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【tockni流コラム】amazarashi「夏を待っていました」の音について【歌】

amazarashiをご存知ですか?

テレビには全くと行っていい程露出しない歌手だからか、知人に尋ねても知らない人の方が多いのですが、僕は3、4年前からのファンです。

「夏を待っていました」はamazarashiの初期の作品で、500枚プレスされた「0.6」というアルバムの一曲です。痛切なのに懐かしい情景の歌詞と、クリーンなギターのサウンドとミニマムなピアノの伴奏がとても瑞々しい一曲です。

僕が音楽に求めているものはごく単純な「感動」です。哀切や感傷や鮮烈といった心の揺らぎを求めていますが、amazarashiの楽曲はそうした様々な感動を、あらゆる楽曲から一定の波長で与えてくれる気がします。

水が合うならぬ「音が合う」といった感じ。

そんな感覚を、今日はこの「夏を待っていました」から繙いてみます。

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音楽を構成する「旋律・和声・リズム」の三要素。歌はこれらと歌詞がマッチしているとより気持ちよいと感じます。さらにこうした要素を構成する素粒子としての「音」そのものが、美しく響いていればより心地いい。

本曲はピアノとドラム、ギターのシンプルで静かなサウンドで始まります。
数滴のインクを落とすように「ポタン」響くピアノの音と、その波紋が広がる様なギターのフレーズを、淡々としたドラムの水面が湛えていくようです。
そんな端麗なバックとは対照的に、ボーカルの秋田ひろむ氏の声は独特の熱を帯びており、どこか混濁しています。声は少し掠れながら、ファルセットとナチュラルボイスの間を行き来する。
少年と青年の間のようなあまり類を見ない声。歌い方も大人と思春期を行き来するような感情の揺れ動きを表現するように、冷静と情熱を繰り返す波のようです。

この声がとても魅力的です。

そして、間奏でガラリと変わるラウドな音作り。
ギターにはエフェクトがかかり、エコーのようなシンセのサウンドがそれまでより強調される。
それが再びナチュラルな音作りへと返ってきて、サビで「夏をまっていました」という繰り返されたそれらが融合する感覚で曲は盛り上がり…再びナチュラルで端麗なサウンドへと還りながら、最後は静かなギターがAのコードを鳴らして終わる。

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「夏を待っていました」はそんな一曲です。


歌詞については、他所での様々な考察に譲ります。歌詞で好きになった歌や歌手は幾つか居りますが、音と声と歌詞総てを好きな歌手はamazarashiだけです。初期作の本作から最新アルバムまで全てを聞きましたが、どの世代もそれぞれの素晴らしさがあります。が、初期作の中では最も好きな一曲です。

是非♪

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