お客様の声から生まれた商品「冬用キュロット」
商品開発のきっかけになるものは『何気ないお客様のお声』です。
お客様からの問い合わせだったり、弊社商品のレビューだったり、頂いたお手紙やメールだったりで、間違いなくお客様のお声がきっかけとなっています。
今回企画した商品もそんな何気ないお客様のお声から生まれた商品でした。
今年7月の終わりのことでした。一通のメールが届きました。
弊社の商品を通して、お客様のお役に立てたことに、私を含め社員一同喜びました。それと同時に、お客様の必要とされている商品を知ることが出来たきっかけのメールでした。
弊社では過去に秋冬物キュロットを作っておりましたが、殆ど売れなかった為廃盤となっていました。もう何年もキュロットは夏物だけを作り続けていました。
近年ネットショップでの販売に力を入れており、お客様がどういったワードで検索をなさっているか等の確認を行っています。
そのワードの中で、検索される回数は少ないものの、季節に関わらずずっと検索され続けているワードがありました。それが「キュロット」でした。
過去に売れなかった実績などを踏まえて企画生産には踏み切っておりませんでした。
けれども頂いたメール内容がとても気にかかり、企画も視野にいれてメールをくださったS様に返信をすることに致しました。
メールのお礼と共に
『ちょっと気になること』
『S様のお母様がスカートしか履いたことがない理由』
についてお伺いしました。知るべき内容がそこにあると感じたのです。
S様からのお返事内容は、我々の作った製品の先、その未来を知り得る貴重な内容でした。
またS様ご自身のお話も記されていた為、介護をなさっている方の現状もほんの一部と存じますが、知ることができました。
介護が必要になり 普段の服と必要な服がガラリと変わること、介護をされるご家族の方も やはりご本人に合うものを見つけてあげたいとお考えであること。
しかし、そうなってくると機能やサイズ、デザインなど、条件に合うものを探すだけでも一苦労なさっている事を伺えました。
S様のメールから、穿かれる方のこれまでとこれからを知ることが出来、そのこれからの中でお困りのことがあることがわかりました。
我々が出来る事は何か、出来る範囲は何かを考える、ものづくりの根幹ともいえる、とてもよい機会に恵まれました。
またS様からのメールにはお母様のそれまでの衣服の取扱いなどについても触れておられました。
メールを拝見しながら、S様やS様のお母様の人となりを知ることが出来た気がして、とてもあたたかな気持ちになったのを覚えています。
8月に入り、秋冬用のキュロットパンツ企画開発に本腰をいれました。
商品を開発するからには、様々な根拠が必要となります。
穿かれる方の年齢層、そして身長を決定し、様々な根拠となるデータを揃えます。
企画者の個人の想いだけで商品開発してしまっては、予想しなかった事態が発生したり、根本が解決しなかったり、全く売れなくて在庫だけが山のように溜まって赤字続きになってしまったりと、様々なリスクが発生してしまうこともある為、しっかりとデータを確認していきます。
生地は何を使うか、生地によってはイメージがかなり違ってくるので、嵩高な生地だとどんな風になるだろうか。サンプルを作りながら、あれこれ思案する毎日でした。
そんな中、頭の中にずっとあったのはS様のお母様でした。
夏用のキュロットの着用写真等を送ってくださったことで、よりしっかりとイメージすることができていたので、冬ならばどうだろうかと、より深く思案することが出来たのです。
「ゴム入替え口の必要性」や S様のお母様のように普段スカートの方に違和感のないパンツとして「キュロットを代用」できることなど、新たな気付きを得られていました。
8月下旬になりキュロットの丈の長さについて決定を迷っていました。
平均身長から考えると総丈65㎝は長いのではないか、もう10㎝短くしてはどうかと、得た情報と穿かれる方の事を想像して丈の長さに迷っていました。
そんな折、再びS様よりお問い合わせをいただきました。
商品開発のきっかけとなる後押しをして下さった方です。思い切って丈の長さについてご意見を伺ってみました。
頂いたご意見を参考に、迷っていた丈の長さを総丈65cmで進めることに決めました。
長ければ裾上げが対応できるけれど、短くしてしまっては対応が出来ません。
裾上げは弊社商品のキュロットであれば対応できるため、微調整できるよう少しだけ長めがよいだろうと判断しました。
8月下旬、こまかな縫製仕様を決定いたしました。
サイズ別の生産数を決定し、生地裁断~縫製へと取り掛かりました。
10月下旬、ついにキュロットが完成しました。
11月早速モデル撮影を行い、急ピッチで商品ページ作成を行い、中旬には販売を開始しました。
今回お話したように、企画段階でお客様のお声を直接伺いながら商品開発行うことは初めての経験でした。
着用なさる方の未来を想像し、ものづくりに活かしていくこと、自分たちが行っている事が、誰かの幸せに繋がっているとしたら、とても素敵な事です。
S様や他のお客様からいただいたお言葉を大切にしながら、少しずつでもお客様のお悩みを解決し、今後も着心地の良いボトムをお届けできるよう努めて参ります。
最後になりましたが、お忙しい中にも関わらず、商品企画に快くご協力いただいたS様とお母様に厚くお礼申し上げます。
文:戸田被服株式会社 粟根夢咲
商品企画・編集:戸田被服株式会社 新井美晴
広島県福山市北部の小さな会社で地道にズボンを売っている会社です。記事はWeb販売管理部の新井・中田・粟根が書いております。 少しでも弊社の事をお近くに感じて頂けたら幸いです。