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鳥の国のはなし(note版)

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鳥の国は、かつて人間だったものたちがヒトの国を捨てたどり着いた場所。 ここに棲む「もとヒト」たちの日々の営みを描いた連作。 2014年6月から2019年10月までの作品をあらたに…
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#連載小説

残響

鳥の道で、誰かが呼んでいる。 鳥の王が姿を消してから、そんな噂が鳥たちの間でささやかれていた。影の鳥を葬った王が、自らも傷つき倒れて苦しんでいる声だと。 あたしに言わせりゃただの風の音だ。昔から変わらない、この季節に吹く大風のせいだ。ているのは鳥たちばかりで、もとヒトであるあたしたちには彼らの恐怖がわからない。最後まで鳥になりきれない理由はそこにあるのだろうか。風を怖がる心か、王の声を聞き取る耳か、心と耳をつなげる何かか。 鳥の王がひっそりと交代したことが知らされた。前王の