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【tockni流コラム】ユニゾンのちから【歌・映画】

ユニゾン(Unison)。

 日本語に訳せば「斉唱」です。その意味を詳細に書けば「一つのメロディを複数の人で一緒に歌うこと」となるでしょうか。

 高校の合唱部を舞台にした邦画「うた魂」を観て、改めて「ハモるだけが合唱じゃない!」と感じ入った次第。今回は、その理由を繙いてみます。


 僕は学生時代、アカペラバンドに参加していました。当時はハモネプの全盛時代で、僕たちにとって声だけでの演奏…とりわけ「ボイスパーカッション(ボーカルパーカッション)」の登場は衝撃的でした。自分を含めバンドの男性メンバーの全員がこの所謂”ボイパ”を練習した程です。

「a cappella」即ち「伴奏無しで」という言葉と共に、その歌唱法がグッと身近なものになったこの頃。僕は活動の為に既存の楽曲をアカペラ譜に編曲していました。当時、木管五重奏のアンサンブルチームにも参加しており、そこでも既存の楽曲を木管五重奏曲に編曲させて頂いていたので、その勉強にもなりました。


 さて、編曲の手法を思い返します。

 当時の自分は「和声」を主に意識していました。つまり「ハモり」です。声がハモって重なった瞬間の一体感は素晴らしく、気持ちがよかったのです。けれど、実はそればかりだと、耳も飽きるし、冗長な編曲になって歌いずらい事に、後々気がつきました。

 そこで今度は「対位法」を意識した編曲にシフトしていきます。即ち、旋律の移り変わりが交わった結果、ハモる瞬間が自然と産まれるように編曲スタイルを変えていったのです。結果は良好で、歌う時も、聞く時も心地いいとされました。「歌が整理された感じがする」との感想を貰いました。

けれど、それでも編曲する中で殆どユニゾンを使わなかったのです。


 これは何故か?実は「カッコつけ」と関連しています(汗)アレンジャーとして『複雑であればあるほど腕がある』…という典型的な勘違いをしていたのです。なんとなく編曲する中で同じ旋律を全員に歌わせるユニゾンという手法に、「逃げ」の様な感覚を抱いていたんですね。


 しかして、映画「うた魂」を通してその感覚は見事打破されました♪本作では、合唱の楽しさの本質や、歌うことの喜びの本質に簡潔な言葉で応えています。


 それは即ち「調和することの快感」です。


 独りよがりな派手さではなく、かといって没個性的な同調でもない。

『調和とは個性と個性がせめぎ合いながら響き合う事を意味する』と僕は考えるようになりました。

 映画のシーンから、そういった単純な和音の重畳だけが「調和」を産むわけではないことを、改めて知ったのです。
 和声だけでは響き合いはあっても、せめぎ合いが薄い。対位法だけではせめぎ合いができても、響き合いが薄い。その両者を繋ぐ重要なピースがユニゾン。

 本作には様々な歌が収録されて居ますが、それを味わったのは最後のシーンでした。詳細は本作を観て頂くとして…ともかくユニゾン=「一つのメロディを複数の人が一緒に歌うこと」の力強さと素晴らしさは一聴の価値ありです。

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