都庁面接シートの書き方と面接での質問内容
「都庁解説」というブログを運営している、元都庁職員の裕介です。都庁では、本庁・出先機関を併せて約10年間勤務をしました。詳細は、「都庁解説」ブログをお読みいただけると幸いです。
本記事では、筆者の都庁職員としての経験と、上司・先輩・同期・後輩との情報交換を踏まえて、都庁の面接試験を突破する方法について解説をしていきます。
具体的には、次の2点について扱います。
1 面接シートの書き方と面接での聞かれ方
2 面接で実際に聞かれた質問内容
この内、1では面接シートの書き方に加え、面接シートの内容について実際にどのように面接が進むかについて、実際の職員の再現内容を元に、可能な限り具体的に紹介しています。
2では、面接で実際に聞かれた質問内容を40例、を紹介しています。「都庁解説」ブログでも、この内20例を紹介しておりますので、2の記事は+αとしてご活用下さい。
また、これ以外の情報については「都庁解説」ブログ内で適宜公表しておりますので、興味がありましたらブログにもお越しください。
なお、本記事は1類B一般方式受験者の方を対象としておりますが、「都庁の面接官がどのような視点で面接をしているか?」も把握できる内容にしておりますので、1類B一般方式以外の方(1類A方式、1類B新方式等)にも十分有用な内容になっています。
※本記事はあくまで筆者及び現役東京都職員の知見から面接対策について解説したものであり、本記事を参考にすれば必ず合格するという性質のものではありません。また、再現についても当事者の記憶を元に行っており、実際の試験と異なる部分もあります。
※本記事は、コロナ禍以前に試験を受けて入都した職員からの聞き取りを元としています。
以上の点について、予めご了承下さい。また、本記事の著作権の一切は「都庁解説」ブログチームに帰属しますので、無断転載・複製・販売等、著作権を侵害する一切の行為を禁止させていただきます。
目次
〇はじめに
〇面接シートの質問内容
〇面接シートの書き方と面接での聞かれ方
・本記事の構成について
・問1について
・問2について
・問3について
・問4について
・問5について
〇面接で実際に聞かれた質問内容
〇はじめに
本記事では、都庁採用試験における「面接シートの書き方と面接での聞かれ方」と「面接で実際に聞かれた質問内容」について、詳細に解説していきます。
「面接シートの書き方と面接での聞かれ方」では、都庁に合格して実際に働いている若手職員数名に筆者が話を聞き、面接シートの内容と面接当時の状況を可能な限り再現しました。皆さん受験時からある程度の年月が経っているのと、あくまで本人の自己申告を元に作成したので、実際の試験とは異なる部分もあるかと思います。その点については予めご了承下さい。
「面接で実際に聞かれた質問内容」では、同じく若手職員数名が、実際に面接試験でされた質問内容について記載しました。
なお、実際の面接では、受験生の回答に対し面接官が再び質問をしてくるケースが非常に多いため、会話の切り口となる質問を中心に記載しました。
例えば、
(面接官)「アルバイトは何をやっていましたか?」
(受験生)「〇〇で2年間程働いていました。」
(面接官)「〇〇では具体的に何をするのですか?」
(受験生)「私は主に□□と△△を担当していました。」
(面接官)「□□って何ですか?」
(受験生)「☆☆をする仕事です。」
(面接官)「☆☆で、貴方自身が得たものはありますか?」
というようなイメージで面接は進んでいきます。本番では受験生の答えに対する切り返しとしての再質問が多いため、質問例では冒頭の質問(アルバイトは何をやっていたか?)をメインに載せています。
なお、面接官の質問内容がある受験年度から突然変わるケースもありえますので、過信し過ぎず、あくまで読み物として参考程度にご活用下さい。
〇面接シートの質問内容
1 あなたがこれまでに学習したこと又は研究した内容などを書いてください。受験する試験区分に関係するものがある場合は、そのことを中心に書いてください。
2 あなたがこれまで力を入れて取り組んだことについて、取組期間も含めて書いてください。(3つ以内・箇条書き)
3 これまで取り組んだことのうち、成果や達成感を得た経験(1つ)について、あなた自身の行動を中心に具体的に書いてください。
4 東京都を志望した理由について書いてください。
5 東京都に採用されたらやってみたいことについて、具体的に書いてください。
〇面接シートの書き方と面接での聞かれ方
・本記事の構成について
1 問〇の質問内容
2 問〇のポイント
3 問〇の記載例と面接でのやりとり
①実際の職員が書いた再現内容
②なぜそのように書いたか?
③面接でどのように質問されて、どう答えたか?
④面接途中の心境
⑤面接が終わってどう感じたか?
⑥筆者のコメント
・問1について
1 問1の質問内容
あなたがこれまでに学習したこと又は研究した内容などを書いてください。受験する試験区分に関係するものがある場合は、そのことを中心に書いてください。
2 問1のポイント
問1は、受験生のこれまでの学習成果・研究内容に関する質問です。
いきなりですが、事務職の採用面接において、問1はあまり重要ではありません。というのも、事務職の面接では、問1の内容について質問されないことも多いからです。
身も蓋もない言い方をしてしまうと、面接官は、受験生が学生時代に何を勉強していたかについて特に興味を持っていません。学生時代に勉強したことが、都庁での実務に役立つことはほぼ無いからです。ただし、法科大学院卒業者が優先して総務局の法務課に配属される等、学生時代の勉強内容と職務内容が一致する場合もあります。もっとも、法務課のように、専門的知識を要するごく一部の部署に限られます。
なので、面接官としても、勉強してきた内容を本当に聞きたいのではなく、「この人は勉強してきたことを初対面の我々にわかりやすく伝えることはできるか?」という観点から質問をするだけです。そして、自分のことをわかりやすく伝える能力の有無は、面接シートのメインである問2以降でもチェックすることは十分可能です。むしろ面接官は、そっちで測りたいと考えています。
もちろん、面接官によっては、興味津々に突っ込んでくる方もいるかもしれませんが、面接時間も限られている中で、あえてこの質問に時間をかけるメリットが面接官側にありません。なので、学習成果・研究内容について、その内容を知らない素人に対してわかりやすく説明する意識で記入すれば十分です。間違っても、難しい専門用語を並べることはやめましょう。
実務においても、書類の書き方や法令・制度等を、一般の都民の方にわかりやすく説明する能力は必要不可欠です。面接でも、その能力が問われていると考えるとよいでしょう。
3 問1の記載例と面接でのやりとり
①実際の職員が書いた再現内容
法学部に入学し、法律全般について幅広く勉強してきました。特に所属している行政法ゼミでは国家賠償法の判例を中心に研究し、どのような場合に自治体の責任が認められるのかについて、類似の事案をまとめた上で、自分なりの仮説を立てました。
②なぜそのように書いたか?
正直な所大学時代はほとんど勉強していなかったため、書くネタがあまり無かった。ゼミで実際にやったことを適当に書いた。
「自分なりの仮設を立てた」と書けば、「どんな仮説を立てたの?」という質問がくると思ったから、それの準備はしておいた。
③面接でどのように質問されてどう答えたか?
一切触れられなかった。
④面接途中の心境
え、聞かないの?と思った。
⑤面接が終わってどう感じたか?
まさかスルーされるとは思わなかった。
⑥筆者のコメント
問1の内容としては、無難な記載例だと思います。「すごく良い」というわけではありませんが、変なことも書いていないですし、無難だと思います。「自分なりの仮設を立てた」という振りは良かったと思いますが、本番で突っ込んでくれなかったのが残念です。
ブログでも解説しておりますが、都庁の面接試験の合格率は毎年約40~50%前後です。10人の中から優秀な1人を抜擢するような面接とは異なり、2人に1人は合格する試験なのです。ここからわかるとおり、都庁の面接試験は優秀な人材を抜擢することに重きを置いていません。
むしろ、都庁職員としてふさわしくない、問題のありそうな受験生をふるい落とすことを目的としています。なので、無難なことを書いて面接官と適切にコミュニケーションを取ることが出来れば、ほぼ確実に面接を突破することができます。
「1次試験を突破してきた受験生しか面接を受けないんだから、2人に1人が合格するといっても、かなり高レベルな競争になるんじゃない?」と思われる方も多いと思います。筆者自身、受験時はそう考えていました。
しかし、都庁受験生の面接レベルは決して高くありません。実際に働いている職員を見ても、「この人、よく面接突破できたな」と疑われるレベルのコミュニケーション能力しか備えていない人も結構います。
誤解を恐れずに言うならば、「勉強は得意だけど、民間とかで営業は無理」「真面目だけどコミュニケーションが苦手」といった理由で公務員を目指す方も多いのが現実です。
実際に面接官を経験した課長も、「そもそもまともに会話できる奴が少ないなんだよな」とぼやいていました。多くの受験生が、自ら地雷を踏んで自滅をするそうです。
このように、公務員試験の受験生の中には、そもそも面接に向かない人が多いのです。
そんな中で2人に1人が合格するわけですから、しっかりと正しい対策をしていれば、都庁の面接試験を突破するのは、筆記試験を突破することに比べればよほど簡単だと思います。
前置きが長くなりましたが、本題に戻りましょう。
この方は一切質問をされていませんが、仮に本番で質問がされるとしたら、次のような内容になるでしょう。
・研究内容(学習内容)を簡潔に説明して下さい。
・なぜそれを学ぼうと思ったのか?
・それを学んだことで、自分としてどう成長できたと思うか?
・学んだことを東京都の業務にどう活かせるか?
もっとも、上で述べたとおり、面接官は問2以降の質問をメインで行いたいと考えていますので、問1に割く時間はあまりありません。仮に質問がされたとしても、上のような質問に対する自分なりの回答を事前に準備しておき、わかりやすく・簡潔に話すことができれば、十分に合格点が付くでしょう。
・問2について
1 問2の質問内容
あなたがこれまで力を入れて取り組んだことについて、取組期間も含めて書いてください。(3つ以内・箇条書き)
2 問2のポイント
問2は、受験生がこれまで頑張ってきたことに関する質問です。公務員試験だけではなく、就職活動全般で定番の質問だと思います。
問2は、受験生の経験したエピソードを通じて、受験生が質問に対しスムーズに受け答えできるか否かをチェックすることを目的としています。
受験生心理としては、派手なエピソードを書きたいという気持ちになる方が非常に多いです。筆者もそうだったので、気持ちは痛いほどわかります。
例えば、留学・社会活動・サークルの立ち上げ・学生時代の起業経験等々、なんとなく「凄そう」なエピソードを書きたいと思う人が多いのではないでしょうか。中には就活のネタ作りのために短期留学をする学生もいます。
しかし、ブログでも解説しているとおり、問2と問3について、面接官は一切派手な答えを期待していません。「実際に受験生がどんな活動をしてきたのか?」について、ほぼ興味がないのです。
では、なぜ定番のこの質問をするのでしょうか?それは、この内容について質問した際に、「どのような答えを返してくるか?」「どのようにコミュニケーションが取れるか?」をチェックするためです。
なので、エピソードは(非常識なものでなければ)基本的に何でも大丈夫です。
高校時代の部活、アルバイト、ゼミ、サークル、部活、読書、趣味、前職の経験など、本当に何でも構いません。ただし、バランスは取った方がよいので、3つのエピソードは、①高校の部活②大学時代の勉強③大学時代のアルバイト、といったように、それぞれ別の期間や機会から選ぶ方が無難です。
面接官は、「どういう風に力を入れて、どんなことを得ましたか?」という感じで質問をしてくるでしょうから、質問に対して的確に答えられれば大丈夫です。
なお、3つの中で、自分の中で最も語りがいのあるエピソードは、問3に持っていきましょう。
繰り返しになりますが、エピソードの派手さは求められていないので、あまり見栄を張りすぎないようにしましょう。多少エピソードを盛ることは許容範囲ですが、嘘のエピソードを書くことは絶対にやめましょう。面接官は都庁の管理職が務めており、毎年のように面接官を務める課長級職員も多いため、受験生の嘘は基本的に見破られると思っておいた方がよいです。これは、実際に面接官を経験した課長職員も言っていました。
一方、社会人で都庁を受験する方は、前職(現職)についてかなり突っ込んだ質問をされます。これは、転職して入都した人の全員がそのように話をしていますので、前職についてわかりやすく、簡潔に説明できるようにしておきましょう。
転職者の場合、学生時代のことは聞かれないことも多いですが、面接シートに書いた場合は聞かれることもありますので、簡単に準備をしておきましょう。
3 問2の記載例と面接でのやりとり
①実際の職員が書いた再現内容
(1)バレーボール部の部活動(高校1年〇月から3年〇月まで)
(2)ゼミでの研究活動(大学3年〇月から現在まで)
(3)飲食店でのアルバイト(大学1年〇月から現在まで)
②なぜそのように書いたか?
(1)高校時代の部活は、大会も目指していたし、本気で力入れて取り組んでいたことだと思う。面接で突っ込まれても、普段の練習・朝練・合宿など、いくらでも話すネタはあった。バレーボールはチームスポーツだから、チームワークを語るにも十分だし、面接向けだと思った。
(2)ゼミには特に思い入れがないが、エピソード的に問3のネタに一番適していそうだから、問3用に書いた。
(3)高校時代の部活と大学のゼミを書いたから、エピソード的にバイトがバランスいいかなと思った。ファミレスでのアルバイトに力を入れたとか意味わからないけど、質問された際に話せるネタはあるから、この3つを選択した。
③面接でどのように質問されてどう答えたか?
面接官:「飲食店でのアルバイトって、何をやってたの?」
回答者:「ファミリーレストランのキッチンで、お客様に提供する料理を作っていました。」
心の声:(部活はスルーなのか?)
面接官:「ずっとやってるの?」
回答者:「大学入学時に料理が全然できなかったので、少しでも料理ができるようになりたいと思ってアルバイトを始めたのですが、いざ始めてみると料理が面白くなって、今でも続けています。アルバイト先では友人も増えるので、働いているという感じはあまりなく、サークル活動の延長のように楽しくやっています。」
心の声:(完璧に用意してきた答え)
面接官:「そうなんだ、楽しめるならいいね。接客もやってるの?」
回答者:「はい。アルバイトはシフト制だったので、ホールの人数が少ないときはホールに回されることもあります。」
心の声:(そんなこと興味あるのか?)
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