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小池知事の副知事いじりが、都庁人事に混乱を招く

 小池知事の副知事いじりが止まらない。第三回都議会定例会の閉会日が2日後に迫った11日月曜日、突如、2人の副知事を交代させるとの報道が流れた。小池知事はすでに在籍5年、この間、今回を含めて8人の副知事を任命することになる。多すぎると感じないだろうか。副知事の任期は4年と定められているが、小池知事の下で任期を全うした副知事などひとりもいない。最短は、猪熊副知事の1年9か月である。やれやれ・・・・。小池知事にとって副知事とは、所詮、消耗品でしかないのだ。

 確かに、都道府県の副知事は知事が指名し、議会の同意を得て選任されることになっている以上、小池知事の人事権にとやかくイチャモンを付けるつもりはない。だが、こうした副知事人事権の乱用は、自分の周りに従順な官僚だけを侍らせるという弊害に留まらず、実は、都庁全体に深い傷を負わせることになる。つまり、頻繁な副知事の入れ替えは、都庁の幹部人事全体に多大な悪影響を及ぼしているのだ。

 この1年半の間、都庁では、毎日のように(というのは少々大げさだが)管理職の人事異動が発令されてきた。新型コロナ対応で、保健所支援、ホテル療養施設担当、大規模接種会場担当と、次々に兼務発令や異動発令が繰り返されてきた。人事部は寝る暇もなかったに違いない。

 人事異動とは、単にA課長がB課からC課に移ることを意味するのではない。A課長の後にはどこか別の部署からD課長を連れてくる必要がある。もちろん、C課にもともと在籍していたE課長をまた別のF課に異動させて・・・・このように、人事異動は一人を動かすと玉突きで大勢の職員の配置に影響が出るものだ。そのため、都庁の人事部では、異動案を検討するとき、通称「列車表」なる資料を作成する。管理職の氏名や役職名を書き込んだ四角い箱が左から右に矢印でつなげられた表である。この列車は、長い場合には10両編成になることもある。春や夏の定期異動期には、この列車表が百本単位でできあがる。

 もうおわかりいただけたと思うが、今回の副知事の交代は、多羅尾氏と梶原氏が辞めておしまいという単純な話ではないのだ。後任には、現職の総務局長と財務局長の名前が挙げられている。ということは、後任の局長2人をどこかから持ってくる必要がある。総務局長と財務局長を列車の先頭車両とする列車表を用意することになる。年度途中の、コロナが未だ収束に至っていないこの時期に、ガラポンをしなければ行けない人事部も大変だが、影響を被る職場では、いきなり上司が替わり、新しい上司が就任すればゼロから事業の説明をする手間が生じる。

 さらに付言すれば、退く2人の副知事用に天下り先も準備する必要がある。都の外郭団体の理事長ポストや社長ポストを巡り、管理職と同様の玉突き状態が必然的に発生するのである。こうした下々の煩雑な実務のことなど、小池知事は露ほどにも気にとめていないだろう。もし、今回の副知事入れ替えが、単に国政復帰の噂を打ち消し都政に邁進する姿勢を演出するためのポーズに過ぎないのだとしたら、辞めさせられる方も異動させられる方も、たまったものではない。人事の混乱は目に見えないところで生じているのである。

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