落語を語る
米津玄師氏の「死神」が話題だ。
落語をモチーフにした新曲は本人の趣味趣向からか、歌詞のセンテンスから落語の要素が汲み取れたり、MVも寄席の殿堂新宿末廣亭で撮られていたりと、落語に対する強いこだわりを感じる。
僕も落語が好きだ。
故・桂米朝師匠や「笑点」くらいの知識しかなかった僕がドハマりしたのは大学生の頃だったかと思う。古典中の古典である「時うどん」を丸坊主の落語家が縦横無尽に演じている映像を観て、それまでのどんなお笑いよりも爆笑した。故・桂枝雀師匠である。
それまで落語に持っていた「格式ばった伝統」というイメージは崩れ去り、それでいて江戸〜明治の風情を感じる落語という世界にたちまち虜になった。
しかし枝雀師匠をはじめ、残念ながらこれは!と思う落語家さんは既にこの世を去られていた。数の限られた名演の記録を見聞きするばかりだったある日、「時うどん」の江戸落語版である「時そば」を、これまた縦横無尽・破天荒に演じていた東京の落語家の映像を観た。爆発的なマクラ(落語の前にする小咄や説明)で文字通り高座を転げ回り、かと思うと本編では伝統に忠実に、江戸落語らしい「粋」を描く一席。
柳家喬太郎師匠である。もうハマった。京都に来られた時の落語会にも行った。
伝統というルールの中で無難に落語家である事も出来るし、そういった方々も多いと思う。
しかし枝雀師匠や喬太郎師匠はいかにクオリティを高めるか、いかに新しい要素を組み込むか、それこそ芸術品を作るような神経と才能・ひらめきを持って落語に向き合っておられる(おられた)のだと思う。
それがお客様に喜んでもらえるという事に繋がるのは、ミュージシャンの端くれという舞台に立つ者として明白である。
落語家さん達も我々ミュージシャンと同じくして、このコロナ禍の中で仕事がままならなくなっておられるという。噺以外のコンテンツを展開する落語家さんのYouTubeも多々目にする。食わず嫌いの方は是非、触れて頂きたい。
桂枝雀「時うどん」https://youtu.be/iroPD83XulI
柳家喬太郎「時そば」https://youtu.be/oFO86i4h1b8
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