雨音

きょう 彼がこちらを離れます
雨が迎えにやってきました
迷うことなくあちらに着けますように

お願いがあるのです

静かに
しずかに
そっと触れるように降ってください
赤子の寝息のように
このときを包んでください どうか
彼等のさいごが邪魔されないよう

それからひそかに窓をつたう
しずくを彼等にあげてください
枯れてしまった涙のかわりに
あなたの水を分けてください
あなたの水はなみだとなって
彼のからだの上に落ち
冷たさに目覚めて彼は
迎えがきたことを知るでしょう

かすかな水音に
彼の足音が重なって

待っていたよ

そう聞こえたその声は
彼のでしょうか
あなたのでしょうか


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