国会議員は落選しても「参与」・・・・都庁では副知事を辞めても「参与」

 先の衆院選で落選した石原伸晃氏が岸田政権の参与として迎え入れられました。石原ブランドも今は昔、岸田総理による旧石原派の取り込みの思惑が見え隠れする一件でしたが、このあまりパッとしない話題を起点として、都庁の現状を垣間見てみたいと思います。

 国と同様、地方自治体にも参与制度はあります。外部の有識者を指名して助言してもらう仕組みです。都庁で思い出すのは、その昔、石原知事(当時)が力を入れていた横田基地の返還問題に関して、参与を置いていたことです。この参与の方はお飾りではなく、都庁内に席を有して精力的に活動されていましたが、如何せん相手は米軍です、テコでも動きませんでした。(ちなみに、横田基地担当の部署は今でも存続しています。)

 さて、話を現在に戻します。今年10月、小池知事は突如、副知事を交代しました。腹心だった二人の副知事を任期途中で辞めさせました。普通、副知事を退いた役人は、少し間を空けて都庁の外郭団体に天下りします。理事長や社長のポストが用意されているのです。ところが今回、退任したお二人は東京都の参与に就任。私自身、「あれっ、なぜ参与?」と思いましたが、これには、国とは違う都庁特有の事情が深く関係しています。

 5年前に小池知事が誕生して以降、副知事の交代が頻繁に行われていることはあまり知られていません。そもそも副知事の任期は4年です。ところが、小池政権下での副知事は、任期の半分にも満たないうちにお払い箱になるのが慣例になっています。人事権の乱用と言っていいほどの「猫の目」人事と言わざるを得ません。

 こうした頻繁な副知事交代は、都庁全体の幹部人事に多大な悪影響を及ぼします。まずは人材の枯渇。副知事にふさわしい幹部が十分に育たないうちに副知事に昇格させなければならない。今の副知事の陣容を眺めると、誰とは言いませんが、都庁OBとして力量不足を感じてしまうわけです。それはさておき、もう一つの悪影響は、辞めた副知事の天下り先の確保です。こっちのほうが、都庁の官僚組織としては深刻かも知れません。

 良くも悪くも、都庁は数十の外郭団体を抱えた一大ネットワークを形成しています。なかでも副知事経験者は外郭団体の中でも最重要ないくつかの団体のトップに天下ります。当然、ポスト数は限られます。そこに、次々と辞めさせられた副知事OBが押し寄せる。人事の回しが滞ります。しかも通常、外郭団体の理事長や社長の人事案件は6~7月に実施されることが多い。株式会社なら株主総会の時期に当たります。

 ・・・・ということで、今回、小池知事が年度途中のイレギュラーな時期に副知事交代を強行したために、辞めた副知事は行き場を失い、仕方なく参与に収らざるを得なかった、これが事の真相だと思います。なーんだ、所詮、都庁村のお家の事情じゃないか。そう感じる方も多いでしょうが、その根底には小池知事の人材の安易な使い捨てがあることを強く指摘しておきたいと思います。

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