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鳥の国のはなし(note版)

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鳥の国は、かつて人間だったものたちがヒトの国を捨てたどり着いた場所。 ここに棲む「もとヒト」たちの日々の営みを描いた連作。 2014年6月から2019年10月までの作品をあらたに…
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2015年6月の記事一覧

月を狩る

僕はいつまでたってもヒトだった頃の夜更かし癖が抜けなくて、それで夜の鳥たちと仲間になった。 彼らは、最初のうちはおっかなく気難しげに見えたけれど、仲良くなってみれば昼間の鳥たちより陽気で気さくだった。仕事も、昼のように見張られたり厳しい命令を受けることもない。 夕焼けの儀式を終えた鳥の国は、夜に開け渡されるまでの短い間、しんと静まりかえっている。そして完全に夜が降りたと知ると、夜の鳥たちは昼間の縛りから解き放たれて、すいすいと空に飛びだす。暗闇を泳ぐ。 満月は、夜の鳥たちの

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