2021共通テスト問題分析 物理基礎

理科一類・物理/化学選択のしらかばです。
来年度以降受験される皆さんのために、2021年度大学入学共通テストの物理の問題(第1日程・第2日程とも)を分析していきます。
都合により理系の私が物理基礎の解説を担当することになりました。そのため分析は理系目線となりますがご了承ください。

問題は以下のリンク先などでご覧ください(上が第1日程、下が第2日程です)

※筆者は読売新聞社とは何の関係もありません

それでは早速分析に入りましょう。

概論~文系科目としては厳しめの問題も~

センター試験の物理基礎と比較すると、公式の基本的な理解を問うという点では大きな変更はないといえます。しかし、理系の物理と同様に、グラフの読み取りや測定の方法を主題とする問題が登場しました。文系の人にとってはやや難しく感じられたかもしれません。

設問別分析~第1日程~

各設問に対して、筆者の所感をざっくりと述べます。

第1問

問1
力のつり合いに関する基本問題。理系でも意外とこのあたりの理解が怪しい人がいます……
問2
電荷の間に働く力の向きがわかっていれば答えられます。
問3
電磁波の種類に関する知識問題。空欄ア・イが容易にわかるので答えは出せるでしょうが、現在放射線治療ではX線を用いる方が一般的となっています。ですので空欄ウ(ガンマ線)の説明文は、ガンマ線滅菌等の方がよかったのではないかと思います。
問4
エネルギー保存則と温度の定義に関する知識問題。
会話文形式の問題を見ても戸惑わない心の準備はしておいたほうがよいでしょう。

第2問

A(問1・問2)

波に関する基本問題。見かけに圧倒されないようにしましょう。

問1
グラフと表を読み取る問題。物理基礎としては目新しい出題ですが、それほど難しくはないでしょう。
問2
波の重ね合わせの問題。
この問題を解くのには関係ありませんが、周期Tの任意の波は、周期がTの整数倍である正弦波の重ね合わせとして表せることは教養として知っておくとよいでしょう。これをフーリエ展開といいます。

B(問3~問5)

電気に関する基本問題。問5は問題文の意味をくみ取るのに時間がかかるかもしれません。

問3
変圧器の基本知識を問う問題。電圧が巻き数に比例していることがわかっていれば容易に解けます。図中の巻き数を数える問題ではないので注意。
問4
電圧・電流と電力の関係がわかっていれば解けます。
問5
意味のつかみづらいリード文ですが、要するに「求める消費電力は、このニクロム線に8Vの直流電源をつないだ時の消費電力と同じですよ」ということを言っています。
そうなる理由を一言で述べると、「交流電圧計がそのようにできているから」です。交流は大きさが時間変化する電流ですが、交流電圧計は消費電力が直流と同じように計算できるような電圧の値(これを実効値とよんでいます)を表示してくれるのです。

第3問

等加速度運動に関する問題。実際の測定にも絡めた共通テスト特有の出題です。

問1
問題文から、線AからBに移動するのに0.1秒かかっていることを読み取りましょう。
問2
運動方程式の理解を問う問題。0.72×0.5を計算すればよいだけです。
あまりにも単純過ぎて逆に不安になりますね。台車の質量を「500g」と書いて単位換算をかませるなど、何か一工夫欲しかったです。
問3
おもりはいじっていないので、加速度が小さくなった理由は台車が重くなったことだとすぐにわかります。
不正解の選択肢がおかしすぎるので、問題文を読まずとも解けてしまいそうな気もします。
問4
等加速度運動の基本問題。このように公式を使うだけの問題は確実に解きたいです。
問5
エネルギー保存則の基本理解を問う問題。これも正解しておきたいです。

設問別分析~第2日程~

続いて第2日程の問題を見てみましょう。

第1問

問1
水圧の問題。公式を使うだけなので大丈夫でしょう。
問2
電流の定義の理解を問う問題。これも基本的な内容です。
問3
固定単反射した波の波形がどうなるかがわかっていれば解けます。
問4
比熱と温度変化に関する問題。複雑そうに見えますが、そこまで難しい問題ではありません。

第2問

A(問1・問2)

気柱の共鳴に関する問題。内容は基本的です。

問1
図に定常波の様子を書き込んで考えるとよいでしょう。
問2
温度が低下すると音速は小さくなります。スピーカーはそのままなので、振動数は変化しません。よって波長が短くなり、L2では共鳴しなくなります。波長が短くなったときの様子を図に表せば、空欄7の答えが2回であることもわかるでしょう。

B(問3~問5)

電流計とデータの扱いに関する問題。人によってはてこずったかもしれません。

問3
最大値が300mA=0.3Aであることに注意しましょう。
問4
電流の大きさをできるだけ正確に測りたいので、測定できる最大値(これを一般にレンジ(range。英語で幅のこと)と呼びます)は小さい方がいいです。しかし針が振り切れてはいけないので、電流の大きさを超えている中で最小のレンジを使えばよいことになります。
この問題のようなアナログ電流計では、測定者が自分で最適なレンジを選ばなければいけませんが、最近のデジタルテスターには自動的にレンジを切り替える機能がついているものも多いです。
問5
このように誤差を含んだデータから比例係数を読み取る際には、できるだけ多くのデータの近くを通るように直線を引き、その傾きを読み取るのが定石です。このような作業のことをフィッティングといい、現代ではコンピュータが自動でやってくれます。

第3問

等加速度直線運動とエネルギー保存に関する問題。題材選びが面白いですね。

問1
等加速度直線運動の基本問題。グラフが読めれば簡単です。
問2
v-tグラフの下側の面積を求めればよいです。三角形や台形で適切に近似して計算しましょう。
問3
図2から電流値を読み取って計算しましょう。
図1から運動エネルギーを計算しても正解には至りません。現実的にも機械的な損失のためにモーターのした仕事がすべて運動エネルギーになるわけではないので、この辺りはリアルですね。
問4
電車の重さは運動エネルギーと位置エネルギーの両方に現れるので、あらかじめ割っておくと計算間違いが減らせます。

来年以降の対策

センター試験に近い問題が主体であったので、基本的にはセンター試験の際と同様、基礎的な知識を固めておくことが大切です。
両日程ともにグラフや図表を読む問題、実際の実験操作に関係する問題の出題がありました。今年の問題をやってみて難しいなと思った人は、模試や予備校の予想問題などを活用して練習を積んでおくとよいでしょう。

勉強法に関して疑問点などがありましたら、ぜひ東大入試研究会の質問箱に質問をお寄せください(すぐにお返事ができない場合もあります)。

その際、以下のツイートの内容をご確認いただきますようお願いいたします。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?