見里 朝希さん インタビュー(第10回、第12回 TOHOシネマズ学生映画祭受賞者)


見里 朝希さん

大人から子どもまで幅広く人気を博し、劇場公開もされたストップモーションアニメ 「PUI PUI モルカー」 。その生みの親である見里朝希さんは、第10回TOHOシネマズ学生映画祭ショートアニメーション部門で『あたしだけをみて』がグランプリを受賞、第12回ショートアニメーション部門でも『マイリトルゴート』がグランプリを受賞しています。映画祭を運営する学生スタッフが、見里さんにお話をおうかがいしました。
 
大きなスクリーンや優れた音響設備で作品を発表できるのは、TOHOシネマズ学生映画祭の大きな魅力
 
――TOHOシネマズ学生映画祭に応募したきっかけを教えてください。
 
「大学3年生の就職活動に悩んでいる時期に、『映画祭で賞をとっていると就活に有利』と就職課の方からアドバイスをもらいました。そこで映画祭を調べた時に、TOHOシネマズ学生映画祭がその年の最初に開催されるということがわかり、さらに募集要項の『他の映画祭において受賞歴のない作品であること』という条件がまさにぴったりだったので、完成したばかりの卒業制作を応募しました。これが2016年の『あたしだけをみて』です」

 ――グランプリを受賞した時はどんなお気持ちでしたか?
 
「TOHOシネマズという大きな劇場で一般のお客さんに作品を観てもらうにあたって、自分の作品が正しく伝わるのか、楽しんでもらえるのか、という部分が心配でした。そんななかでグランプリをいただけたので、本当にうれしかったです。そして、次の作品制作の自信にもなりました」
 
――『マイリトルゴート』はグランプリ受賞後、国内外で30以上の賞を受賞されていますよね。本当にすごいです!
 
「ありがとうございます。TOHOシネマズ学生映画祭でグランプリをいただいたことで、これなら評価されると過信して、色々な映画祭に片っ端から応募しました(笑)」
 
――見里さんは2017年の第11回TOHOシネマズ学生映画祭でも、『Candy.zip』という作品を応募されていたそうですが、その時のお客さんの反応はいかがでしたか?
 
「『あたしだけをみて』を上映した時とは、審査員、観客の反応が異なりました。審査員の方々に感想を聞いて、物語の伝わりやすさが重要だと感じたので、次の『マイリトルゴート』はシナリオ面に特化した作品にしようと決めました。観客の反応を見て、初めて作品の改善点が見つかったので、とてもいい機会になりました」
 
――TOHOシネマズ学生映画祭に参加されてよかった点を教えてください。
 
「やはり大きなスクリーンやいい音響設備で、一般の方に作品を発表できるというのは大きな魅力ですね。プロとして活躍されている審査員の方々から、色々なアドバイスをいただけるのも大変貴重な機会だと思います。あと、TOHOシネマズ学生映画祭はアニメーションだけでなく実写作品の監督たちとも交流を持てるので、そういった方々の視点で意見をもらえたのもよかったです」
 
時間をかけて作品を作り、映画祭やコンテストに応募することが大事
 
――プロの監督として制作された作品と、学生時代の作品に共通点はありますか?
 
「僕の場合、作品制作をする際に『もしも◯◯だったら…』というところから考え始めます。例えば『マイリトルゴート』はグリム童話『オオカミと七匹の子ヤギ』をもとにしているんですが、『オオカミのお腹をはさみで切って子ヤギたちを助け出す時に、胃袋の中ですでに消化活動が始まっていたら…』というところから制作を始めました。『あたしだけをみて』はカップルのマンネリをテーマにした作品なんですが、『彼氏のちょっとしたよそ見を許せない彼女だったら…』ということをきっかけに想像しました。TVアニメーションの『PUI PUIモルカー』も、『車がモルモットだったら…』というテーマです。その“もしも”が現実からかけ離れているほど、アニメーションとしておもしろいのではないかと思います」
 
――学生の映像制作者に向けて、アドバイスをいただけますか?
 
「もし作品を作ったら、とにかく色々な映画祭やコンテストに応募することが大事です。美術系の学校だと、卒業制作が自身のポートフォリオの大きな顔になるので、手を抜いてはいけないなと思います。社会人になると必ずしも自分の思い通りに作品が作れるわけではないので、学生のうちが時間もあって自由にやりたい放題作れるチャンスです。僕も『あたしだけをみて』と『マイリトルゴート』は、極端に言うと人生の半分を懸けて制作したと言っても過言ではありません。『あたしだけをみて』は4年生を迎える前に企画を始めていたし、『マイリトルゴート』は藝大のアトリエに簡易ベッドを持ち込んで1年がかりで制作しました。『あたしだけをみて』のおかげで藝大に入学することができ、『マイリトルゴート』のあとはフリーランスで活動していたんですが、『PUI PUIモルカー』など大きな仕事をいただくことができました。それは時間をかけて作品を作ったからということと、色々な人たちの前で発表したからの2つのおかげだったと思います」
 
――見里さんは現在どんな作品を制作されているのですか?
 
「まだ詳細は発表できないのですが、これまでで一番大きな規模で作品を制作中です。みなさんに楽しんでいただけるようがんばります!」
  

【見里さんプロフィール】
東京都出身。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、東京藝術大学映像研究科アニメーション専攻を修了。2020年、30歳以下の若手クリエイターを対象とする国際賞Young Gunsを受賞。2021年、ストップモーションアニメ「PUI PUI モルカー」がTV放送開始。『とびだせ!ならせ! PUI PUI モルカー』(21)、『ならせ! PUI PUI モルカー + DRIVING SCHOOL 予習編』(22)が劇場公開。現在はアニメーション制作会社WIT STUDIO所属。


【今回インタビューした学生】 山岸さん(大学2年生)

「受賞作をたくさん見てきましたが、見里さんの作品は短編だけど深くて、どうやって作っているんだろうと思っていました。今回のインタビューで、『もしも◯◯だったら…』をテーマしているというお話しがとても印象に残っています。また、作品を応募して色々な人に意見をもらうということが大事だと改めて思いました」


【今回インタビューした学生】新島さん(大学2年生)

「『あたしだけをみて』『マイリトルゴート』のグランプリを経て、『PUI PUI モルカー』など話題作を手がけるアニメーション作家になられたと思うと、とても刺激になります。見里さんのお話しを聞いて、劇場の設備や審査員の方々のアドバイスなど、応募される方にとってメリットの多い映画祭だと感じました。ぜひたくさんの学生作家のみなさんに、応募していただきたいです」


写真=野崎航正 構成・文=石川ひろみ(ムービーウォーカー)


第16回 TOHOシネマズ学生映画祭 概要

日程:2023年3月23日(木) 14:00 開始 20:00頃 終了予定
会場:TOHOシネマズ 日比谷
料金:入場無料
   ※チケット受付方法など詳細は後日発表いたします
協賛:コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
後援:株式会社ロボット GEMSTONE TOHO animation
公式サイト:https://www.tohotheater.jp/tcsff/info.html


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