています。それらを把握していなければ、勝てるゲームも勝てません。「カードドラフト」があるゲームにおいて、そのカードの強弱を知ることは避けて通れない「やりこみ要素」なのです。

強いピックのパターンを知っておく

どのゲームにも「勝てるピックパターン」というものが存在します。そのパターンを知っておきましょうというお話です。ですが、これは「あるカードとあるカードはコンボってる!」みたいな話ではなく、ピックしたカード全体の方向性とその構成内容についての話になります。カードゲームの場合は、「そのドラフト環境のデッキタイプ(=アーキタイプって言ったりします)は何か」という話で、これはボードゲームにも十分適用できるものです。

『アグリコラ』を例に挙げると、このゲームでのドラフトピックで強い基本的な構成は以下のようなものになります。
 ・序盤に資源や食料を楽にしてくれる職業
 ・中盤に資源や得点行動を大きく補助、加速してくれる職業
 ・終盤に大きな得点になるカードや強力なアクションスペースを優位に使用できる職業
 ・序盤~中盤に軽くプレイできる小進歩2枚程度(得点付きが望ましい)
 ・中盤~終盤にプレイできる得点付き小進歩1~2枚

このゲームは、職業7枚、小進歩7枚の計14枚をピックするのですが、強いカードというのはそれぞれ各1~3枚程度しかピックできません。ですので、それがゲーム中に過不足なくプレイしていける量を用意しておけるかが、構成の上で重要になってくるわけです。これをまあ基本アーキタイプとでも言いましょうか。

このように、「ピックしたカードが強い構成になっているかどうか」というのがこの項目の趣旨です。この例は『アグリコラ』における基本的な構成例=基本アーキタイプなのですが、そのパターンは家畜主体、小麦主体、特定の強力カード依存、といったように取りうる方向性でパターンはいくつも存在します

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この基本アーキタイプの失敗例を挙げるとすると、序盤にしか強くない職業を3枚ピックしていたり、スタプレ用小進歩が1枚もなかったり、というような事例になります。

『世界の七不思議』の強力なパターンに科学ピックがあります。このゲームでは合計18枚のカードをピックするのですが、9枚の化学カード(3種3枚)+七不思議用3枚+資源orお金4~5枚+緑or青の追加得点1~2枚、のような構成が十分な得点が稼げる構成となります。

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『イッツ・ア・ワンダフル・ワールド』は色が明確に存在し、それがそのままアーキタイプになっています。基本セットオンリーであれば、色ごとに最高の構成を覚えておけば十分でしょう。

勝てるパターンを知っておく事は、それだけで勝利に近づくというお話です。

多くの有効なピックパターンとその最終的な完成形を把握しておく

さて、先ほどは強いピックパターン=アーキタイプを知っておけという話でしたが、もう一歩強くなるためには強いだけでなく、少し劣るものも含めいくつものアーキタイプを知っておかなくてはなりません。そして、アーキタイプの存在を知っているだけではダメで、それぞれのアーキタイプにおいて一番ベストな最終構成内容を認識していなくてはなりません

これは、ドラフトというものがただ強いカードを取っていけばいいというゲームではなく、そのアーキタイプの最強構成に近づけていくようにパズルのピースをピックしていく作業だからです。

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では、なぜ強いものだけでなく次善のようなアーキタイプまで知っておかならないのでしょうか?

有効なピックパターンの強弱を把握し、環境的な各パターン許容人数を把握しておく

それは、どんなに強い勝ちパターンでも、他のプレイヤーと競合してしまえば弱くなってしまう事があるからです。

例えば『世界の七不思議』で科学パターンのピックをしているとしましょう。このゲームが5人戦の場合、もし3人も科学パターンをピックしていたら、欲しいカードが競合してしまい最終完成形に必要なパーツのカードが取り合いによって不足してしまうことでしょう。その場合、自分は最初から違うパターンのピックをしたほうが良かったという事になります。競合する最強パターンよりは、もしかしたら1人で次善パターンをピックしたほうが、勝率が高くなるかもしれないのです。

こういった考えを実践するには、それぞれのパターンがその環境において何人まで許容されるかという点を把握しておく必要があります。

『アグリコラ』旧版5人戦において、食料供給の観点に注目してみましょう。ゲームシステムで用意されている調理場は2つです。豚以上を食料供給の主たるものとしたいのであれば、調理場をゲットしなくてはなりません。そうなると「調理場の数=家畜強依存パターンの最大数」という事になるわけです。もしドラフト段階で、『羊農』『家畜飼い』『家畜追い』と同時に見かけた場合、3人で調理場争いに発展しそうなんで、次善策に回ったほうが良いのではないか、という思考に至れるわけです。

『イッツ・ア・ワンダフル・ワールド』だと色の配分などがこれにあたります。基本セットのみだと、黄緑青にしか有効な得点源がないため4人戦の時にどのように色が配分されるかとても重要です。1人で1色を担当できればよいですが、他人と被った時に被ってないプレイヤーに対して相対的に不利になってしまいます。初手に青いカードが被ってるのを見かけたら、横にある緑のカードをピックする、なんていうのも選択肢になるんではないでしょうか。

次回は

そういうわけで、「カードドラフトの考え方 事前準備」までやってきましたが、次回はついにドラフトの最中に何を考えているかに触れていきたいと思います。

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