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コロナワクチンの効果・安全性について

コロナワクチンについては以前からツイッターで話をしてましたが今一度noteにまとめておきます。

コロナワクチンの開発、緊急使用承認、接種の状況

昨年、世界中で感染拡大する新型コロナウイルスに対して有効な手立てがない中で、治療薬・ワクチンの開発が急ピッチで進められました。そんな中、世界で最初の新型コロナウイルスに対するワクチンBNT162b2がアメリカの企業ファイザー(Pfizer Inc.)とドイツの企業バイオンテック(Biontex Laboratories GmbH)によって開発されました。12/02にはイギリスでMHRA(医薬品医療製品規制庁)から緊急使用承認(temporary authorization for emergency use)を、12/11にはアメリカでFDA(アメリカ食品医薬品局)から緊急使用承認を受けました。

その一週間後(12/18)、BNT162b2と同じmRNAワクチンを開発していたモデルナ(Moderna Inc.)のワクチンmRNA-1273がアメリカで緊急使用承認を受けました。アストラゼネカが開発していた DNAワクチンAZD1222も12/30にイギリスで緊急使用承認されました。これらのワクチンが昨年の12月に立て続けに緊急使用承認を受け、世の中はワクチンをなるべく早く普及させてコロナを収束させるぞという方向に進んでいます。

緊急使用承認について
緊急使用承認(Emergency Use Authorizaion)は名前の通り緊急時にいったん出す承認で本承認ではないので、緊急使用承認は出たけどその後やっぱり効果ないことがわかったり、副作用が酷かったりすると本承認まで行かないこともあります。
DNAワクチン、mRNAワクチンとは
コロナウイルスは細胞内に侵入する際、ウイルスの周りに侍らせているスパイクタンパク質を利用します。このスパイクタンパク質を標的とした抗体を体内で作らせることで感染を防ごうとするのが冒頭で紹介した3つのワクチンの共通目標です。それを達成するために注射するのはウイルスそのものではなく、DNAあるいはmRNAです。DNAワクチンではスパイクタンパク質(の一部分)を作るDNAを注射し、人の体内でスパイクタンパク質(の一部)を作らせます。異物であるスパイクタンパク質が体内にできるのでそれに対して抗体が生成されます。mRNAワクチンでは注射したmRNAからスパイクタンパク質(の一部)を作らせることで同様のことを期待します。mRNAはDNAの一時的なコピーという役割の物質なので自然分解されやすく安全性が高いと言われています。
詳細は以前のツイート参照↓

現在多くの国でワクチン接種が進められており、もっとも接種率の高いイスラエルでは国民の19%が1回目の接種を終えています(上で挙げたワクチンはどれも2回接種するタイプです)。その他、アラブ首長国連邦では10%、バーレーンでは4.9%、アメリカでは2.0%、UKでは1.9%、デンマークでは1.9%の接種率になっています。日本はまだ0%です。数値はOur World in Dataから。

コロナワクチンはどれくらい効くのか?安全なのか?

このnoteは、海外のワクチンを不用意に恐れず実際にワクチンのデータを見てみて欲しいという思いで書いているので、以下では提出された臨床試験データの中身を見ていきます。

ファイザー・バイオンテックのワクチンBNT162b2に関するデータがFDAの資料にあるのでこちらから確認してください。モデルナのデータに関してはこちらです。アストラゼネカはMHRAの資料から確認できます。これら承認機関の資料にはなぜこれが緊急使用承認に至ったかも書いてあります。いずれ厚生労働省からも似たようなものが出ると思われます。

a. ファイザー・バイオンテックのワクチンについて

そもそもファイザー・バイオンテックの第3相臨床試験というのは今年7月末に始まり、世界中で合計約4.3万人が参加したとても大規模なものです。それまでの試験で抗体ができるところまで確認しており、この第3相臨床試験では実際に感染を防ぐ効果があるのか、どんな人にも効くのか、長期で観察しても安全が確認できるか、そういったことを調べることを目的としています。(※人間は猿などのように人為的に感染させてテストをすることができないので自然感染で観察します)

以下共通なので先に言っておくと、BNT162b2と書かれた列がワクチンを打ったグループについてのデータで、Placeboと書かれた列が偽薬を打ったグループについてのデータになります。

まず効果についてはこちら。
ワクチンを打ったグループでは8人がコロナに感染、偽薬を打ったグループでは162人が感染。よって(162-8)/162で95.0%の効果がある(95%信頼区間(90.3~97.6))。これは年齢にかかわらず効果があります。16~55歳のグループでは95.6%、56歳以上のグループでは93.7%の効果です。

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例えばインフルエンザのワクチンは毎年出てきますが、予防効果は50%もいかないくらいなので、95%の効果というのは非常に大きいです。(CDCのレポート)

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安全性についてはこちら。
まず注射を打った箇所についての反応ですが、1回目の接種後も2回目の接種後もだいたい同じで、打った箇所は痛む(83.1%)、赤くなる(4.6%)、腫れる(5.7%)などの反応が出ます(3つの程度(mild, moderate, severe)の和)(18-55歳)。

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そのほか、発熱(38度以上は31.4%)や倦怠感(59.4%)、頭痛(51.7%)、寒気(35.1%)、筋肉の痛み(37.2%)、関節の痛み(10.9%)、下痢(11.1%)、嘔吐(1.2%)といった有害事象が報告されています。56歳以上の高齢グループの方が18~55歳のグループに比べて、そういった症状が出る確率は低いようです。

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また、ワクチンが関与している可能性のあるものとしてリンパ節膨張(ワクチングループ:64人、偽薬グループ:6人)、ベル麻痺(ワクチングループ:4人、偽薬グループ:0人)が報告されています。

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重大な有害事象(SAE)について。
ワクチンを打ったグループの死者は2人(偽薬を打ったグループでは4人)。
1人は2回目のワクチン接種の62日後に心肺停止、その3日後に死亡。もう1人は肥満の人で1回目の接種の3日後にアテローム性動脈硬化で死亡。
ワクチンを打ったグループで虫垂炎(いわゆる盲腸)になったのが8人(偽薬を打ったグループでは4人)。
肩の痛みもワクチンに関係する有害事象である可能性あり。

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b. モデルナのワクチンについて

まず効果についてはこちら。
ワクチンを打ったグループで11人がコロナに感染、偽薬を打ったグループでは185人が感染。よって(185-11)/185で94.1%の効果がある(95%信頼区間(89.3~96.8))。こちらも年齢にかかわらず効果があります。16~64歳のグループでは95.6%、65歳以上のグループでは86.4%の効果です。

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安全性について。
1回目の接種後よりも2回目の接種後の方が有害事象は多くなっています。年齢で見ると18~64歳のグループの方が65歳~のグループよりも重度な有害事象の割合が高くなっています。
注射箇所について、よく見られた有害事象は注射箇所の痛み(90.1%), 赤くなる(9.0%)、腫れる(12.6%)、リンパ節膨張(16%)。(18~64歳のワクチングループ)(2回目の注射後)

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そのほか、発熱(17.4%),頭痛 (62.8%), 倦怠感(67.6%), 筋肉の痛み (61.3%※), 関節の痛み (45.2%), 寒気(48.3%)が報告されています。(18~64歳のワクチングループ)(2回目の注射後)
※資料の数値6.1が間違っています。

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以下の3つはワクチンとの関連性を疑われる有害事象としてサマリーで触れられていました。リンパ節膨張(ワクチングループ:1.14%、偽薬グループ:0.63%) 、過敏症(ワクチングループ:1.5%、偽薬グループ:1.1%)、ベル麻痺(ワクチングループ:3人、偽薬グループ:1人)

重大な有害事象(SAE)について。
1回以上注射をした参加者の中で、2020/11/25までに1回以上SAEの報告があった人はワクチングループでも偽薬グループでも1%いました。
臨床試験参加者で2020/12/03までに死亡したのは13人(ワクチングループで6人, 偽薬グループで7人)でした。

c. アストラゼネカナのワクチンについて

こちらは注射一回分の投与量を変えて臨床試験を行なっているのでやや複雑です。記事が長くなってきた&是非自力で目を通してほしい(という言い訳)ので、ざっくり表だけ貼り付けます。

効果についてはこちら。
ワクチンを打ったグループで30人がコロナに感染、偽薬を打ったグループでは101人が感染。よって70.42%の効果がある(95.84%信頼区間(54.84~80.63))。

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安全性はこちら。

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まとめ

表を貼っていたらとても長くなってしまったのですが、言いたいことは一つです。実際のデータを自分の目で見て判断するようにしてください。データを見ないで思い込みで怖がるとかマスコミに踊らされるとかいうことがないようにお願いします。

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