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鳥の国のはなし(note版)

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鳥の国は、かつて人間だったものたちがヒトの国を捨てたどり着いた場所。 ここに棲む「もとヒト」たちの日々の営みを描いた連作。 2014年6月から2019年10月までの作品をあらたに…
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2017年5月の記事一覧

鳥の先生

鳥の国は、いっぽんの巨大な木のなかにある。 森も湖も海も浮き島も、すべてが木のなかに存在している。 この木のどこか奥深く、いちばん枝の茂ったところに、真っ暗な場所がある。 木の枝が絡み合って、どんな鳥も高くは飛べない。 そこに迷い込んだ鳥は枝に羽を絡めとられ、死ぬまで二度と出られない。 鳥の国の伝承だ。 影の鳥が現れるようになってからは、鳥たちがもっとも怖れる話になった。影の鳥はそこから生まれるのだと鳥たちは思っている。古くは鳥籠と呼ばれていた場所だ。けれどその単語は忌むべ